うっとうしがる子どもを、ほめ続けても効果があるのか?[やる気を引き出すコーチング]
2014年1月末掲載の「子どもの『このへん』をもっと認めてみませんか?」のコラムにコメントと質問を寄せてくださったあんっさん、いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。
「アドバイスのように褒(ほ)めてやりたいと思ってもどうしてもとってつけたような言い方になってしまいます。子供に褒めて、やる気を出させようとしているこっちの気持ちが見透かされてるように思います。現に褒めても子供からの反応はほとんどなく聞き流すか、うっとうしがるような顔をしています。こんなんでも効果あるんでしょうか」
そのお気持ち、心からお察しいたします。せっかくほめているのに、かえってうっとうしがられては、本当に効果があるのだろうか?とむなしくなってしまいますね。私も時々、そういうお子さんに出会うと、投げかけ続ける気力を失いそうになります。が、そんな時は、この事例を思い出して、また勇気を取り戻しています。遅くなりましたが、ご紹介しますね。
ぶれずに同じ言葉を言い続ける
私の知人Kさんの息子さんの大学受験の時のお話です。それなりにがんばっていますが、返ってくる模試の結果は「E判定」ばかり。肩を落とす息子さんにKさんがかけた言葉は、「お前は本当はできるやつだから」の一言だけでした。次の模試の結果もまた「E判定」。でも、Kさんは繰り返したそうです。「お前は本当は!できるやつだから」。息子さんは明らかにうんざり顔でした。「他人事だと思って気休めを言って」という気分にもなったようです。それでも、Kさんは同じ言葉をかけ続けました。
試験当日、受験生は少なからず緊張します。「うわー、緊張してきた! どうしよう?」。そんな時に、息子さんは思い出すのです。お父さんから言われ続けた言葉を。「そうだ! 自分は本当はできるやつなんだ。だから大丈夫!」。結果として、第1志望校に合格されたそうです。言葉の力というのはすばらしいなと思わされます。
Kさんから私は、コーチとして大切な考え方を教わりました。
「子どもは保護者が言ったとおりの子になるんですよ。『できない子』と言えばできない子になる。『できる子』と言い続けると本当にできる子になっていく。できるから『できる子』と言うんじゃない。言葉が先。できなくても『できる』と言っているから『できる子』になるんです」
むなしくなっても「言い続けることできっと効果がある!」と私が信じられるようになったお話です。
子どものセルフイメージは大人の言葉がつくる
もう一つ興味深いことがあります。たとえば、「あなたの長所は何ですか? 短所は何ですか?」と聞かれたら、どんな言葉を思いつきますか? こうしたセルフイメージを考えてもらう質問を私はコーチングや講座の中でよくします。答えてもらったうえで、「そう思う理由は何ですか?」と聞いてみると、子どもも大人も、半分以上のかたが、「昔から親にそう言われてきたので」と答えます。中には、「通信簿にそう書いてあった」と言う子どももいます。
「あなたは引っ込み思案だから」
「あなたは落ち着きがないから」
ずっとそう言われてきたから、大人になってからも「そうなんだ」と思いこんでいる人が案外多いのです。そのイメージにしばられて、自分の可能性を狭めている人もいるのです。
ご自身のセルフイメージをふりかえってみられてはいかがですか? 保護者から言われた言葉がずっと刷り込まれてはいませんか? 子どものセルフイメージの多くは、良いも悪いも大人の言葉がつくっているのです。
まずは、とってつけたような言い方でもいいのです。最初は見透かされていてもいいのです。それでも効果はあります。今この一瞬に効果が見えなくても、投げかけ続けた言葉は、お子さんの長い人生の中で、必ずやお子さんの中でよみがえる時がきます。刷り込まれていく言葉が、「あなたはこんなすばらしい存在だ」というプラスの言葉であってほしいと私は心から思います。
『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』 <つげ書房新社/石川尚子(著)/1,575円=税込み> |