<よい先生>を育てるための改革はどうなっているのか

学校でよい教育をしてもらうには、先生の質を高めてもらうのが第一です。
大学でよい先生を育て、優秀な人に教職に就いてもらうことも必要でしょう。
今、教員の養成や育成に関する国の改革が、大きく動き出しています。どのような改革なのでしょうか。

各地域で関係者が教員像を策定

大都市圏にお住まいのかたは、お子さんの通う学校で、若い先生が増えたなと実感していることでしょう。現在、50代のベテラン層の大量退職が続いており、それを補充する形で新規採用も増えているからです。それに伴って、子どもを指導する経験をどう継承するかが、教育界にとって大きな課題になっています。

一方、次期学習指導要領でアクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び、AL)が求められているように、これからの社会を担う子どもたちには、人工知能(AI)の急速な進展など環境が大きく変わるなか、「人生100年時代」を生き抜く力を付けさせてあげなければなりません。そうした教育を担う教員への期待が、ますます高まっています。

そこで中央教育審議会は2015(平成27)年12月、教員の資質能力向上に関する答申をまとめました。教員の養成から採用、退職までの現職研修に至る教職生活全般にわたり、「教員は学校で育つ」との考えの下、「学び続ける教員」(2012<平成24>年8月の中教審答申)を育てようというものです。

これを受けて、さまざまな法律が改正されました。都道府県などの教育委員会は、大学を含めた教育関係者と「教員育成協議会」を作り、「教員育成指標」を策定します。
その地域でどんな先生を育てるべきか、合意を形成しようというものです。それに基づいて、大学は教員を養成し、教委は指標にふさわしい教職志望者を採用するとともに、大学の教職大学院などとも連携しながら、現職教員の更なる質の向上を図ります。教員養成をめぐっても、教育職員免許法を改正し、指導力のある教員に育ててもらいたい考えです。

免許の取得はますます厳しく?

保護者の中にも、大学で教員免許を取ったというかたは少なくないと思います。昔は専攻する学部のカリキュラムに加えて、教職課程の単位を取り、2週間以上の教育実習に行けば、ほぼ自動的に免許が授与されたものです。しかし今は、より学校現場に即した学習が求められ、教職課程の授業も厳しく、ただ漫然と聞いているだけでは単位も取れません。

今回の免許法改正では、教職課程の科目が大くくり化され、各大学の裁量が広がる分、逆に各大学は、その大学の特色を生かして、どういう教員を教育界に送り出すのか、真剣に考え、それにふさわしいカリキュラムや、授業の方法を考えなければなりません。そのために国は、教職課程で共通的に身に付けるべき最低限の学習内容を示した「教職課程コアカリキュラム」も策定。新しい免許法に基づき、コアカリキュラムも参考にしながら、各大学の教職課程を2018(平成30)年度中に改めて認定・指定するべく(再課程認定)、準備を始めています。

いま大学では、社会に送り出す卒業生像を明確にしたうえで、カリキュラムや教育を考え、それにふさわしい入学生を選抜するという「三つの方針」改革が進行しています。教職課程も、大学教育全体の三つの方針と密接に関連付けることが求められます。学生の側も、単に資格を増やしておこうという軽い気持ちでは、もう教員免許は取得できなくなるかもしれません。

※中教審答申「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について ~学び合い、高め合う教員育成コミュニティの構築に向けて~」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1365665.htm

※中教審 教員養成部会(7月3日)配布資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/002/index.html

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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