子どもに重要な「サードプレイス」とは?ウェルビーイングを高める4つのキーワード

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保護者のかたにとって、お子さまの「ウェルビーイング」(=幸せで充実した状態)は一番の願いではないでしょうか。

子どものウェルビーイングを決める要素はさまざま。
近年の調査では、「サードプレイス」と呼ばれる、家庭や学校以外の居場所を持つこととウェルビーイングとの関連性が明らかになってきています。

なぜ、子どもにとってサードプレイスの存在が重要なのでしょうか?
そして、保護者のかたは、子どもにどんなサードプレイスを用意すればよいのでしょうか?
そんな疑問について、小学生の放課後の居場所づくりに取り組む、特定非営利活動法人「放課後NPOアフタースクール」代表理事の平岩国泰さんにお話を伺いました。

この記事のポイント

「居場所の数」が子どものウェルビーイングに影響

まずは、内閣府による「こども・若者の意識と生活に関する調査」の結果をご紹介します。

全国の子ども・若者を対象としたこの調査では、「居場所の数と自己認識の関係」というテーマについての分析も行われました。
その結果、居場所が多い人ほど、自己肯定感やチャレンジ精神、充実感などが高い傾向が見られたのです。

子どもが家庭や学校以外のサードプレイスを持つことは、ウェルビーイングを高めるうえで非常に重要であることがわかります。

では、サードプレイスが子どもに与える影響や、保護者のかたがどのようにして新たな居場所を用意できるのかについて、ここからは平岩国泰さんに詳しく伺います。

子どものサードプレイスは「意識してつくる」時代に

——なぜ、サードプレイスの存在が、子どものウェルビーイングを高めると考えられますか?

家庭や学校では、どうしても子どものキャラクターや役割が固定されやすい面もありますが、サードプレイスでは、そこから離れて自由に活動できるのが大きな要因だと思います。

私たちは、放課後の小学校を活用し、学年を超えた子どもどうしで多様なアクティビティに取り組んでもらうという活動を行っています。その光景を見ていても、自由にやりたいことをしたり、学校とは異なる人間関係をつくったりすることで、自己肯定感や幸せ度を高めている子どもは本当に多いと感じています。

——保護者のかたの子ども時代と比べて、近年、子どものサードプレイスはどんなふうに変化していますか?

数十年前は、空き地などで子どもどうしで遊び、地域の大人がさりげなく見守るといったケースがよく見られました。いわば「地域」が子どもの居場所だったわけです。

しかし現在は、共働き家庭の増加などに伴ってそのような光景は減り、より安全な居場所として学童保育や塾、習い事の場などが主要なサードプレイスになっています。

また、SNSでのコミュニケーションやオンラインゲームなどで友達と交流する小学生も増えていますね。その意味では、インターネット空間も子どもの新たな居場所の一つといえるかもしれません。

——インターネット空間は数十年前にはなかった居場所ですね。どんなメリット・デメリットが考えられますか?

学年や性別、地域を超えて、どこにいても幅広い人間関係を築けるのは、インターネット空間ならではのメリットといえます。

ただし、インターネット上で本当にのびのびとしたコミュニケーションができるかどうかは、判断が難しいところです。また、オンラインゲームにおいては、課金のリスクや「悪意のある大人に利用されるのではないか」といった不安も付きまといます。

いずれにしても、保護者のかたが見守れる範囲の中で、利用時間などのルールを決めて活用することが大切ですね。

——居場所のカタチが変わったことで、自然に生まれるサードプレイスも減っているのでしょうか?

「地域の子どもどうしで自然に集まって外遊びをする」といった過ごし方は、少なくとも減少していると考えます。私たちが2023年に行った調査では、友達と遊ぶ頻度が「週1回以下」と答えた小学生は70.9%にも上りました。

遊べない理由としては「習い事や塾で忙しく、予定が合わない」「遊べる場所がない」という声が多く、この結果を見ても子どものサードプレイスは、保護者と子どもで相談して、意識してつくっていく必要があるといえます。

子どものサードプレイスを探す時は「4つのキーワード」に注目

——保護者のかたは、子どもの居場所についてどのようなポイントを考えるとよいでしょうか?

