引っ込み思案な娘が心配です【前編】[教えて!親野先生]

今週の相談

 

6歳の長女が、引っ込み思案で悩んでいます。仲のよい友達は何人かいますが、幼稚園では先生に言いたいことがあってもなかなか話しかけられずに、泣いてしまっているようです。友達の輪にも入っていけません。送り迎えで同じクラスの子を見かけると、私の後ろに隠れてしまいます。そういった行動に私もイライラし、ついカッとなって、怒ってしまいます。実は私自身の子ども時代とよく似ており、私も両親から「アンタはうじうじしててイライラする」等言われて育ちました。こんな親には絶対なりたくないと思っていたのに、まったく同じような育て方をしてしまっており、愕然(がくぜん)としています。来年から小学生になるので、もう少し自分の言いたいことをしっかり言えるようになってほしいのですが……。(もん さん)

 

【親野先生のアドバイス】

もんさん、拝読いたしました。

結論から言えば、まったく大丈夫なので何の心配もいりません。
ですから、安心してください。
そして、その子自身に備わっている成長のペースを大切にしてやってください。

6歳の時引っ込み思案でも、16歳、26歳、36歳、46歳、56歳……とずっと引っ込み思案とは限りません。
これから、小学校、中学校、高校と進んでいくなかで、子どもはどんどん変化し成長していきます。

子どもにはそれぞれ独自の成長ペースがあります。
私はこれを「オリジナルペース」と呼びたいと思います。
「マイペース」という言葉だといい意味に取らない人もいるので、「オリジナルペース」と呼びたいと思います。

たくさんの子どもの成長を見てきた経験のある人は、誰もみな例外なく同じことを言います。
それは、子どもの成長は百人百様だということです。
私は、百人百様でも足りないと思って、「億人億様」と言っているくらいです。

私のメールマガジンの読者からも、同じような実例を伺ったことがあります。
ある子は4歳まで母乳を飲み、幼稚園や小学校に入る時「行きたくない」と言って泣き、小学校低学年の時は泣き虫で発言もできず、消極的でいつも母親の側にピッタリくっついて離れようとしなかったそうです。
それでも、そのお母さんは子どものありのままを受け入れて思う存分かまってやったそうです。
他の子が爪切りを自分でやっていても、お母さんがやってやったそうです。
お母さんはいろいろなことを大目に見て、しょっちゅう抱きしめたり頬ずりしたりしていたそうです。
その子は、4歳で自然に乳離れし、小学4年生になって急に積極的になり、どんどん発言するようになり、運動会の応援団もやったそうです。
成績も少しずつ良くなって、とにかく自分に自信を持ち始めたそうです。
そして、小学5年生になる前に突然、自分で爪を切り始めたそうです。

私の知っている子でもこういう子がいました。
その子は、小学1年生の時、教室で先生に「○○さん」と名前を呼ばれても返事ができませんでした。
名前を呼ばれると、恥ずかしそうにうつむいて、そのまましばらく固まって動かなくなってしまうのです。
ですから、先生はうっかり名前も呼べないという状態でした。
授業中の発表など望むべくもありませんでした。

休み時間にも自分で遊ぶ友達を見つけられないので、いつも先生が他の子に頼んで一緒に遊んでもらうようにしていました。
食が細くて、給食は一口か二口しか食べません。
しかも、着替えやカバンの仕度も他の子の2倍の時間がかかるというのんびりさんでした。

その子は高校3年生の時に、なんと生徒会長になりました。
全校集会で壇上に立ってスピーチもしたそうです。
その子は、高校入学の時に今までの消極的な自分を変える決意をしたそうです。
「同じ中学校からその高校に進学した子が2人しかいなかったおかげで、周りの目を気にしないで新しいキャラに生まれ変われた」と言っていました。

ある子は、小学校でまったく勉強しなくて成績も振るいませんでしたが、中学2年生になったころから急にがんばり出しました。
中学3年生の中頃には学年でトップクラスになりました。

私の同級生のY君は、小学生のころの5段階の成績が1、2、1、2……だったそうです。
50歳の今、IT企業など五つの会社の創業社長です。

つい先日、ある出版社の編集者のTさんと電話で話しました。
彼女も子育て中のお母さんですが、こういうことを言っていました。
「子どもというものは、ある時できなくて心配したことが、数年したらあっけなくできるようになることがあるんですね。この前も『なんだ放っておいても2年後にはできたじゃん。心配して損した』と思うことがあったんですよ」

それと、もう一つおもしろいことを言っていました。
ここの話題とは少しずれますが、参考になるかたもいると思いますので書いておきます。

「男の子の作文や字は、めちゃめちゃなのが普通なんですよね。うまくまとめよう、うまく書こうという気はさらさらないみたい。女の子と比べないことですね」

少し話がずれましたが、そう言えば、私自身も小さいころはとても人見知りをするタイプだったようです。
思い出すのは、今から45年前の私が4歳のころのことです。

私の住んでいる地域では、農繁期に限って幼稚園入園以前の子は、近くのお寺にあった保育所に預けられることになっていました。
それで、同年代の子はみんなそこに行きましたが、私一人だけ行けませんでした。
理由は消極的で人見知りをするので、親と離れてそこで過ごすことができなかったからです。
ただの一日もその保育所にいることができませんでした。

みんなが保育所で楽しく過ごしている間、私は親たちの農作業の様子を一人でポツンと見ていたのです。
みんなが帰りにお土産をもらって帰る姿を、私はうらやましく見ていました。
それを、今でもうっすらと覚えています。

そんな私ですが、25歳で教師としての仕事を始めてからは、大勢の子どもや親たちの前で平気で話すことができるようになりました。
50歳の今、一年に数十回の講演を行っています。

こういう例は、世の中にいくらでもあります。
6歳の子が引っ込み思案だからと言って、どれほどのことがあるでしょう?
子どもはその子のオリジナルペースで成長していきますから、まったく大丈夫です。

……この続きは次回で紹介します。


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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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