高校での特別支援教育 文科省が通級指導の導入検討を開始‐斎藤剛史‐

文部科学省は、高校における特別支援教育の充実方策を検討するため有識者らによる協力者会議を発足させました。具体的には、一般の小中学校で実施されている「通級指導」を高校にも導入することが検討課題となります。小中学校に比べて特別支援教育への対応が遅れている高校教育にも大きな変化が起こりそうです。

特別支援教育の実施について学校教育法は、特別支援学校や小中学校だけではなく、高校もその対象になると明記しています。しかし以前に当コーナーで紹介したように、特別支援教育のための校内組織の設置や支援コーディネーターの任命は、小中学校のほとんどが実施しているのに対して、高校は約8割程度となっています。また、障害のある子どもに「個別の指導計画」を策定しているのは、小学校が92.5%、中学校が83.7%なのに対して、高校は27.2%でした。高校では、特別支援教育の体制は形式的に整いつつあるものの、実際には特別支援教育が機能していないところが多いというわけです。一方、文科省の推計によると、発達障害のある生徒は高校生全体のうち2.2%(全日制1.8%、定時制14.1%、通信制15.7%)いるとされています。

高校で特別支援教育が広がらない理由の一つは、義務教育と異なり全員が入試を受けて入学しているという高校教育の性格、それに伴う教員の意識の問題などが指摘されます。さらに問題として、小中学校の通級指導のような「特別の教育課程」を編成する制度が高校にはないことが挙げられます。文科省は2009(平成21)年に、高校での通級指導の実施などを検討したことがありましたが、当時は次期尚早ということで制度化は見送られました。しかし、障害の有無にかかわらず教育をするというインクルーシブ教育の広がりや、障害者差別解消法が2016(平成28)年度から施行され、公立学校には障害者への合理的配慮の提供が義務付けられることなどから、高校でも特別支援教育への対応が急務となってきました。

このため文科省は協力者会議を設置して、障害のある子どもが一般学級に在籍しながら、必要に応じて別教室などで特別な支援を受ける「通級指導」を高校でも導入するため、「特別の教育課程」の編成を制度化する検討を始めることにしました。既に文科省は、高校における通級指導のモデル校(外部のPDFにリンク)を2014(平成26)年度から指定しており、その取り組み内容などを参考にしながら具体的な方法を論議する予定です。
ただ高校の場合、一時的にクラスから離れて特別な支援を受けることに対して年齢的に抵抗感が強いこと、他の保護者の理解を得ることが難しいことなど、高校独特の課題もあり、「小中学校と同じ取り組みはできない」と指摘する高校関係者もいます。

とはいえ高校でも、発達障害を含めて、障害があると認定される子どもが今後、増加することは確実です。高校で特別な支援を受けられれば、もっと能力を伸ばせる子どもも少なくないでしょう。子どもたちがよりよい進路を選択できるようになるためにも、高校での特別支援教育の充実は不可欠といえます。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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