理科の自由研究を、授業への興味・関心のきっかけに!‐渡辺敦司‐

夏休み中、理科の自由研究に取り組んだお子さんも多いと思います。経験を弾みに学校の授業もがんばってほしいところですが、日本の子どもは自由研究を多くしているのに、自然や科学への興味・関心が薄く、調べ学習にも消極的であることが、米国・中国・韓国との比較調査でわかりました。

調査は独立行政法人国立青少年教育振興機構が2013(平成25)年、4か国の高校生を対象に実施したものです。「理科の自由研究をしたことがある」と回答した割合は4か国中、日本が54.6%でトップ。もちろん課題の与え方などは国によって違うでしょうが、少なくとも日本の子どもがよく取り組んでいることは確かなようです。
ただ学年別に見ると、日本は小学校6年間、ほかの国より理科の自由研究をした割合が高く、5年生で62.7%とピークを迎えるのですが、その後は減少に転じて中学3年生でがくんと落ち、高校になるとほとんど行われていません。せっかくの取り組みが、またやってみようという興味や関心につながっていないことがうかがえます。
実際、理科の自由研究をしたことがある子に、理科の自由研究が好きかどうかを尋ねると、「とても好き」「まあ好き」はほぼ半数。2割ほどの米国よりも多いとはいえ、8割にも達する中国や韓国と比べると少ない数値です。

自由研究で面白みを感じられれば、学校の授業でも興味や関心を持って取り組めることが期待されます。しかし、実際、自然や科学への興味・関心が「とてもある」と回答したのは、日本が13.3%と、韓国の14.9%を下回って最下位。「ある」を含めると59.5%に上りますが、やはり韓国の63.1%には届きません。
調べ学習に関しても、「自然や科学についてのテレビを見る」(56.8%)、「自然や科学についての本や雑誌を読む」(32.3%)、「自然や科学について、自分でインターネットなどで調べる」(29.8%)、「自然や科学について、家族や友達と話す」(24.0%)、「学んだ理科の知識で日常生活の問題を解決する」(21.3%)といった項目で、いずれも最下位でした。体験的学習や実験的学習より調べ学習が低調なのも日本の特徴であることが、調査結果の分析から浮かび上がっています。

日本の子どもは、理科の勉強が必ずしも嫌いなわけではありません。「理科を学ぶことは受験に関係なくても重要だ」との回答は72.8%に上りますし、「理科の学習は面白い」も63.2%を占めています。しかし「調べたり、学習したりするための時間がない」(60.6%)という意識が強いのも実態で、科学や社会問題への関心も、韓国の高校生と並んで低いこともわかりました。
自由研究は、学校の授業との相乗効果で、理科への学習意欲を高めることも期待できます。「課題だから、仕方なく提出した」というだけでは、もったいないことです。特に低学年などでは、普段から学校の授業の様子を聞きながら子どもの興味・関心を促し、「調べてみたい」といった気持ちを起こさせるような保護者の役割も大きいかもしれませんね。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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