「絶滅危惧動物」とは?保護するためにできることは

絶滅危惧種認定とは? 最新の動物一覧

なぜ生き物が絶滅の危機に瀕してしまうのでしょうか。地球の環境の変化や環境汚染、外来種による生態系の破壊、乱獲による絶対数の減少など、さまざまな原因があげられますが、主に人間の活動によって絶滅してしまう動物がいるのは間違いのないことです。

世界の絶滅の危機にある動物と植物は、世界的な自然保護団体のIUCN(国際自然保護連合)がレッドリストにまとめています。日本国内でもこれにならい、野生動物の絶滅の危険度をまとめています。
動物では、哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、汽水・淡水魚類、昆虫類、陸・淡水産貝類、その他無脊椎動物の分類群ごとに、植物については、維管束植物、蘚苔類、藻類、地衣類、菌類の合計13の分類群ごとに作成され、現在は2020年に発表された「環境省レッドリスト2020」が最新になっています。これは2012年に発表された第4次レッドリストの第5回目の改定に当たります。
また、レッドリストでは、絶滅のおそれのある種を以下のとおり、ランク分けをして評価しています。
●絶滅 (EX) 我が国ではすでに絶滅したと考えられる種
●野生絶滅 (EW) 飼育・栽培下、あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ存続している種
●絶滅危惧I類 (CR+EN) 絶滅の危機に瀕している種
(1)絶滅危惧IA類(CR) ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの
(2)絶滅危惧IB類(EN) IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
●絶滅危惧II類 (VU) 絶滅の危険が増大している種
●準絶滅危惧 (NT) 現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種
●情報不足(DD) 評価するだけの情報が不足している種
●絶滅のおそれのある地域個体群 (LP) 地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高いもの

※ 出典/環境省

絶滅危惧種ランキング

「環境省レッドリスト2020」では、上記の13分類群の絶滅危惧種の合計種数は3,716種。これに、2017年に同じく環境省公表の海洋生物レッドリストに掲載された絶滅危惧種56種を加えると3,772種となります。
例えば、ランク分けの中でも最も絶滅の危険度が高い「絶滅危惧IA類 (CR)」にカテゴリされた中からイメージのしやすい哺乳類を取り上げると、以下の12種となります。(※ レッドリスト2020に「野生絶滅(EW)」の該当はなし)
・センカクモグラ
・ダイトウオオコウモリ
・エラブオオコウモリ
・クロアカコウモリ
・ヤンバルホオヒゲコウモリ
・セスジネズミ
・オキナワトゲネズミ
・ツシマヤマネコ
・イリオモテヤマネコ
・ラッコ
・ニホンアシカ
・ジュゴン

3,772種という膨大な絶滅危惧種の中で、哺乳類を取り上げただけでも、ラッコやニホンアシカなど、耳馴染みのある動物が取り上げられているのに驚くのではないでしょうか。

絶滅危惧種の対策と保護方法

かつての恐竜がそうであったように、生き物は絶滅すると、もう二度と地球上に戻ることはありません。また、それぞれの生き物は、自然の中で密接な関わり合いを持ちながら生存しているため、ある生き物が絶滅することで生態系のバランスがくずれ、自然環境全体に大きな影響を与えてしまうことにもなります。
では、絶滅危惧種を守るには、どのようなことができるでしょうか。

絶滅危惧種の保護には、一つは、生息域内で野生環境を保護する方法があります。絶滅の原因は、温暖化や海の汚染など自然環境が破壊されて生き物の生息地が奪われてしまうことにあります。こうした生存をおびやかす原因を特定して、これらを取り除いたり、環境を改善することで数が増えるようにするのです。
一方で、保護センターや動物園など、生息域外で直接保護をする方法もあります。海外では、密輸された絶滅危惧種の動物を保護センターで保護し、野生に帰すプログラムを行っているところもありますが、日本の場合は、国内に持ち込まれた絶滅危惧種は、どこから来た動物なのかがわからないため、動物園で保護、飼育することになります。

動物園での取り組みについて、天王寺動物園の飼育担当で獣医師でもある西岡真さんに伺うと、「動物園では、これらの動物の行動や息遣いを感じられるような生態的展示という、その動物が生活している環境を再現した展示をすることで、来場者に絶滅危惧種や野生動物に関心をもってもらうような取り組みをしています」と話してくれました。
また、動物園では『血統登録管理』をして絶滅危惧種の管理も行っている、と西岡さんは教えてくれました。「『血統登録』というのは、いわば絶滅危惧動物の”戸籍”。動物園の動物は普段いる動物園から出ることはないため、近親者との交配を避けるためにほかの動物園に移動させて交配させる必要があります。どの動物園の動物となら繁殖に適しているのか、きちんと計画を立てることで遺伝的多様性を残す取り組みをしているのです」(西岡さん)

動物たちを守るために

画像協力:天王寺動物園(アムールトラ)

こうした絶滅危惧種を守る取り組みは、動物園や保護センターだけでなく、私たちにもできます。天王寺動物園の西岡さんによると、「地球温暖化によって北極の氷が溶けるのを避けるために、エコ活動をするのも一つです。誰もいない部屋の電気をつけっぱなしにせずこまめに消したり、シャワーを出しっぱなしにせず節水したりというのは、お子さまでも簡単にできるでしょう。また、象牙の製品やワニ革のバッグ、毛皮製品、トラの骨を使った漢方薬など、野生動物由来の製品を買わないというのも大切です」ということでした。
身近でできることからはじめて、多様性のある地球を守っていけるといいですね。

取材協力:天王寺動物園 http://www.city.osaka.lg.jp/contents/wdu170/tennojizoo/

参照元
WWFジャパン https://www.wwf.or.jp/
いきものログ https://ikilog.biodic.go.jp/
【哺乳類】環境省レッドリスト2020 https://www.env.go.jp/content/900515981.pdf
日本の絶滅危惧種と生息域外保全-環境省 https://www.env.go.jp/nature/yasei/ex-situ/step0.html

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