子どもの「このへん」をもっと認めてみませんか?[やる気を引き出すコーチング]

「中1の女子ですが、すきま時間があると携帯のゲームをしたり、ラインをやったりして、勉強は夜9時になってやっと始めます。それでついつい『すきま時間があると携帯だね』と皮肉のように言ってしまうのですが、こんなことも資源に見方を変えることはできるのでしょうか?」
以前、このコラムへのコメントで、このようなご質問をいただいていました。せっかくコメントをいただきましたのに、ずいぶんたってからのお返事で、たいへん申しわけなく思っています。まるたちゃんさん、ありがとうございました。遅ればせながら、この場を借りて、お返事させてください。



できていることを認める

まずは、「夜9時になってからでも勉強を始める」ということが、私は、とてもすばらしいことだと思います。携帯をさわっていたのに、たとえ嫌々だったとしても、「やっぱり勉強しなきゃ」と本人が思っているからこそ、勉強を始めるのだと思います。そこは、何時であれ、「勉強を始めた」という事実を認めてあげたいです。
「勉強もしてるね! けじめをつけられてるね! やると思ってたよ」
私はこんな言い方で認める言葉を伝えようかと思います。勉強を終えたあとで、認める言葉を伝えながら質問をしてみたいです。

・「遅くまでお疲れさま! 遅い時間でもよく取り組めたね」(先に認める言葉)
・「今日はどんな勉強をしたの?」(そのあとで質問)
・「どれぐらいできた?」(話を聴きながら一つずつ質問)
・「いつも何時までに終わらせることができたらいいと思う?」
・「明日は何時からやる?」 


こんな感じでしょうか。どんな答えが返ってくるかはわかりませんが、「携帯にそれだけ集中できるあなたならきっと、勉強にも集中して取り組む力があるはず」という前提で質問します。
できていないことだけを指摘されても、やる気は起きませんが、少しでもできていることをできている時に認めてあげると、「自分もやったらできるんだ!」という肯定感につながるように思います。
資源として見るならば、「興味が持てることには時間を忘れて取り組める」「すきま時間を効果的に活用できる」「携帯操作が得意」などの見方ができるかと思いますが、携帯に関しては、最近、中毒症状が見られるお子さんもいるようですから、節度を考えさせることは必要だと思います。



プロセスをどんどん認める

たとえば、お子さんが、数学の問題を本人なりにがんばって解いたけれど、答えが間違っていた場合、皆さんはどんな言葉をかけますか?
「ここ、間違っているよ。もっとよく考えてみて! どこがわからないの? がんばったのはわかるけど、正解できないと点数はもらえないから」などと言われるとどうでしょう? 間違ってしまったことは事実ですが、結果だけを言われると、前に向かう意欲はわかないですね。
こんな時、こんなふうに声をかけているという学校の先生の事例を伺いました。
「あなたが勉強して、いろいろな解き方を覚えたからこそ、こう考えて、こうしようと思ったことが伝わってくる間違い方だったよ。目の付けどころは間違っていないよ。ここまでできたら、正解まではあと少しだよ。確実に力が付いているよ」。間違った解答に対して、ここまで承認できるものなのか!と、深い感動を覚えました。

私たちは時々、10で完成するものはきっちり10できなければ意味がないとしてしまうことがあります。1や2できても、「まだまだそれでは足りない」と評価してしまいます。しかし、10に到達するには、1や2を積み重ねるプロセスがあってこそと言うこともできます。その1や2にもっと光を当てて、前進していることを認められたら、もっとやる気は引き出されるのではないでしょうか。

テストで思わしくない点数をとって帰ってきた子に対して、「悪い点」「努力不足」という見方だけで片付けず、「ここはできているね。ここまではできたんだね。まだまだ伸びる点数だね。これからが楽しみだね」というような言葉をかけられる大人でありたいと思います。

『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』
<つげ書房新社/石川尚子(著)/1,575円=税込み>

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

子育て・教育Q&A