国語の解答を作成する際、文章をうまく要約できない[中学受験合格言コラム]

国語の解答を作成する際、文章をうまく要約できない

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


※小泉さんへのご質問は、不定期にBenesse教育情報サイトメンバー向けのメールマガジン「教育情報サイト通信」で募集をいたします(随時の受付は行っておりません)。


質問者

小5男子(性格:大ざっぱなタイプ)のお母さま


質問

国語のテストでは、問題文の内容を頭ではおおよそ理解しているようなのですが、解答を作成する際、要約して文章にすることができません。要約しなければならない設問でも本文から書き抜いてしまうので、余計な部分が入ってしまい、設問の文字制限どおりにすると必要な部分は半分も入っておらず、いっこうに得点に結び付きません。家庭でも「何が書いてあった?」と聞くと、「〇〇の話」くらいしか返ってこないので、「もう少し細かくして」と言うと、今度はダラダラと登場人物から時間の流れから、ほぼ全部のお話を読むくらいの勢いで話し始めます。


小泉先生のアドバイス

物語文の「変化」とその「理由」に注目してまとめる。


「物語文を要約する方法」についてのご質問ということで、そのやり方についてご説明します。物語文でしたら、「誰が」「何を」「どうした」などとあらすじを追っていけば要約文になりますが、字数制限があると大切なところを抜かしてしまう可能性はあります。どこが大切かわからないと、まとまりのない要約文になりますから、まずは大切な箇所を見つけるところから始めます。

試験に出題される物語文の特徴について考えてみましょう。物語文とは、出典の物語の本から適切な箇所を抜き出して問題文にしたものです。物語文の場合は説明的文章に比べて長い場合が多いですが、それでも本でいえば3~6ページ分というのが一般的でしょう。そしてどんな箇所を選ぶかといえば、やはり「心情が問いやすい場所」ということになります。さらに、話に1つのまとまりがある、すなわち“クライマックス”があるような展開の箇所が選ばれやすいように思います。読んでいても筆者のイイタイコト、なんらかのメッセージが入っている箇所ということになるでしょうか。本全体では、そのようないくつものクライマックスが集まって1つの大きな流れをつくっていると考えてよいでしょう。

さて、そのような物語文を読む場合に心がけたいことは、「何が変わったのか」ということです。「変わるもの」としては、登場人物の「気持ち」や「人間関係」です。“弱い気持ちの主人公が強くなる”とか、“仲の悪い兄と弟が兄弟愛に目覚める”という変化です。この変化というのは、展開をしっかり読んでいれば気が付くと思います。あるいは、問題文の最初のほうと最後のほうを比べるということでもよいかもしれません。先に述べたように、キリのよいところで終わっているはずですから、変化して良くなった(あるいは悪くなった)状態で終わることが多いと思います。

変化がわかったら、次に大切なことはなぜ変化したのかという「理由」です。そして、その理由は本文に書いてあるはずですから、きっかけになった箇所を見つけ出しましょう。これらのものを見つけ出したら、あとはまとめるだけです。恐らく「最初○○だった(例:兄が嫌いだった)A君が、××により(例:兄の意外な側面を知り)、△△になった(例:兄弟愛を知った)物語。」というようにまとまると思います。入試では100字~150字での要約が多いと思いますが、字数が多い場合は説明を詳しくすればよいでしょう。たとえば、「兄の意外な側面」を詳しく説明すれば字数は稼げます。

なお、変化はよい方向だけではなく、悪くなる場合や、一度よくなってまた悪くなるなどさまざまです。しかし、試験の問題文という長さの制約があるため、そう何回も変化することはないと思います。また、変化のない物語文も出題は可能です。何も変わらない展開の物語、すなわち明確なクライマックスがない物語は、読んでいてもあまりおもしろくないとは思います。恐らく、登場人物の微妙な心情を問うような問題になるでしょう。

最後にひと言。これはよくいわれることですが、どんなに長い物語でもその内容は一文にまとめられるものです。字数としては、30~40字くらいが目安でしょうか。「○○○の物語」と短くまとめることで、その物語を本当に理解できたといえます。お子さまも問題文を読んで解くだけではなく、「○○○の物語」と一文でいえるような練習を繰り返しましょう。物語文の読解力が、グッと伸びると思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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