いきすぎた指導、そして多すぎる宿題[教えて!親野先生]

【質問】

 

娘の先生は、子どもたちに休み時間もなく勉強させます。授業が長引くのは当たり前で、それ以外にも宿題の間違い直しや授業でやり残した問題をやらせたり、忘れ物や係の仕事を忘れたら罰で休み時間に書き取りをさせたり……。ほとんどの子は休み時間もずっと机に向かっていなければなりません。給食を残すと露骨に嫌な顔をされ、冬も半ば強制的に薄着にさせられます。また、宿題も異常に多く、算数プリント・計算ドリル・漢字ドリル・日記・本読みが毎日です。日によっては、さらに授業のまとめ、社会や理科の調べ学習も出ます。娘は学力的には普通レベルですが、毎日の宿題をこなすのがとても大変です。このようないきすぎた指導や多すぎる宿題について、どう対処したらよいでしょうか? (フルーツママ さん:小学3年生 女子)


いきすぎた指導、そして多すぎる宿題

親野先生からのアドバイス

フルーツママさん、拝読いたしました。

これでは、子どもはたまりませんね。息が詰まるとはこのことです。
子どもたちにとって、休み時間は友達とおしゃべりしたり一緒に遊んだりして、人間関係をつくるうえでとても大切な時間です。それによって、人間関係力・友達力という極めて大切な能力が身に付けられるのです。それに、休み時間がないと子どもは息抜きができませんし、ずっと緊張していなければなりません。
これでは、ストレスがたまる一方ですし、肝心な授業にも集中できません。勉強は苦手だけど、休み時間が楽しくて学校に行っているという子も多いはずです。そういう子たちには、唯一の生きがいである休み時間が取り上げられてしまっているわけですから、つらいですね。

給食を残すと嫌な顔をするというのも、問題です。一回の食事で食べられる量は個人差が大きいので、無理に食べさせられるのは本当に苦痛なことです。
これは体罰にも等しい行為です。これが原因で学校に行きたがらなくなる子も多いのです。

薄着の強制も問題です。
体温調整の力も個人差が大きいですから、強制などするべきではありません。寒いなかでも薄着で無理にがまんさせるというのも、体罰に等しい行為です。
宿題の多すぎも問題です。
毎日これだけやらなければならないのでは、かなり時間がかかるはずです。家庭でも常に追いまくられて、子どもとしての健全な生活ができませんね。
こういう毎日が続くと、子どもは元気がなくなり、万事においてやる気が出なくなります。学校に行くのも嫌がるようになるでしょう。

とにかく、いろいろな面でいきすぎた《指導》(?)になっているようです。
そして、これはフルーツママさんが個人的に困っているというよりクラス全体の問題です。ですから、保護者同士でおしゃべりと言いますか、情報交換をしてみてください。
次に、担任の先生と話し合うことが必要だと思います。
担任で埒(らち)があかないときは校長先生、それでも改善されなければ教育委員会です。学級にはPTAの役員さんがいると思いますので、その方々に代表で言ってもらうのが良いでしょう。
それと同時に、家庭においては子どもがリラックスして安らかな気持ちで過ごせるようにすることを優先してください。
子どもの愚痴は、共感的にたっぷり聞いてあげてください。親にも聞いてもらえず、言いたいことも言えなくなると、子どもはますます苦しくなってしまいます。

次に宿題についてですが、宿題が多すぎると、子どもは好きなことをしたり、遊んだり休んだり、ぼーっとしたりする時間がなくなってしまいます。つまり、子どもらしい健全な生活ができなくなってしまうのです。
子どもにとってかなり負担が大きいなら、親が手伝ってあげてください。異常な《指導》(?)からは子どもを守ってあげる必要があります。
また、今回のご相談のように異常に宿題が多いということでなくても、《我が子にとっては多すぎる》という場合もあるかもしれません。
ほとんどの場合、宿題は学力差を考えに入れないまま一律に出されるからです。ところが、子どもの学力差は非常に大きいので、子どもによっては加重負担になってしまうのです。
そういう場合も親が手伝ってあげて良いと思います。

また、状況によっては、先生と相談して我が子だけは宿題を減らしてもらうということもあって良いでしょう。あるいは、別のものに変えてもらったり、やり方を変えさせてもらったりなどもあって良いでしょう。
たとえば、次のようなことです。

◎その学年の問題は無理なので、もっと基礎的な問題や前の学年の問題に変える。
◎ディスレクシア(読み書き障害)があって、鉛筆で書くより指で書くほうが頭に入るという場合、タブレットの漢字アプリや計算アプリで勉強する。

いずれにしても、上手に交渉してください。

個人差を無視して、出された宿題を杓子(しゃくし)定規に全部やらせることばかりを優先すると、子どもによっては非常に苦しい毎日を送ることになります。
こういう指導はだんだん時代遅れになっていくでしょう。
すでに先進各国では、授業も宿題も個人の実情を配慮してその必要性に応じる方向で進みつつあります。
本当に子ども一人ひとりを伸ばすためには、日本もそうしていく必要があります。とはいっても、日本の現状はまだそこまでいっていません。少人数教育が当たり前になっている先進各国に比べて、日本の先生たちは一人で大勢の子どもを受け持っています。
ですから、授業も一斉指導しかできませんし、宿題も一斉で一律なものにならざるを得ないということがあります。こういう状況では、個別な対応はけっこう負担になるのも事実です。ですから、先生と交渉するときは大人の交渉術で上手にやってください。

最後に、誤解がないように念のため言いますが、私は宿題をやらなくて良いと言っているわけではありません。
すべてケース・バイ・ケースなので、適切に判断してください。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。

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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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