小4から5年間続けた自由研究が、受賞や製品化!?一体どんな子が、何をきっかけにそこまで「夢中」になるのか

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「テーマが決まらない!」「子どもがなかなか手をつけず、イライラしてしまう」。
夏休みの宿題のなかでも難易度の高い「自由研究」。しかし、子ども自身が興味を持つテーマが見つかれば、高い成長が見込める学習でもあります。福井県に住む五十嵐優翔(ゆうと)さんは「紙漉(かみすき)」という1つのテーマで5年間研究に取り組み、その研究がもとで「FOOD PAPER」という製品が生まれるまでに。どのように研究をしたのか、なぜ続けることができたのか?その理由をお母様の匡美(まさみ)さんに伺いました。

この記事のポイント

きっかけはテレビ番組。家業とリンクし親もびっくり

五十嵐家は1919年から続く、越前和紙の工房。伝統工芸士である匡美さんは3人の子育てをしながら、日々仕事に励んでいました。末っ子の優翔さんが小学4年生のとき、初めて自由研究の宿題が出ます。「最初は“何をテーマにしよう?”など迷っている様子でしたが、私は紙漉をテーマにするとは思いもよらなくて。“水質調査をしたら?”なんて言っていたんです」

夏休みのある日、テレビを観ていた優翔さん。「そこでバナナから出来る紙を取り上げていたそうなんですが、途中から観たため実際は幹の皮だったのに実の皮だと勘違いして。それなら自分でも出来ると思いついたらしく、私に“バナナの皮で紙を漉いてみたい”と言ってきたんです」。

そこで匡美さんは、工房にあった体験用の簡易紙漉きキットを優翔さんに貸し出します。「最初のバナナがちゃんと紙になったのが楽しかったらしく、そこから手当り次第に家にあるもので紙を漉き始めて。冷蔵庫をあけたらあるはずのセロリがない…なんてこともありました(笑)」。

14種類の紙を漉き、その工程と結果をレポートした自由研究は、第64回越前市小中学校児童生徒理科作品展で優秀賞を受賞。「その経験が次の年へのモチベーションになったのだと思います」

4年生のときの自由研究。たくさんの野菜で紙を漉いた

調べるほどに奥深い。1つのことを探求することで得られた成長

翌年も紙漉をテーマにした優翔さん。「夏休み前に“顕微鏡を買って欲しい”と」。1年目に紙を漉いたときに“繊維を観察したい”という気持ちが芽生え、それを自ら親に交渉。「もちろん断るはずがありませんよね(笑)。新しい顕微鏡を使い、どんどん紙漉にハマっていく様子が見てとれました」。

家族や学校の先生に“これを調べるにはどうしたらいい?”と教えを請いながら、自分で実験道具を制作したり、計画性をもって研究を進めたといいます。「実験はだいたい2週間ぐらいかけて少しずつ進め、その結果や考察を数日間かけてまとめていましたね」。

年を重ねるごとに研究は本格化し、中学2年の夏休みが終わると”来年は食べられる紙をつくりたい!”と考えた優翔さんでしたが、新型コロナの影響で中3の夏休みがなくなってしまい、最後の自由研究はできなかったのだそう。「本人的にはやりたかったようでしたが、受験勉強に集中するということで、それは残念がっていましたね」。

5年生。顕微鏡を使うことで繊維が観察できるように

6年生。紙の書きやすさと強さを調べた

左:中学1年生。 紙漉きに使うネリと水の関係を調査 右:中学2年生。 麻などからとれる靭皮繊維(じんぴせんい)の特性がテーマ

急展開、自由研究が「FOOD PAPER」という製品に

そんな5年間の自由研究が思わぬ形で製品化されたのが、2020年4月。きっかけは母・匡美さんが2019年に参加した、ふくい産業支援センター主催の経営とブランディング講座でした。「デザイナーさんと組んでプレゼンをすることになり、ディスカッションをする中で“食べられる紙ってあるんですか?”と聞かれたんです。“食べられる紙はないけど、息子が自由研究で食べ物から紙を作ったんですよ”と言うと“それです!!”と。そこで息子の研究をもとに『FOOD PAPER』を考案し、発表しました」

息子さんの研究をベースに、廃棄食材を原料にすることで環境負荷を軽減するというアイディアは高く評価され、その年の最優秀賞を獲得。「その後の展示会に出せるということになり、急ピッチで量産の試作をするなど一気に慌ただしくなりました」。展示会でも好評を得て「FOOD PAPER」が誕生しました。

自分の自由研究が製品化された優翔さんは、どんな反応だったのでしょうか。「最初は驚いていましたが、実物を見てかなり嬉しかったようです。一度イベントで本人が販売をしたのですが、多くの人から“すごいね”と褒めていただき、誇らしげでした。新聞やテレビの取材を受けたりと、なかなか経験できないようなことを経験させてもらえたのは、とてもありがたいことだと思っています」。

製品化には、5年間の自由研究が資料として役立った

子どもの自主性に任せる

優翔さんが研究を継続できた理由は何だったのでしょうか。「本人の自主性に任せた、というと聞こえがいいですが、実はあまり構ってあげられなかったというのが本当のところで(笑)。小さい頃から工房の隅に座らせて、私は仕事をしていたんです。でもそういう環境にいたからこそ、私が何気なく言っていた“ネリが合わない”という言葉から、紙漉におけるネリの重要性を調べようと思ったりと、研究のネタが見つかったのかもしれません」。

高校生になった現在、部活に熱中しているという優翔さん。「紙漉への興味が薄れたのかは分かりませんが『FOOD PAPER』が製品化されたときに、“授業でやったSDGsを身近に感じるようになった”と話していたり、1つの学びが様々なことにつながっていくのだということを、息子を見ていて感じますね」

まとめ & 実践 TIPS

自由研究というと”毎年テーマを変えるもの”と思いがちですが、同じテーマを継続することで、このような成果が出ることも。まずは子ども自身が興味を持つテーマを一緒に見つけてみてはいかがでしょうか。

・五十嵐優翔さんの実際の自由研究はこちらでもご紹介しています
みんなの自由研究作品/ベネッセ教育情報サイト
https://benesse.jp/jiyukenkyu/matome/gallerlly/

・自由研究のテーマが250以上!実験動画やまとめ方まで掲載
自由研究かんたん解決ガイド/ベネッセ教育情報サイト
https://benesse.jp/jiyukenkyu/

・商品化されたものはこちら
FOOD PAPER
https://foodpaper.jp/

執筆/橘川麻実

プロフィール

五十嵐匡美

1919年創業の越前和紙工房「五十嵐製紙」にて製造・商品開発を手掛ける。伝統工芸士

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