「土曜授業」が増加 でもまだ2割以下‐斎藤剛史‐

今春から文部科学省が実質的に解禁した公立学校の土曜授業について、意外と実施校は多くならないという見方を前の本コーナーでお伝えしました。その後、文科省から今年度の公立学校における土曜授業実施予定状況の結果が公表されましたが、本コーナーの予想どおり通常の授業を行う「土曜授業」の実施は、公立学校全体の16.3%と2割を下回っていました。これからの土曜授業はどうなっていくのでしょうか。

土曜授業が解禁されたにもかかわらず、通常の授業を土曜日に行う「土曜授業」の実施校が全体の2割未満だった原因の一つは、前にお伝えしたように文科省が「土曜日ならではの取り組み」を土曜授業に求めているからです。この対応に戸惑っていることが文科省調査の結果からもうかがえます。今年度の公立学校の土曜授業のタイプ別実施率は以下のとおりとなっています。

タイプ(1)教育課程内の通常授業を行う「土曜授業」
小学校17.1%(2012<平成24>年度は8.8%)、中学校18.3%(同9.9%)、高校5.9%(同3.8%)、全体で16.3%(同8.6%)

タイプ(2)体験学習など教育課程外の授業を行う「土曜の課外授業」
小学校3.9%(同4.1%)、中学校6.5%(同7.8%)、高校40.3%(同49.0%)、全体で8.5%(同10.1%)

タイプ(3)保護者・地域・関係機関などと連携して多様な教育機会を設ける「土曜学習」(前回調査項目なし)
小学校23.9%、中学校8.6%、高校21.3%、全体で19.2%

一般的にイメージされている土曜授業は、タイプ(1)の「土曜授業」でしょう。確かに前回の2012(平成24)年度調査の8.6%から14(同26)年度は16.3%と大幅に伸びていますが、それでも全公立学校の2割以下にとどまっています。文科省の意向に配慮して、通常授業を土曜日に行う単純な「土曜授業」に多くの教育委員会が慎重姿勢を示したものと思われます。逆に、タイプ(2)の「土曜の課外授業」は減少していますが、これはタイプ(1)の「土曜授業」に変更した学校が多かったためと文科省は推測しています。特に高校は、希望者対象の土曜補習を全員対象の「土曜授業」に変更したところがあるようです。またタイプ(3)では、小学校は保護者・地域関連行事、高校は進路指導やキャリア教育関係の行事などが多かったと推察されます。
文科省は通常授業を土曜日に実施する場合でも、外部講師による講義、体験学習、発展的・補充的学習など、平日には行えない取り組みをするよう求めており、2014(平成26)年7月に同省が指定したモデル校もそのような取り組みをしています。

いずれにしろ、「学力向上」を求める保護者などの声が強いことから、モデル校などの取り組みが周知されるに従い、何らかの形で土曜授業に踏み切る教委は今後、増えてくるのはほぼ確実と見られます。その場合、通常授業を土曜日に実施して授業時間数を確保するにとどまるのか、それとも問題解決能力などこれからの社会で必要とされる「学力」を身に付けるための多様な取り組みを保護者や地域などと連携して実施するのか。教育委員会や学校の姿勢が問われることになるでしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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