子どもの受験を控え、心配でたまりません[教えて!親野先生]
- 育児・子育て
受験シーズンが間近に迫り、心配が募っている受験生の保護者のかたも多いのではないでしょうか。体調面はもちろん、勉強環境づくりやお子さまへの声かけなど心配の種はつきませんよね。時には「うまくいかなかったらどうしよう」と不安になってしまうこともあるかもしれません。
子どもの受験への心配に保護者はどう向き合っていけばいいのでしょうか。教育評論家の親野智可等先生に伺いました。
この記事のポイント
【質問】子どもの中学受験と高校受験を控え、心配が尽きません。
子ども二人が中学受験と高校受験の本番を控えています。兄の高校受験と妹の中学受験、いずれもよい結果が出て合格してほしいです。受験生の親として家庭環境をよくしなくてはとか、本人のやる気の出る言葉をかけなければなど、緊張してしまいます。もし落ちたらと思うと心配でたまりません。
(トロントさん・中学3年男子/小学6年女子)
親野先生からのアドバイス
拝読しました。
子どもたちが受験ということになると、親としては心配になりますし、不安ですよね。
「よい結果が出て志望校に合格してほしい」という気持ちが強ければ強いほど、その心配は大きくなると思います。
とはいえ、親が過度に不安を感じて神経質になり過ぎると、親自身も苦しいですが、子どもにもプレッシャーになります。
人生を長い目で見る視点を持って
そうならないためには、人生を長い目で見る視点を持つことが大事です。
中国の古典にある「塞翁が馬」の故事がそのヒントを与えてくれると思います。
その故事の概略は次のとおりです。
砦の近くに住んでいたおじいさんの馬が逃げてしまいました。
人々がなぐさめると、おじいさんは「これはきっとよいことになる」と言いました。
数ヶ月後、逃げた馬が駿馬を連れて帰ってきたので、人々はおじいさんを祝福しました。
すると、おじいさんは、「これはきっと災いになる」と言いました。
おじいさんの息子がその馬に乗っていて落馬し、足の骨を折ってしまいました。
それで、人々はおじいさんをなぐさめましたが、おじいさんは、「これはきっとよいことになる」と言いました。
一年後に隣の国が攻めてきて、若者の多くが亡くなりました。
でも、おじいさんの息子は足が不自由だったので、戦いに取られず生き延びました。
この故事は、現代の私たちにも当てはまる真実であり、何事においても福は禍となり禍は福となるわけで、まさに「禍福はあざなえる縄のごとし」という諺(ことわざ)のとおりなのです。
どんなことも長期的に見れば成長のきっかけになる
たとえば、東京オリンピックの開催が決まったときみんな大喜びしましたが、それがコロナ禍の開催ということで大きな貧乏くじになってしまいました。
また、たとえば、カーネル・サンダースは経営していたガソリンスタンドとレストランがつぶれ、フライドチキンのレシピを売り始めて、それによって大成功しました。
私自身の例で言いますと、私は大学受験で全敗して浪人しました。
そして、2年目に1校だけ合格した大学に入学して、そこで生涯リスペクトできる親友に出会い大変よい刺激を受けました。
さらには、就職試験でも1年目には全敗して就職浪人し、2年目に教員採用試験に落ちてまた浪人しました。
そして、3年目にやっと合格して教師になりました。
大学入試と就職試験で全部で3浪したわけですが、この3年間のモラトリアムの時間が私にとって非常に大きな栄養になりました。
その間、受験ノイローゼ、対人恐怖症、先端恐怖症、強迫神経症、うつ症状などで大いに苦しみましたが、それがあとになってみると人間心理の実践的な勉強になったといえます。
また、読書にふける時間や自分を見つめる時間も持てて、それもあとで考えてみると非常によかったと思います。
本当に今の自分があるのは、この3年間のおかげだと思っています。
このように、短期的には失敗や挫折に思えたことが、長期的には成長のきっかけだったということは、誰の人生にもあるはずです。
みなさんにもあるのではないでしょうか?
ということで、ぜひ、人生を長い目で見るようにしてください。
つまり、どっちに転んでも大丈夫だという気持ちですね。
受験生のサポートは緊張しながらではなく、楽しみながら行って
もちろん、「家庭環境をよくする」「本人のやる気の出る言葉をかける」など、親としてできることはやってあげてほしいと思います。
でも、絶対合格させなければという緊張した気持ちで行うのではなく、親として愛する我が子にそういうことがしてあげられることを楽しみながら、味わいながらやってあげてください。
私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
みなさんに幸多かれとお祈り申し上げます。
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