私立高校選びのポイント (2) 私立高校受験への対策と保護者の役割 [高校受験]
■「特進コース」が広がっているが……
近年、私立高校の募集要項の変更点で最も多いのは、「特進コース」の設置です。この背景としては、次のようなことが考えられます。
・大学進学率が50%を超えて半数以上が大学に進むようになった
・このところの大卒の就職難から、就活をせいこうさせるために、難関大学志向が強まっている
そのため多くの高校が、難関大学受験を意識した「特進コース」を設置するようになっています(年々「特進医歯薬理系」「国立特進」といったインパクトのある名称を付けたものが増えています)。このようなコースを設置するねらいは、一般コース(名称は「総合コース」などいろいろ)とは別枠の少人数の募集をすることで、偏差値ランキング表の高いところに校名が載るようにすることにあります。そうすることで、学力の高い層に受験してもらおうというわけです。私立高校は上位コースの設置、さらに数年後にはその上に最上位コースを設置、その一方で、一般のコースから廃止していく、という戦略を採っています。こうして徐々に学校全体のレベルを上げていくのです。
よく、こうした「コース」に所属すれば難関大学に進める、と他力本願的な錯覚をしている生徒や保護者のかたがいますが、大学合格はあくまで本人の意識次第ということを、十分承知しておいてください。
「コース制」とひとくちに言っても、学校によって違いが大きく、入学後は校舎も別、授業時間数から教材・講習まで別という学校もあれば、名称だけで実質的にはほとんど差がない、という学校もあります。カリキュラム・教材といった面ではほとんど差がなくても、上位コースには授業力に優れたベテランの先生が配置されていることが一般的です。
ですから、受験するにあたっては、名称で選ぶのではなく、その学校の「コース制」はどのようなシステムなのか、十分調べておくことが大切です。
■出願基準と学校のレベルは比例しない
出願基準の高い学校ほど学校のレベルも高い、と思っている受験生や保護者のかたがいますが、これも一概にそうとはいえません。もちろん全体的には、出願基準を低くしないと受験生が集まらない学校もあれば、高くても集まる学校もあり、当然後者の学校のほうが生徒の学力は高くなります。
ただ、これにも学校の戦略による部分があります。
東京の、ある高校の例ですが、より多くの受験生に受験してもらえるよう、あえて本来のその学校のレベルからすれば、低めの出願基準を提示しています。こうしたことの背景には、調査書の成績が絶対評価になって、中学校によってバラツキが大きいことがあります。
ちなみに、その学校の今年の推薦入試における調査書の成績と合格者数の相関関係を見せてもらったところ、次のようでした。
5教科のうち、5でないのは1つだけ、という受験生でも不合格になっている一方、3と4が混じった受験生でも合格しているのです。ですから、この学校では5教科は20以上でよさそうなところを、18という出願基準(9教科に2がないことという基準もあり)を提示しているのです。
このように、出願基準はそのまま学校のレベルに比例しないということと同時に、オール5でも安心できないということを知っておいてください。
以上、私立高校を見るうえでのいろいろな視点を提供してきました。しかし、あくまで大切なことは、ご家庭の教育方針と学校のそれとがマッチしていることです。その判断のひとつが校長の話に共感できるかどうかです。
ぜひ、共感できる学校を受験してください。