ごまかし・うそ・ずるが気になる小学生。どう注意すれば?[教えて!親野先生]
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小学生の子どものごまかしやうそ、ずるい行動は気になってしまうものです。「言い訳やごまかしをすることに慣れてしまうと、後々子ども自身が困ることになってしまうのでは?」と心配になりつつも、どう注意をすればいか悩んでしまうことも多いのではないでしょうか。子どもを傷つけたり、逆効果になったりすることのない対応について、教育評論家の親野智可等先生に伺いました。
【質問】立場が悪くなると、ごまかしやうそ、ずるをしてしまう小2の息子。注意の仕方に悩んでいます。
小学2年生の息子のことです。担任の先生から、「ごまかしたり、うそをついたり、ずるいことをしたりするのが気になります」と連絡をいただきました。普段は明るくお友達も多いそうなんですが、何か自分の立場が悪くなるとそういう行動が出るそうです。普段、私が子どもの逃げ場をなくすようなきつい叱り方をしているせいかも……と反省しているのですが。「今のうちにきちんと直しておかないと高学年になった時に大変です」ということでした。確かに言い訳やごまかしが私も気になっていましたので、どのように注意をしていいものか悩んでおります。頭ごなしに注意しても逆効果のように思えて……。どうぞよろしくお願いいたします。(おひさまさん)
親野先生からのアドバイス
おひさまさん、拝読いたしました。
担任の先生からこういう連絡が来ると、親としてはとても心配になりますね。
でも、2年生の時にそういうことがあったからといって、ずっとそうなってしまうということではありません。
ですから、まず、その子を「ごまかす子」「うそをつく子」「ずるい子」などと決めつけないようにしてやってください。
このように決めつけると、ろくなことはありません。
それに、これは一過性のものです。
子どもにこういったものはつきものなのです。
ごまかしやうそは人生経験の少なさゆえのものとの理解を
私の経験ですと、子どもはもともとごまかし・うそ・ずるが多いものなのです。
子どもは、まだ人生経験が少ないので、いろいろ問題が起きたときの解決方法がわからないのです。
それで、取りあえず自分を守るためにごまかしたりうそをついたりするのです。
こういうことはどの子にもあります。
今の大人にしても、子どものころはけっこうごまかし・うそ・ずるをしていたのですが、すっかり忘れているだけなのです。
子どものころのことをよく思いだしてみれば、必ず思い当たることがいくつかあるはずです。
そして、完全に忘れていることが少なくともその100倍はあるはずなのです。
子どもの人格を否定せず、行い自体を注意して
もちろん、子どものごまかし・うそ・ずるには、大人の指導が大切です。
「正直に言うことが大事だよ」
「正直に言っちゃえば心がすっきりするよ」
「ごまかしていると、ばれないかとずっと心配しなくちゃいけないよ」
「うそついてると、あとでよけいに困ることになるんだよ」
「ずるいことをしてはいけません」
でも、次のような人格を否定する言い方は決してしてはいけません。
「お前はうそつきだ」
「ずるい子だね」
「ずるい性格を直しなさい」
「ごまかしが得意だね」
つまり、「ごまかし・うそ・ずる」などの「行い自体」について注意することが大切なのです。
「うそつき、ずるい子、ずるい性格、ごまかしが得意」などの、人格を否定する言い方は口が裂けても言ってはいけません。
これは、絶対的な原則です。
非力ゆえ、身を守ろうとするのが小学生の本能。ありのままを受け入れて安心させてあげて
次に、普段の生活でいくつか心がけてほしいことがあります。
なんといっても、子どもが安らかな気持ちで安心して生活できるようにしてやることがとても大切です。
言い換えると、自分は愛されているという実感、ありのままの自分で許され受け入れられているという安心感、何一つ心配する必要はないという安らぎです。
成長期の子どもにとって、これほど大切なものはありません。
こういう気持ちで毎日生活できるようにしてやってください。
そうすれば、子どもの内側に、自分の存在自体を肯定できる自己肯定感と、自分を取り巻く世界や他者への基本的な信頼感が育ちます。
もし、その反対の生活だと、どうなるでしょうか?
何かにおびえて、不安な気持ちで毎日の生活を送ると、どうなるでしょうか?
