フリースクールを公認へ? 文科省が検討

先の記事で、文部科学省が12年ぶりに不登校対策の検討に乗り出したことを紹介しました。また車の両輪として、不登校児童・生徒の受け皿となっているフリースクールの在り方に関しても、会議を設けて検討を行っています。これまで学校の外にある存在だったフリースクールが、一定条件の下で<公認>されるかもしれません。

検討会議の委員には、教育関係者や有識者だけでなく、フリースクールの関係者も多数入っています。会議の発足に先立ってフリースクールについてもフォーラムを開催したのも(昨年11月)、不登校全般の検討と同じ流れです。
第1回会合で文科省が示した「主な論点例」によると、現状の問題点として「制度上の位置付け」「学習面及び経済面での課題」が挙げられていることが注目されます。フリースクールはあくまで私塾の扱いであり、フリースクールで学んだからといって即、就学の代わりとなるわけではありません。各地にフリースクールができ始めた1980年代は、先に紹介したとおり不登校がまだ「登校拒否」(学校嫌い)と見られていた時期で、教育関係者には「無理をして学校に行かなくてもよい」と説くフリースクールを学校に敵対する存在のようにとらえていた向きも少なくありませんでした。
しかし1992(平成4)年の「学校不適応対策調査研究協力者会議」報告を受けて、公的施設だけでなくフリースクールに通った場合でも、校長が認めれば、在籍する学校の出席扱いにできることになりました。その場合に通学定期券が利用できるようになったのは、小・中学校は1993(同5)年からでしたが、義務教育ではない高校に関しては不登校の存在そのものの認識が遅れていたこともあって、ようやく2009(同21)年からでした。

しかしこれも、あくまで校長が認めた場合であり、「学校の出席」扱いという原則は崩していません。とりわけ義務教育は、子どもを学校に就学させる義務が保護者にあるからです。ここでいう「学校」にフリースクールが入らないことは、言うまでもありません。今後、自宅学習(ホームスクール)も含め、どういう条件を満たせば就学義務を果たしたことにするのかが、検討会議での大きな論点になってくることでしょう。
また、民間施設であるフリースクールは、私立学校などにしない限り補助金なども受けられません。人件費や施設費などを賄うため、授業料は相当の額を徴収せざるを得ないのが現状です。一方で、先の記事で見たとおり、不登校の背景として貧困問題も無視できなくなっています。フリースクールが一定数の子どもにとって不可欠な存在になりつつあるとしたら、どういう条件の下で財政的支援を行うかも避けて通れない課題です。

委員の一人で、フリースクールの草分けとして社会的認知を求めてきた「東京シューレ」理事長の奥地圭子さんは「定期券を認めてもらうのにも16年かかりました。制度が変わるには30年くらいかかるのかもしれませんね」と話していました。30年たって、やっと制度のほうから子どもの実態に近付こうとしてきたといえるのかもしれません。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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