「特別支援学校」に免許のない先生、なぜ?

教員免許状については「教員免許更新制」の導入をきっかけに、一般のかたも関心が高まっているようです。そもそも学校で正規に授業を行うには、その校種や教科の免許を持っている人がいなければなりません。免許のない人が教えていたことが発覚したために、その分の授業をやり直さなければならなくなった、というニュースもたまに聞かれるほど、厳しいものです。ところが、文部科学省が先頃公表した調査によると、「特別支援学校」には、特別支援学校の免許を持っていない先生が3割近くもいるというのです。これは、どういうことでしょうか。

その前に、特別支援学校とは何かをおさらいしておきましょう。以前は「特殊教育諸学校」と呼ばれていたもので、地域によってはまだ「障害児学校」と言ったほうが通りがいいのかもしれません。今でも「盲学校」「ろう学校」「養護学校」という名称のままの学校も少なくありませんが、法的には2007(平成19)年度より「特別支援学校」に一本化されました。これに併せて、盲、ろう、養護学校の3免許も一本化されました(ただし障害領域別)。
文科省調査によると、障害の種類に対応した免許を持って教えている人は67%で、ほかの障害種の免許で教えている人を合わせても70%を超える程度です。一方、特別支援学校の免許を持っていない人は27%でした。前年度に比べ6ポイントも減りましたが、依然として4人に1人は免許を持たずに教えている、ということになります。

これは実は、違法というわけではありません。教育職員免許法によると、もともと特別支援学校の教員になるには、特別支援学校の免許だけでなく、小・中・高校などの免許も同時に取得しておく必要があります。特別支援学校が、小・中・高校などに「準じる教育」(学校教育法)を行うものとされているからです。ところが、同じ免許法の付則で、「当分の間」は小・中・高校などの免許だけでいいことにする、という特例が置かれており、この規定によって、特別支援学校の免許がなくても教えられるのです。
なぜこういう措置を認めているかというと、そもそも障害種別の免許を持っている人が足りないことが大きな要因です。文科省では学校の設置者に対して、免許のある人を採用したり、免許を持たない人を配置した場合でも在校中に免許を取得させたりする努力をするよう、折に触れて求めてきました。それでも、一気に改善することは難しいようです。実際、少子化にもかかわらず、特別支援学校の児童・生徒数は年々増え続けています。
しかし、特別支援学校にこそ、さまざまな障害に対応した専門的な知識や指導力のある先生が求められるはずです。加えて、特別支援学校の先生には、通常の小・中・高校に対する「特別支援教育コーディネーター」としての役割も期待されており、充実は急務と言えるでしょう。

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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