子どもが自ら考えるようになるシンプルな質問[やる気を引き出すコーチング] 

「本当に言ったことしかやらないんですよ」「自ら考えて自発的に動ける者はほとんどいません」。これらは、企業研修の現場で、よく聞くお声です。新人指導担当の先輩社員、上司がよくなげいています。
学生時代までずっと、保護者や先生から、「言ったとおりにしなさい!」と言われて、言われたとおりにしないと叱られていた人たちが、社会人になったとたんに、「自発的に!」と言われても、とまどうのは当然のことでしょう。私は、むしろ、新人の皆さんに同情します。

「考えろって言われても、やったことがないことをどうしていいのかわかりません」「本当に自分で考えていいんですか?」そんな反応をする新人たちも少なくありません。
「自ら考える力」は、社会で力強く生きていくために最も必要な力の一つといってよいでしょう。子どものころからもっと、自分で考える習慣を付けてほしいと思います。そのために、こんなコミュニケーションから始めてみるのはどうでしょうか?



「どうしたい?」と質問する

「これ、壊れたんだけど……」と、壊れたおもちゃを見せながら、最後まで何も言おうとしない小学4年生男子のお母さんKさんは、ある時、疑問を持ったそうです。「どうして、『壊れたんだけど……』で止めるんだろう?」。そこで、気が付いたそうです。そんな時はいつも、自分が先回りをして、「え?  壊れたの? どれどれ? 見せて! こうすれば直るんじゃないの?」と解決してしまっていたことに。
「そうか! 何か言えば、全部、親がやってくれると思っているんだ!」

折しも、コーチングを学び始めたKさんは質問をするようにしました。
「壊れたんだね。それで、どうしたいの?」
「え? ……直したい」
「うん、それで?」
「えっと、僕にはできないので、お母さんに見てほしい」
「なるほど! そう言ってもらえると伝わるね」
こんな会話を意識するようにしました。

同様に友人関係のシーンでも、Kさんは会話を工夫してみました。
「もう、最悪! 〇〇のやつ、超ムカつく!」
と、友達とケンカをしたことをぼやいていたお子さんにも、
「そう。で、どうしたいの?」
と質問。そのうち、
「ここで、お母さんにいろいろ言っていてもしょうがないから、とりあえず、必要最低限の会話はするようにする」と、自分なりの解決策を見出して、学校に行ったそうです。

「『どうしたい?』と質問をするようになってから、自分から動くようになった気がします」とKさん。
こちらが、先に、「こうしたら?」「ああしたら?」と伝えるのではなく、「どうしたいのか」を本人が考えるよう促すことで、自分で考える習慣が付いていくものです。



「どうすればいいと思う?」と質問する

もう10年近く、コーチングをさせていただいているSさんが折々に話されることです。
「コーチングに出会って何がよかったかって、『どうすればいいと思う?』という質問に出合ったことです。これ! すごくシンプルな質問だけど、最強ですよね!」。Sさんがコーチングを受け始めた当時は小学生だった息子さんも、早いもので、もう大学生になったそうです。

「息子が、だだをこねている時も、『どうすればいいと思う?』って冷静に質問できたんですよ。いたずらして、叱ったあとも、『次はどうすればいいと思う?』と質問しました。そうすると、しばらく、ムスッとしていても、何か自分で考えてやり始めるんですね。高校生になってからは、たいした相談もされなくて、大学も自分で決めて、自分で受験勉強して入りましたよ! 親はもうあんまり心配していないですね。『どうすればいいと思う?』っていう質問を、息子も自分で使っているみたいです」。

本当にすばらしい親子だなあと感動します。

その場で、すぐに答えが返ってこなくても、質問し続けることで、子どもは自分なりに考え始めます。その習慣は、将来、確かな「生きる力」となります。シンプルな質問を日々重ねていくことをぜひおすすめします。

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プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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