子どもがほめられたので謙遜したら子どもが反発[教えて!親野先生]
【質問】
親バカで恐縮ですが、うちの娘は算数と運動がよくできて、性格も明るくてあいさつもよくします。それで、先日あるお母さんにこの3つのことをほめられたのですが、私は「でも、家ではだらしがないんですよ。お手伝いも2、3回叱られてやっとやるんです」と答えました。それを聞いていた娘に、あとで「なんであんなこと言うの?」と反発されてしまいました。こういうとき何と答えたらいいのか迷います。「本当にそうなんですよ。算数も運動もあいさつもできてうれしいです」なんて言えないし……。下手に答えて「自慢している」と思われて、ママ友関係がまずくなるのは避けたいです。
相談者・こっこ さん(小学4年生女子の保護者)
【親野先生のアドバイス】
こっこさん、拝読しました。
なるほど、このようなときの答え方は意外と難しいですね。たしかに、謙譲の美徳という言葉がある日本の社会では、「本当にそうなんですよ。算数も運動もあいさつもできてうれしいです」とは言いにくいでしょう。
これが、もし自分のことをほめられたなら、「ありがとうございます。そう言っていただけてうれしいです。でも、私は○○が苦手でぜんぜんできなくて……」と謙遜すればことは済みます。
また、子どもがいないところなら、子どものことで謙遜することもできます。そのとき、冒頭で「初めてそう言われました。いいところを見つけてくれてありがとうございます」と言えば相手も喜びます。
でも、ほめられたのが子どもで、その本人が一緒にいる場合はけっこう難しいです。もし、次のように謙遜して言ったらどうでしょう?
「でも、うちでは弟を泣かせてばかりでけっこう意地悪なんです。もっと優しいお姉ちゃんになってくれるといいんですが」。
「でも、うちでは本当にわがままで困っているんです。外ではいいみたいなんですけど」。
「あいさつできるのはいいんですが、お調子者でけじめがつかなくて……」。
もちろん保護者は謙遜のつもりで言うのですが、聞いている子どもは「お母さんは私のことをそんなふうに思っているんだ」と思って傷つきます。
謙遜すればするほど、子どもに対してひどい言葉になることもあります。
では、どう言ったらいいでしょうか?
とにかく、まずは、ほめてくれた相手の気持ちを受け入れて、共感することが大事です。いきなり「でも……」と跳ね返されてしまうと、相手としてはせっかく善意の気持ちでほめたのに、ほめたかいがなくなってしまいます。
ですから、まずは「ありがとうございます。そう言っていただけてうれしいです」と返しましょう。あるいは、子どもに向かって「よかったねえ。ほめられたね。うれしいね」と言い、一緒に喜ぶことで善意の気持ちに応えるのもいいでしょう。
これなら、相手もほめたかいがあります。
それで終わってもいいのですが、もし謙遜したい場合は、保護者が自分のことを謙遜するほうに話を持っていく方法があります。
「ありがとうございます。そう言っていただけてうれしいです。でも、親の私は算数や数学が苦手で苦労したんですけどね。中学校や高校のときはとても苦労しました。本当に、分数の計算とか苦手でしたよ。そう言えば、高校の時は赤点取りましたよ」。
これなら、自慢していると思われることもなく、子どもを傷つけることもありません。
2つめとして、「○○が好きみたいです」「○○が楽しいみたいです」という言い方もいいと思います。
「ありがとうございます。そう言っていただけてうれしいです。体を動かすのと算数の問題を考えるのが大好きみたいなんです。私は両方とも苦手なんですけど」。
「(子どもに)ほめられちゃったね。うれしいね。(相手に)算数の問題を考えるのが楽しいみたいなんです。私は苦手なんですけど」。
つまり、「○○が得意なんです」に比べて「○○が好きみたいです」や「○○が楽しいみたいです」は自慢している感じが少ないのです。
ほめられた算数・運動・あいさつのすべてには触れずに、1つか2つにしておくのもいいかもしれません。
3つめとして、子どもに向かって「○○をがんばっているもんね」言うのも、自慢している感じが少なくていいのではないかと思います。
「(子どもに)ほめられちゃったね。うれしいね。算数と運動がんばっているもんね。あいさつもがんばっているもんね」。
(ここでも、3つすべてに触れなくてもいいかもしれません)。
そして、このあとで保護者が自分を謙遜するという合わせ技も効果的です。
最後に、ぜひとも忘れないでほしいことがあります。
それは、相手の子どももほめるということです。
つまり、こちらだけがほめられっ放しで終わるのではなく、ほめてくれた人の子どももほめるのです。すると、相手もうれしい気持ちになりますから、一方的に自慢されたと思われなくて済みます。
それにお互いの人間関係もよくなります。
なお、これらはすべて状況に応じて使い分けてください。
ほめられた内容によっても、相手の人間性によっても、相手との人間関係の在り方などによっても違ってくるでしょう。要するに、ケース・バイ・ケースということです。
私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。
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