人間力と学力の関係 ある女子校の事例[中学受験]
神奈川県のある私立女子中高一貫校では、人間力を向上させることで、自分で問題を解決できる能力などを身に付け、社会で活躍できる人材を育てる教育を行っている。2年ほど前から、人間力を明確に定義し、行事を使って人間力を育成し、大学受験に生かす指導を行ってきた。高校生にとって、最も大きな問題は大学受験であろう。中学から養った人間力を使って大学受験に取り組み、志望大学の合格をめざした受験指導と人間力の指導を融合させた教育を行っている。
この学校では、この2年間、大学合格実績が向上している。特に昨年は大幅に向上したが、さらに、2013年の大学入試でも昨年以上に高校3年生の最終の模試の結果が向上しており、昨年以上の大学合格実績が出そうだ、ということであった。人間力の教育が、学力向上に少しずつ浸透してきた可能性がある。
下の「(1)人間力:生活面(5段階での自己評価)」のグラフは、上記学校の現高校3年生の人間力と学力の平均の推移をグラフにしたもので、「人間力の生活面と学力」と「人間力の社会的能力面と学力」の関係を分析した。上記の学校では前期と後期に生活面と社会的能力面の人間力自己評価を行い、学力については、他にも模試は行っているが、最も学力を測定しやすい進研模試のランクをポイント化してグラフ化した(文末の表参照)。人間力と学力を1つのグラフで分析することは、これまであまりなく、おもしろい試みだ。
このグラフを見ると、人間力の生活面は高2の2011年10月~高3の2012年4月では、どの要素も向上したという自己評価で、学力も同様に向上している。学力は偏差値をポイント化したものだ。偏差値は、周囲と同程度の勉強では向上しないものなので、学年平均での向上は難しいことを考えると偏差値が向上したことは評価できる。
高3の2012年4月~10月では、「(4)身だしなみ」を除くどの要素も下降したという自己評価だが、学力はこれまで以上の伸びとなっている。自己評価が下降しているのは、それほど悪いことではなく、自分自身を見つめ、反省していると考えることもできる。実際に、人間力が下降した次の期間に学力が上がった事例も多いそうだ。
また、次の「(2)人間力:社会的能力面(5段階での自己評価)」のグラフを見ると、社会的能力面は高2の2011年10月~高3の2012年4月では「(11)協調性」を除き、どの要素も向上した自己評価で、「(11)協調性」が下降したのは、大学受験に突入し余裕がなくなった結果ではないか、ということであった。高3の4月~10月では、「(7)思考力」を除き、どの要素も向上した。「(7)思考力」が下降したのは、受験勉強に取り組む中で、生徒にとって反省点だったのでは、ということであった。
ここで注目すべきは、高2の2011年10月では最も自己評価の低かった「(9)行動力」が、他の要素に比べて急激な伸びとなっている。このことから行動力が学力の向上を左右することも明確だ。中学受験でも同様のことがいえるのではないだろうか。