身近な自然、野鳥観察入門【前編】日常生活に隠れている野鳥との出会い

多くの鳥が繁殖期を迎える季節が到来し、鳥のさえずりがあちこちから聞こえてくるようになりました。これから夏にかけて、海や山に出かけるというご家族も多いと思いますが、そこではたくさんの野鳥と出会うことでしょう。そこで、今回は、都立東京港野鳥公園で、自然環境の調査・管理や来園者への自然解説などを行うレンジャーを務める嶋村早樹さんに、お子さまと一緒にできる野鳥観察の楽しみ方を伺いました。



四季の移り変わりを身近で感じさせてくれる野鳥

ツバメが軒下に巣作りを始めたら春の訪れを感じたり、カモが池や川で泳ぎ始めると冬が来たなと思ったり、多くの人が野鳥の姿に四季の移り変わりを感じていると思います。また、野鳥を見ていると、木々の緑の深さや花の美しさに目がいったり、食べている木の実や虫に何だろうと思ったりと、周りの自然に関心が向くことでしょう。日常生活の中で自然を感じる機会として、お子さまにもぜひ野鳥観察を楽しんでほしいと思います。

野鳥を好きになるきっかけとして、よく挙げられるのが色の美しさです。体長12cmほどのメジロは萌黄色が鮮やかですし、「清流の宝石」とも呼ばれるカワセミはコバルトブルーの背中が見る人を引き付けます。メジロは春に梅や桜のミツを吸っている姿がよく見られますし、カワセミも実は東京のような都市部の川や公園の池にも生息しています。市街地では木々や草地が減り、巣を作る場所や採食できる場が限られているようですが、それでも、庭木や公園の木々、水辺などに鳥たちはたくましく生きています。

私がレンジャーを務める都立東京港野鳥公園は、東京湾の湾奥にあり、埋め立て地の公園です。近くに羽田空港と東京港があり、上空には飛行機が、周辺の道路にはトラックがひっきりなしに往来する場所にあります。それでも、公園では1日平均30種、少ない時期でも約20種の野鳥を観察できます。オオタカやノスリといった猛禽(もうきん)類も見られます。都市部でも、樹木や水辺があり、エサがあれば、鳥たちと出会えるのです。



身近にいる野鳥で感じられる観察の面白さ

「家の周りにはスズメやカラスしか見かけないから、観察をしても……」というかたもいるかもしれませんが、よく見かける身近な野鳥にもいろいろな違いがあり、観察をすると驚きや発見があると思います。
たとえば、種類の違いでいうと、住宅地でよく見かけるカラスには2種類います。「ハシブトガラス」と「ハシボソガラス」です。ハシブトガラスは、くちばしが太く、上部が曲がっていて、木の上から食べ物をねらって地上に降りてきます。森林のほかに、都市部や市街地を好むのが特徴です。一方、ハシボソガラスは、くちばしが細く、上部も水平に近い形状です。田畑や河原などの開けた場所によくいて、草の種や昆虫をトコトコと歩きながら捕食します。
また、郊外の河川や水田では、白いサギをよく見かけると思います。「シラサギ」と呼ばれていますが、シラサギは俗称で、「ダイサギ」「チュウサギ」「コサギ」というのが種の名前です。こちらは、体の大きさによって大中小と見分けることができます。

鳥の鳴き声もいつも同じとは限りません。「さえずり」「地鳴き」、そして「ぐぜり」があります。さえずりは、主にオスが繁殖期に出す美しい声で、メスへのアピールや、縄張りを主張するための鳴き声です。地鳴きはさえずり以外の声のことで、オス・メスにかかわらず、そしてヒナも同じ鳴き声です。たとえば、ウグイスの鳴き声として皆さんが思い浮かべる「ホーホケキョ」はさえずりで、地鳴きは「チャッチャッ」と舌打ちを強くしたような声になります。そして、ぐぜりは、冬に地鳴きばかりしていた鳥が、春の繁殖期に再びさえずるために練習をしている声です。春になるころ、「ホーホケ」で止まったり、「ケキョ」と最後だけ聞こえてきたりしたら、ウグイスがさえずりの練習をしているのです。



野鳥にもそれぞれ好きな場所がある

鳥の鳴き声は聞こえるけれども、姿は見えず……ということはありませんか。たとえば、ウグイスは、鳴き声が聞こえるからと木の枝を探しても、なかなか見つかりません。というのも、ウグイスは低い茂みやヤブの中を好むため、見つけにくいのです。
わりあい警戒心が緩く、住宅地の庭木で見かける鳥には、ムクドリやヒヨドリ、メジロなどがいます。緑の多い、開けた場所が好きなハクセキレイやカワラヒワなどは公園で見かけられますし、川や池といった水辺が好きなのはカモの仲間やサギの仲間です。
一方、自然豊かな森林や高原の中でしか見られない鳥もいます。特に、繁殖シーズンを迎える春夏には、オオルリやキビタキなどが、きれいなさえずりを聞かせてくれます。枝の目立つ場所にとまっていることも多く、観察にはもってこいです。

このように、鳥にはそれぞれ好きな環境があります。さらに、夏に繁殖のため南方から飛来する夏鳥、冬に北方から越冬にやってくる冬鳥と、季節ごとに見られる野鳥は異なり、地域によっても生息する鳥は違います。キャンプや潮干狩りなどで野外に出かけたり、地方に旅行に行ったりしたら、ぜひ周りの自然にも目や耳を傾けてみてください。家の周りとは違う野鳥に出会える絶好の機会になることでしょう。


プロフィール


嶋村早樹

公益財団法人日本野鳥の会職員。都立東京港野鳥公園担当のレンジャー。公園内の自然調査・管理、来園者への自然解説、公園のイベント講師などを担当。小学校などに訪問し、「総合的な学習の時間」や特別活動での外部講師なども務める。

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