貧困・格差の解消にも力 2030年見据え教育計画策定へ

文部科学省の諮問機関である中央教育審議会は、2018(平成30)年度から5年間にわたる国の教育政策の方向性を定める「第3期教育振興基本計画」の本格的な論議を始めました。現在の小学生が大人になる「2030年以降の社会の変化」を見据えて施策を考えるなかで、今や大きな社会問題になっている、子どもの貧困・格差への対応も課題としています。

小学生が大人になるころを想定

2030(平成42)年といえば14年も先の話ですが、小学1年生の子どもがストレートに進めば、大学3年生。そろそろ就職が気になるころです。その時には、人工知能(AI)をはじめとした「第4次産業革命」とも呼ばれる技術革新によって、今ある仕事のおよそ半分が、AIなどに取って代わられる時代になっていることが、国内外の研究で予測されています。そんな先行き不透明な時代にも柔軟に対応できる力を、今から子どもたちに付けさせる必要があります。現在、学習指導要領の改訂(小学校は2020<平成32>年度から全面実施)を検討しているのも、10年後である2030(同42)年以降の社会を見越してのことです。

2006(平成18)年12月に戦後初めて教育基本法を改正し、国が教育振興基本計画を策定することを盛り込んだのも、「国家百年の大計」ともいわれる教育の重要性を考えて、中長期計画を立てて施策を進めようとしたものでした。ただ、これまでの計画は、総花的だったり、十分な予算を付けるだけの論拠を示すことが不十分だったりして、文部科学省はじめ教育関係者が当初期待したような、教育環境の大幅な充実には十分つながらなかった面も否定できません。

そこで、第3期計画では、教育政策の検証改善サイクルを確立し、効果的・効率的な施策立案につなげる方策を探ることにしています。とりわけ、経済協力開発機構(OECD)の協力を得ながら、日本の教育の「強み」と「弱み」を明らかにして、具体的な施策に反映させる一方、OECDが計画している、2030(平成42)年に向けた教育の在り方の提案(Education 2030)にも役立ててもらおうとしています。

「貧困の連鎖」、意欲さえ失わせる実態に手立て

そんな第3期計画で、柱の一つに挙がっているのが、子どもの貧困など格差への対応です。ただでさえ日本では少子高齢化が進行しており、今の子ども一人ひとりにがんばってもらわなければ、将来は立ち行きません。その障害として立ちはだかるのが、貧困の連鎖です。

2012(平成24)年時点で子どもの相対的貧困率は16.3%で、ほぼ6人に1人。ひとり親世帯では、54.6%にもなっています。中には2代、3代と続けて生活保護を受けるといった「貧困の連鎖」も少なくなく、そうした家庭で育つ子どもが、学習意欲ばかりか将来への意欲さえ失っている問題が指摘されています。学校を「貧困対策のプラットフォーム(基盤)」として、福祉・雇用政策などとも連携した、真に有効な手立てを打っていくことが期待されます。

この他、障害などの困難を抱える子どもや、従来の枠組みでは十分に能力を発揮できない才能を持つ子どもへの対応など、課題はたくさんあります。くれぐれも計画倒れに終わらないよう、すべての子どもの幸せとともに、社会の発展にもつながるような計画の策定を期待したいものです。

  • ※中教審 教育振興基本計画部会(第8期~)第4回配布資料
  • http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo14/shiryo/1371139.htm
  • (筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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