<伸びるための学習法シリーズ>どう生まれる?成績がよい子のやる気エンジン
<伸びるための学習法シリーズ>最終回のテーマは、学習へのやる気。成績のよい子は、どのようなモチベーションで学習に取り組んでいるのでしょうか。子供のやる気を育む保護者の関わりについてもご紹介します。
(文/大島佳子)
小学生が勉強する理由は「しないといけないから」
ベネッセ教育総合研究所で2014年に行った小中学生とその保護者を対象にした「小中学生の学びに関する実態調査」(※)で、小学生に勉強する理由についてたずねたところ、「とてもあてはまる」「まああてはまる」と答えた子供の割合が最も高かったのは、「小学生のうちは勉強しないといけないと思うから」(76.3%)でした。
※ベネッセ教育総合研究所「小中学生の学びに関する実態調査」(2014年2月~3月実施/対象:全国の小学4年生~中学2年生とその保護者5409組)
子供が勉強に向かう学習動機の仕組みはどうなっているのでしょうか?大きくは以下のように分けることができるそうです。
内から生まれる学習動機
・内容に対する好奇心や関心 から生まれるもの
例「新しいことを知ることができてうれしいから」
「問題を解くことがおもしろいから」 など
・自分の価値観や、こうなりたいという思い から生まれるもの
例「将来安定した職業に就きたいから」
「自分の夢をかなえたいから」 など
環境や強制による学習動機
・周りの価値観に合わせる安心、やらない場合の不安 から生まれるもの
例「小学生のうちは勉強しないといけないと思うから」
「成績が悪いと恥ずかしいから」 など
・ほめられたい・叱られたくないといった賞罰や義務・強制 から生まれるもの
例「先生や親にほめられたいから」
「成績がよいとごほうびをもらえるから」 など
調査から、「内から生まれる学習動機」、特に「内容に対する好奇心や関心」と、学力の向上・保護者の関わりに傾向があることがわかりました。
成績上位者は、考える過程を重視し、「これがおもしろい」と好奇心をもっている
下の図1は、「内容に対する好奇心や関心」から勉強している子供が、学習に対する考え方を表したものです。
図1のデータから、「内容に対する好奇心や関心」から勉強している子供の実に90%以上が、難しい問題をじっくり考えたり、問題の解き方を何通りも考えたりするなど、考える過程を重視。「とにかくテストの点がよければよい」などの結果がよければよいとする考え方をしている子供が少ないことがわかります。
また、図2をご覧ください。「内容に対する好奇心や関心」から学習する気持ちが高い子とそうでない子の成績の分布を調べたものです。
「内容に対する好奇心や関心」が高い子供の53.6%を成績上位層が占めています。逆に、低い子に占める成績上位層は22.7%にとどまり、成績下位層が48.7%と多くいることがわかります。
ここから、成績上位をめざすなら、単にテストの点がよければいいという考え方ではなく、考える過程を楽しみ、学習内容に興味をもち学習に向かうことが望ましいと考えられます。
学習内容に好奇心や関心をもたせるには「きっかけづくり」のサポートを
では、学習する「内容に対する好奇心や関心」などの、内からのやる気が生まれるためには、どのようなサポートをしたらよいでしょうか。そこで、図3をご覧ください。
図3は、保護者の関わり方の中で、子供が内から生まれる学習動機を育てるための項目を取り上げ、学習動機への影響を調べたものです。
・「生き物や自然の素晴らしさ、不思議さを伝える」
・「身近なことに関連づけて考えさせる」
・「勉強が生活に役立つことを伝える」
ことをしている保護者の子には、していない保護者の子と比べて、「内から生まれる学習動機」をもつ子が多くいるという結果になりました。
ここから保護者の関わりが「内から生まれる学習動機」に影響を与えていることがわかります。
具体的には下記のようなコミュニケーションがおすすめです。
<一例>
・博物館や科学館などに出かける
生き物が好きな子なら生き物の不思議にふれさせるなど、いろいろな場で普段できない体験をすることで、新しいことを知る楽しさに気づくきっかけ作りに役立ちます。
・身のまわりの「なぜ?」に注目させる
ニュースなどで気になることがあったら、インターネットで調べる、関係施設に問い合わせるなど。調べる第一歩を一緒にしてみるなどして最初のハードルを下げ、「なぜ?」の興味関心を広げていけるとよいでしょう。
・「目標」を決めて公表し合う
「自分で決めて、できた」という経験が、自己効力感を育てるので、目標は、子供自身に決めさせて家族などに公表してみましょう。できた、できないも大事ですが、自分はがんばれていると、子供が思えるようなサポートをすることが大切。子供は「自分だけやらされている」と感じると前向きになれないので、おうちのかたもご自身の目標を決めて、お互いに公表し合い、ほめ励ましあうとよいでしょう。
・おうちのかたの仕事について話をする
おうちのかた自身が、どういう思いで仕事に取り組んでいるのかを語ってみましょう。社会のしくみを考え、自分の未来像を思い描くきっかけ作りに役立ちます。また、その未来像に対して、どうしてそうなりたいのかを意識し、どうすればなれるかを調べることが、学習に対して子供の内からやる気をもつことにつながります。
子供が自ら、学習に対して「おもしろい」「もっと知りたい」と感じたり、将来について「こうなるためにがんばりたい」と思える夢や目標を見つけている場合は、その芽を摘まないように寄り添い応援することが大切です。
とはいえ、小学生ではまだ自分で夢や目標がわからない、気づいていないというお子さまは多くいます。
上の例を参考に、おうちのかたは、いろいろな事柄にふれさせる中で、「もっと知りたい」「こうなりたい」など自分の気持ちを意識する機会をたくさんもてるようにしていけるとよいですね。