教育委員で保護者が3割を突破、女性の割合も増加-斎藤剛史-

教育委員会には、一般市民などから首長によって選ばれた教育委員で構成された合議制組織である「狭義の教育委員会」と、役所の一部門である教育委員会事務局のことを指す「広義の教育委員会」の二つの意味があります。一般的に保護者や学校関係者などが教育委員会と呼んで接しているのは役所の教委事務局ですが、大津市の中学生いじめ自殺事件などを発端として始まった教育委員会制度の見直しの対象となったのは、教育委員による「狭義の教育委員会」です。では、教育委員会とは実際にどんな人たちで構成されているのでしょうか。

2014(平成26)年6月に改正地方教育行政法が成立し、同15(同27)年4月から施行されることになりました。その内容は以前にお伝えしましたが、これによって教育行政における首長の権限が強まると言われています。一方、教育行政の中立性を守るためにも一般市民から選ばれた教育委員の役割がさらに重要になるとの指摘もあります。
文部科学省が2年ごとに実施している「教育行政調査」によると、2013(平成25)年5月1日現在で保護者などにとって身近な存在である市区町村などの教育委員会は全国で1,819あり、教育委員(教育長を除く)は合計7,276人います。その平均年齢は2年前の2011(平成23)年度調査より0.2歳若い59.1歳で、過去最も低くなったことがわかりました。
また、委員に占める女性の割合は36.2%(前回調査より1.3ポイント増)、「保護者」(19歳以下の子どもを持つ者)の割合は30.3%(同0.4ポイント増)で、いずれも過去最高となっています。特に、保護者の割合が初めて3割を超えたことが注目されます。いじめ問題への対応など教委批判の中で、市区町村長など首長によって選ばれる教育委員の構成も徐々に変わりつつあるようです。

ただ、市区町村の教育委員(教育長を除く)の職業を見ると、「無職」が35.4%で最も多く、次いで医師や宗教家など「専門的・技術的職業従事者」が23.5%、会社役員など「管理的職業従事者」が19.5%などで、いわゆる「地域の名士」が多く選ばれていることがうかがえます。新しい教育行政制度では首長の権限が強まることから、教育行政の中立性を守るため教育委員の役割がますます重要になると指摘されており、文科省なども保護者、学校の教育活動に関わっている地域住民などを積極的に教育委員にするよう求めています。
一方、新制度により名実ともに教育委員会の代表者となる教育長を見ると、市区町村教育長の平均年齢は63.4歳、直前の職歴は「教職員」が38.9%、「地方公務員」が22.3%、「教育委員会関係職員」が20.9%など。教職経験者は全体の69.7%、教育行政経験者は全体の79.9%で、退職した校長や教委事務局幹部などが教育長の中心であることがうかがえます。また、女性は3.7%でした。

これからの教育長には、専門性と同時に住民のニーズにいかに的確に応えていくかという手腕も期待されます。今後、新しい教育行政制度の施行に伴い、首長がどのような人材を教育長に任命していくのかが注目されるところです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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