子どもを信じる気持ちが子どもを伸ばす[やる気を引き出すコーチング]
新しい年を迎え、気分があらたまるこの頃ですね。
いつもこのコラムを読んでいただき、ありがとうございます。長きにわたり、連載を書かせていただいていることを本当にありがたく思います。年の初めにあたり、心から感謝申し上げます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
新年第1回は、原点に戻り、さまざまなコミュニケーションスキルを下支えする「コーチングの考え方」についてお伝えしてみたいなと思います。
子どもが「やりたいこと」を尊重する
先月、北海道の雪深い地域へ講演に出向きました。その時、たまたま、帰省先から学校の寮に帰るところという高校2年生の女の子と同じ列車に乗り合わせました。とても気さくな子で、楽しくいろいろな話をしました。
「私、実家が愛知県なんですよ。どうしても、スキーがやりたくて、北海道の高校に入ったんです。小学校のころから、中学校はここに行って、高校はここに行く、って自分で決めていました」
「へー! すごいねー!」
話を聴きながら、「こんな子がいるんだー!」と終始感心させられっぱなしでした。「あなたのそのコミュニケーション力と自分で考え行動する力があれば、これから先、どんなことでもできると思うよ!」と心から承認しました。
このようなたくましい子は、保護者のかたのどんな関わり方によって育つのだろう? 当然、知りたくなるので、聞いてみました。
「私が『やりたい』って言ったことには、とりあえず、親は反対しないですね。『じゃあ、やってごらん!』って感じです」
「ああ、やっぱりそうか」と思いました。私が、「この子は何か違う!」と感じて、保護者のかたについて質問してみる子どもは、だいたい同じように答えます。「親は、私が『やりたい』と言うことに反対しない」と。主体性を尊重してもらえた子どもは、自らたくましく生きる力を身に付けていくのだと実感せずにはいられません。
「信じる」から子どもはそうなっていく
コーチングの基本理念に「相手の可能性を信じる」というものがあります。なんだか抽象的できれいごとのようで恐縮ですが、「この子は自分で考えられるはずだ」「自分でできるはずだ」「もともとやる気も持っているはずだ」と信じて向かい合うことからコーチングはスタートします。信じるからこそ、相手の主体性を尊重し、受け入れることができるのです。信じてまかせることは、けっこう勇気がいります。しかし、保護者の側が勇気を持って信じるスタンスに立った時、子どもは本来の意欲や力を開花させるように思います。
小学生向けコミュニケーション講座をやっている時に、いつも実感します。こちらが準備している内容をはるかに超える発想力を子どもたちは持っています。私が「こんな方法もあるよ」と教えるより、子どもたちのアイデアのほうがずっとユニークで制限がありません。大人の発想では決して思いつかないことを言い始めます。それを受け止め、承認すると、子どもたちはどんどんやる気になります。「今日も子どもたちにまかせたほうがずっと有意義だった!」と思うことがしばしばです。「きっと自分たちで学んでくれるにちがいない」と信じてのぞめばいいのです。
「しあわせだから笑うのではない。笑っているからしあわせになるのだ」という言葉がありますが、「もともとできるから信じるのではない。信じるからできる子になっていくのだ」というのがコーチングの哲学なのです。
私はいつも子どもたちから試されているように感じます。「あなたはどこまで自分を信じてくれる人なのか?」と。信じて関わり続けると、子どもたちは必ずそれに応えてくれます。そこが本当におもしろいです!
今年も、より多くの子どもたち、大人の皆さまに、人の可能性のすばらしさとコミュニケーションのおもしろさを伝えていきたいと思っています。
『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』 <つげ書房新社/石川尚子(著)/1,620円=税込み> |