被害者意識が強い娘。どう対応するの?[教えて!親野先生]
教育評論家の親野智可等先生が、保護者からの質問にお答えします。
【質問】
小学2年生の娘は、被害者意識が強く、いやだという思いばかりです。
「いいことがあったんだよ」と言ってくることはほとんどなく、「こんなことばっかりで、もういやなんだぁ」「誰も一緒に遊んでくれないんだぁ」と不満ばかり。どうしたらいいことが見つけられるのか、気持ちが満足できるのか悩んでいます。
できるだけ気持ちを受け止め、心を満たしてあげたいと思うのですが、赤ちゃんのようにだだをこねたり、わがままに自分をとおそうとしたりするばかり。
このまま気持ちが満足するまで受け止め続けて、年齢なりの自立ができて不満もなくなってくれるのでしょうか?
(ひろさん)
【親野先生のアドバイス】
ひろさん、拝読いたしました。
被害者意識が強い子、口をひらくと愚痴や不満ばかりの子、なんでもマイナスにとらえてしまう子、こういう子はいますよ。親の影響を受けている場合もありますし、もともとそういう傾向が強いという場合もあります。子どもはみんな、いろいろな個性をもって生まれてくるのですから。
「できるだけ気持ちを受け止め、心を満たしてあげたいと思う」
このやり方でいいと思いますよ。こういう子は、愚痴や不満を口に出して言うことで、ストレスを発散し心の安定を図っているのです。そのとき、親が「そんなこと言っちゃいけません。あなたにもいけないことがあるんじゃないの?」などと言ってしまうとどうなるでしょうか?
心の中のもやもやを吐き出せず、そのまま溜め込むことになります。このようなことが続くと、そのストレスを友達にぶつけることも考えられます。また、自分は親に受け入れてもらえていないという気持ちにもなっていきます。
大切なのは、子どもの気持ちを受容的共感的に聞くことです。受容するとは受け入れることであり、共感するとは同じ気持ちになることです。子どもの愚痴を受け入れて、大いにうなずきながら聞いてやってください。そして、その子と同じ気持ちになり、一緒に怒ってやってください。
「この子にも問題があるのに、親も一緒に怒ったりしていいのかな?」と思うかもしれません。でも、そのときは、それでいいのです。それは、ひたすら発散のために、心の浄化のために必要なのです。
発散と浄化が終わって、気持ちがすっきりしたところで、こう聞いてみるのです。
「自分にいけないことはなかった?」
「相手の○○ちゃんはどんな気持ちをしていたと思う?」
「遊んでもらうにはどうしたらいいかな?」
気持ちがすっきりして素直になっているときなら、
「自分にもいけないことがあった」
「○○ちゃんもいやだったと思う」
「私がちょっといばったから」
などと言い出すものです。
このような受容と共感がなく、親が正論ばかりを言っているとどうなるでしょうか? 子どもはその正論のとおりに正しいほうに進んでいくでしょうか? いいえ、絶対にそうはなりません。むしろ、その正反対のほうに進むことになるのです。
「できるだけ気持ちを受け止め、心を満たしてあげたいと思う」
このやり方でいいのです。正しいやり方を続けていくことが大事です。
それと同時に、もともとの傾向はそんなに簡単には変わらないということも頭に入れておくことが必要です。なかなかいい方向に行かないのを見て、親は誰しも不安になるものです。「このやり方でいいのか?」と考え始めます。でも、正しいやり方を途中で変えたら、それまでの積み重ねがムダになってしまいます。
私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。少しでもご参考になれば幸いです。ひろさん親子に幸多かれとお祈り申し上げます。