自分はもっとしっかりしないと許してもらえないのではないか……。
こんなダメな自分は受け入れてもらえないのではないか……。
またきつく叱られるのではないか……。
もしかしたら自分はあまり愛されていないのではないか……。
お父さんやお母さんは自分のことがあまり好きではないのではないか……。
心配なことがたくさんある……。
成長期の子どもが毎日このような気持ちで生活することは、非常に問題です。
こういう気持ちで生活していると、自己肯定感や周りのすべてに対する基本的な信頼感を育てることができません。
それこそ、自分を守るために「ごまかし・うそ・ずる」を身に付けることになるでしょう。
子どもにはそれ以外にないのです。
子どもは本当に非力ですから、まず自分の身を守ろうとする本能があるのです。
保護者の受容と共感が、小学生の子どもを素直にさせる
ですから、子どもが安らかな気持ちで安心して生活できるようにしてやることが、まずもって大切です。
その具体的な方法が、受容と共感です。
子どもの話にも、子どものいろいろな行いや失敗にも、まずこの受容と共感をもって臨んでほしいと思います。
子どもが学校で叱られた話や友達とけんかした話をしたときにも、まず受け入れて共感してやることです。
そうすれば、子どもは何でも正直に話すようになります。
「しっかりやらないから、先生に叱られるんだ」「けんかの原因はあんたにもあるんじゃないの」などと、最初にお説教や指導がくると、子どもはたまりません。
それだと、子どもは、正直に腹を割って話すことは損なことだと思うようになります。
「ごまかし・うそ・ずる」で自分を守るようになってしまうのです。
まず、子どもの話を受容的に聞いて、「叱られて悲しかったね」「そう言われたら頭に来るよね」などと、たっぷり共感してやってください。
たっぷり受容的共感的に聞いてやって、子どもの気持ちが満たされた段階で、必要なら指導をするようにしてください。
そうすれば、子どもは素直に言うことを聞きます。
子どもが、登校前に国語の本が見つからないと困っているときにも、まずその困っている気持ちに共感して一緒に探してやることです。
まず、ピンチを救って安心させてやってください。
そして、そのあとで、これからそういうことがないようにするにはどうすればいいか、合理的な方法を一緒に工夫してください。
決して、「自分で困って懲りれば直るだろう」という自業自得方式で育てないでください。
子どもは同じ失敗を繰り返すものと受け入れる心を持とう
子どもは同じ失敗を繰り返すものです。
何十回も何百回も繰り返すものなのです。
頭でわかっていても、そうそう簡単には自分を変えられないのです。
大人でもそうですが、子どもはなおさらそうなのです。
苦手なことを直すには、強烈なモチベーションと強固な意志と方法を工夫する能力が必要です。
どれもこれも、子どもにはないものばかりです。
そういう子どもが失敗や間違いをしたときに、きつく叱りつけたり怒鳴りつけたりしてはいけないのです。
それだと、子どもは自分を守るために「ごまかし・うそ・ずる」を身に付けるほかないのです。
毎日の生活のなかで受容と共感を心がけてください。
そうすれば、子どもは安らかな気持ちで安心して生活することができます。
そうすれば、「ごまかし・うそ・ずる」を身に付ける必要はないのです。
何でも正直に言えるようになります。
そして、正直に言えたときには、ぜひそのことをほめてやってください。
「今のうちに直そう」と思いすぎなければ、子どもを許せるようになる
「『今のうちにきちんと直しておかないと高学年になった時に大変です』ということでした。確かに言い訳やごまかしが私も気になっていましたので、どのように注意をしていいものか悩んでおります。頭ごなしに注意しても逆効果のように思えて……。」という相談内容については、「今のうちにきちんと直そう。高学年になったときに大変だから」という気持ちは、わかります。
親なら、当然みんなそう思います。
そう思わない親がいるでしょうか?
でも、気持ちはわかりますが、あまり「今のうちに」とか「直そう」などと思いすぎないほうがいいというのも事実です。
そういう思いが強いと、どうしても子どもの行いを許せなくなってしまうからです。
保護者が変わっていけば、子どもも変われると心得て
私が言ってきたことを心がけていれば、必ずいい方向にいきます。
でも、すぐにそうなると思いすぎないほうが安全です。
まだ、何回も同じことを繰り返すことはあると思っているほうが安全です。
それは必ずあります。
そのとき、親がどうするかです。
そこで、親が基本的に大事なことを守って対応できるかどうかです。
1回や2回でなく、何回でもそれができるかです。
1、2回やってあとは元どおりというのでは、子どもも変われないのです。
親が変わって、基本的に大事なことを守りとおせば、子どもも変われるのです。
保護者に求められるのは、注意ではなく対応
「どのように注意をしていいものか悩んでおります。」ということですが、
大切なのは、「どのように注意するか」ではないと思います。
大切なのは、「どのように対応するか」ということだと思います。
「頭ごなしに注意しても逆効果のように思えて……。」という言葉については、
そのとおりです。
もう十分実験済みだと思います。
まさに北風と太陽のお話のとおりです。
決意と忍耐があれば、習慣は変えられる
「おひさま」というハンドルネームはすばらしいと思います。
おひさまさんも、本当はもう進むべき道が見えているのでしょう。
でも、なかなかそちらに進めないのです。
大人も子どももなかなか変われないのです。
習慣という慣性の法則は強力ですから。
ぜひ、今までの自分の習慣を打ち破り、ほんの少し自分を変えてみてください。
もう進むべき道は明らかです。
あとは決意と忍耐です。
私の書いたものが、おひさまさんの背中の一押しになればうれしいです。
私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
おひさまさん親子に幸多かれとお祈り申し上げます。
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