「自分にとって心地よい居場所かどうか」を決めるのは子ども自身ですが、そのポイントを私は、「ありのまま」「自己決定」「他者への貢献」「伴走者」という4つのキーワードで考えています。

それぞれのキーワードについて、順にご説明します。

●ありのまま

まず、「今のままのあなたに価値があるよ」「あなたがいてくれてうれしい」と子どもの存在そのものを肯定してくれることが第一条件だと思います。

もちろんどの子どもにも、それぞれ長所・短所があります。
しかし基本的には、子どもの存在を全肯定してくれる人が周りにいれば、その子の自己肯定感は大きく育つのではないでしょうか。

「ありのまま」を受け入れる第一の場所はご家庭だと思いますが、それ以外にも子どもの自己肯定感が育まれる場所ができるとよいですね。

●自己決定

学校教育では基本的に、子どもは学ぶ時間・場所などを自分で決めることができません。
就学前は比較的、「何をして遊ぶか」などは自分で決めることができたと思うので、自己決定権がないことは大きなストレスになり得ます。

その結果、「どうせ自分では決められないんだ」と思って考えることを放棄してしまうと、大人になっても自分で物事を決めるのが難しくなる可能性があります。

また、「自分で何かを決めること」はくり返し練習していくことによって、初めて鍛えられるものです。
その意味で、子どもの居場所では、「何をするか自分で決めることができる」ことが大切です。

●他者への貢献

たとえば私たちが運営する「アフタースクール」では、下級生に遊び方や勉強を教えながら成長する子どもたちがたくさんいます。

「誰かの役に立てている」と思えれば、子どもは「ここには自分の居場所がある」と感じられるはずです。また、自分より下の学年の子に何かを教えたり、上の学年の子に悩みを相談したりする中で、人間的に大きく成長することも期待できるでしょう。

●伴走者

「居場所」というと、建物や部屋など物理的な場所を思い浮かべがちです。
しかし「子どもにとって心地よい居場所であるかどうか」を大きく左右するのは人間関係です。

たとえば古くて狭い施設であっても、信頼できる人がいれば子どもにとってはよい居場所になるでしょう。たとえその場所を離れたとしても、「自分のことを大切に思ってくれている人がいる」と感じられるのは、大きな心の支えになります。

大切なのは、子どもが自分で決めること

——子どもの居場所を新たにつくりたい時、どんなことから始めればよいでしょうか?

まずは、子ども自身に気になる居場所がないか、質問してみるのがいいでしょう。
そこで特にアイデアが出てこなくても、学童保育にしても、習い事や塾にしても、子どもと一緒にいろいろな場所を見学して、意見を聞きながら決めていくとよいですね。

保護者のかたとしては、一定の学齢になると「そろそろ塾に入れたい」などのご希望もあるかもしれません。

しかし基本的には、子どもと話し合って決めることが大切です。たとえ子どもの当初の意見とは違う結果になったとしても、そのプロセス自体に関与するだけでも、子どもの自己決定感は養われていきます。

——「習い事や塾をサボる」「なんだか楽しくなさそう……」など、サードプレイスでの活動がうまくいっていないと思われる時は、どうすればよいでしょうか?

子どもとよく話し合いながら、今後どうするかを一緒に決めていけるとよいですね。

ご家族としては、「我慢強さを身に付けるためにも、がんばって続けてほしい」と思われるかもしれません。
でも、この場合も最終的な決定は子ども自身に委ね、「自分で決める」練習をさせてあげましょう。

「好きで始めたことがなかなか続かない」といったことは、大人にもよくあるものです。
ですから、うまくいかないことがあっても、「自分はどうしたいのか」「どんなふうに問題を解決していけばよいか」を子ども自身が考えるためのよい機会になるのではないでしょうか。

まとめ & 実践 TIPS

お子さまに居心地のよい居場所をつくってあげることは、保護者のかたにとっても新たな出会いのチャンス。

同じ学校・クラスとはまた違う顔ぶれの保護者仲間なら、子育ての悩みなどを共有しやすい面もありそうです。
平岩さんのアドバイスを参考に、お子さまも保護者のかたも、多様なコミュニティの中で自分を解放し、ウェルビーイングを高めていけるとよいですね。

子どものウェルビーイングを考えるうえで、どのような要因が子どもの「幸せ実感」と関連しているのかについて「子どもの生活と学びに関する親子調査2015-2023」(東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所 共同研究プロジェクト)でもさまざまな切り口から分析を行っています。

詳しい情報は、ベネッセ教育総合研究所のホームページをご覧ください。
https://berd.benesse.jp/special/datachild/datashu05.php

プロフィール


平岩 国泰

1974年東京都生まれ。1996年慶應義塾大学経済学部卒業。株式会社丸井入社、経営企画・人事などを担当。2004年長女の誕生をきっかけに、2005年放課後NPOアフタースクールの活動開始。グッドデザイン賞(4回受賞)他各種受賞。2013年~2019年文部科学省中央教育審議会専門委員。2017年より渋谷区教育委員。2019年より新渡戸文化学園理事長。未来の学校と放課後づくりに挑む。

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