「気持ち」を伝えることで子どもは自ら動く[やる気を引き出すコーチング]

「『お母さんのその言い方、ムカつく!』と、この前、息子に言われたんですよー! 『I(アイ)メッセージで伝えるといい』って聞いたので、やっているのに、Iメッセージが通用しない子もいるのでしょうか?」というご質問をいただきました。

このコラムでも、折々にお伝えしている「Iメッセージ」ですが、どんなものだったのかを一度復習しておきましょう。
「私はうれしいよ」「助かったよ」など、主語が「私は……」となる言い方をIメッセージと言います。これに対して、主語が「あなたは……」となる言い方をYouメッセージと言います。日本語では、どちらも、主語を省略して言うことが多いかもしれませんね。Iメッセージには、Youメッセージで言われるよりも、受けとりやすい効果があります。

たとえば、「(あなたは)どうしてやらないの?」と言われると、責められている感じがしますが、「やってくれると(私は)とても助かるなあ」と言われると、穏やかに受けとめることができます。
ところが、よくよくお話を伺ってみると、今回は、ちょっと違うケースのようです。



「偽のIメッセージ」に注意

このお母さんが、息子さんに伝えたのは、こんな言葉でした。
「将来のことを考えて、勉強はしておいたほうがいいとお母さんは思うよ」。

確かに、「お母さんは(私は)」が主語になっているので、Iメッセージのように感じますが、これは、偽のIメッセージです。自分の価値観を相手に押しつけてしまう言い方であり、形はIメッセージでも、ニュアンスはYouメッセージです。「あなたは勉強すべきだ」と言っているようなものです。これでは、相手は素直に受け取れません。同様に、
「私の意見は間違っていないと思う」
「それはあなたのやる気の問題だと思う」
なども、偽のIメッセージです。

自分の「意見」ではなく、「気持ち」を伝えるところに、Iメッセージの効果は発揮されます。
今回の場合、「気持ち」を伝える言葉に言い換えるとしたら、
「勉強していない様子だと心配なんだよね」
「勉強している姿を見ると、お母さんも励まされるなあ」
などの言い方ではどうでしょうか。



「気持ち」を伝える効果

ここ半年程、面談コーチングを行っている高校2年生のMさんですが、悪びれもせず、時間に遅れてくることがありました。こちらは、多少イライラしながら待っていますので、顔を見るなり、「もう何時だと思っているの? 遅れるなら連絡ぐらいしてよ」(Youメッセージ)と言いたくなります。しかし、それでは、お互いに気持ちよくコーチングを始められません。そこで、Iメッセージで伝えます。

「よかった! 来てくれて。あんまり遅いから、途中で何かあったんじゃないかと思って、とても心配だったんだよ。来てくれて安心した。こんな気持ちで待っているのはしんどいから、遅れる時は、メールをくれるとうれしいなあ」。

「心配」「安心」「しんどい」「うれしい」など、「気持ち」を伝えられると、言われたほうは、ちょっと考えてしまいます。「自分の行動が相手をそんな気持ちにさせたんだ」という影響に気付きます。「じゃあ、次はこうしたほうがいいかも」と自ら考えようとします。「次は遅れないでね」という指示的な言い方よりも、よほど自発性を引き出します。
その後、彼女は時間を守るようになりました。時間どおりに来てくれた時も、Iメッセージで「気持ち」を伝えます。「時間どおりに来てくれてうれしいよ。今日も、Mさんと話すのを楽しみにしていたよ」。すると、もっと時間厳守を意識してくれるようになります。

一般論や自分の意見に「……と思う」と付け加えるのではなく、あくまで、自分の「気持ち」を伝えることで、子どもは自ら考え、気付き、動くのです。

『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』
<つげ書房新社/石川尚子(著)/1,620円=税込み>

プロフィール

石川尚子

石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。近著『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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