子ども2人を大学まで、高校から私学なら2,600万円!‐渡辺敦司‐
子どもの教育を考えるうえで、保護者として一番頭が痛いのは教育費の高さではないでしょうか。政府の教育再生実行会議も、教育財源の在り方を考える分科会を設けて教育費の在り方の検討に乗り出しました。同会議の配布資料(外部のPDFにリンク)を眺めていると、注目すべきデータがありました。
試算によると、31歳で第1子、33歳で第2子を出産し、小中学校は公立で高校から私学に通わせた場合、子ども2人を大学まで卒業させるためには約2,600万円の教育費が必要だというのです。収入(平均可処分所得)に占める割合を見ると、2人が同時に幼稚園に通う37歳の時点で20%、大学では52歳時点(第1子が大学3年生、第2子が大学入学)で70%に上るというのです。こうやってデータで示されれば、改めて家計のやりくりの大変さが納得できるご家庭も少なくないのではないでしょうか。
なぜこのように負担が重いかというと、日本では小・中・高校での公財政負担(国や地方の教育投資)が比較的充実している一方で、幼稚園などの就学前教育には45.4%、高等教育には34.5%しか投資されておらず、経済協力開発機構(OECD)平均の各81.6%、69.2%に比べるとずっと低く、最低レベルになっていることが大きな要因です。それだけ家計の負担に頼らざるを得ない財政構造になっているというわけです。そのため家庭の年収によって子どもの大学進学率が左右されるなど、格差がますます拡大するのではないかという心配も広がっています。
もちろん公財政負担の財源は税金ですから、子どもを持つ家庭が国や地方の教育投資分を負担していないわけではありません。ただ、資料にある年齢別の一人当たり政府支出を見ても、子どもより高齢者に多額の支出を要していることが明らかです。もちろん、これまで日本を支えてきた高齢者の方々に報いることは必要です。しかし、年々かさむ社会保障費を確保するために次世代への投資が削られるばかりでは、その高齢者を支える財源すら確保が難しくなります。「人生前半の社会保障」(広井良典・千葉大学教授)と言われるように、社会保障費をどの世代にどれだけ振り向けるかの国民的な議論が求められます。
同会議の分科会では、教育財源など教育行財政の在り方について、少子高齢化と社会・経済への効果、教育費負担の軽減と質の向上、国公立と私立の役割、所得額に応じて返済額を決める「所得連動返還型奨学金」、民間資金の活用などを検討課題(外部のPDFにリンク)に挙げています。
分科会発足に先立って7月にまとめた第5次提言(外部のPDFにリンク)では、家庭の経済状況や発達の状況等にかかわらず意欲と能力のあるすべての子どもや若者、社会人に質の高い教育機会を確保していくために「教育を『未来への投資』として重視し、世代を超えて全ての人たちで子ども・若者を支える」方針を打ち出し、国民的な議論を深めるとしています。同会議には安倍首相もほぼ毎回出席しているのですから、ぜひ内閣主導で大胆な提言と「実行」を期待したいものです。