8割以上の保護者が高校生の進路選択をサポート!? 子どもがうれしいと感じるサポートとは?【進路意識調査より】①

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「子どもの進路選択を応援したいけれど、どんなサポートをしたらいいのか……」
文理選択や志望大決定は、お子さまの将来を左右する重要な選択です。
しかし、お子さまをサポートする保護者のかたとしては、どんな関わり方をしたらよいか迷うことも多いのではないでしょうか。

そこでシリーズ1回目では、ベネッセコーポレーションが現役高校生や大学生、若手社会人・保護者のかたにご協力いただいて実施した「進路意識調査」の結果をもとに、認定NPO法人、日本学生社会人ネットワーク(JSBN)の代表理事として中高生のキャリア教育に尽力されている真坂 淳さんに、「高校生の進路選択に保護者はどう関わるか」をアドバイスいただきました。

お子さまの進路選択をどのように応援していくか、考えてみませんか?

※掲載データは2024年7-9月にベネッセコーポレーションが実施した、高校生保護者向け調査(546人回答)、進研ゼミを受講している高校生向け調査(642人回答)、進研ゼミ受講経験のある大学生向け調査(147人回答)、社会人向け調査(30人回答)に寄せられた回答と体験談をもとに作成しています。

この記事のポイント

8割以上の保護者が進路選択に関わっている!
適切な情報提供が成功のカギに

——高校生のお子さまがいらっしゃる保護者のかたに「お子さまの進路選択にどの程度関わっていますか?」と質問したところ、「とても関わっている」と回答した人が3割、「少し関わっている」が5割強で、合計すると8割以上に達しています。
この結果をどのようにご覧になりますか?

(真坂さん)
私は日本学生社会人ネットワーク(以下、JSBN)の活動を通して、全国の高校生や保護者のかたと日々関わっています。
その中でよく感じるのですが、保護者のかたが多様な方向にアンテナを張って情報収集を行っていらっしゃるご家庭ほど納得感のある進路選択ができている傾向があるように思われます。

ご家庭の教育方針に基づいて進路情報を集め、その中から適切な情報をお子さまに提供できれば、お子さまは広い選択肢の中から進路を選択できているからでしょうか。

保護者世代のかたの高校時代に比べて、社会情勢と大学入試制度はめまぐるしく変わっています。このような状況の中で、お子さまに進路選択を完全に任せるのは無理があるのではないか、と私自身は感じます。

その意味で、「8割以上の保護者がお子さまの進路選択に関わっている」という今回の結果からは、「お子さまによりよい学びの機会を提供したい」と感じているご家庭が多いことがわかってうれしい限りです。

Q.お子さまの進路選択にどの程度関わっていますか?

保護者の前向きな働きかけで
子どもの進路意識がグッと高まる!

——「進路選択において、保護者のかたからのサポートで感謝していることは何ですか?」と高校生・大学生・社会人に質問した結果、「オープンキャンパスなどの大学イベントに連れて行ってくれたこと」「大学・学部の情報を一緒に収集してくれたこと」などの回答が多く挙がりました。
またフリーアンサーとしては、以下のような声がみられました。

「自宅から通える教育大に進学するつもりだったが、もっと視野を拡げたほうがいいとアドバイスしてくれて、地元外の大学情報も教えてくれた」

「一緒にオープンキャンパスに行った時に『私が通いたいくらい素敵な大学だね』と言ってくれて、全面的に応援してくれた」

(真坂さん)
まさに、保護者のかたが教育情報にアンテナを張ってお子さまに提供している好例だと思います。

また、「これからの人生をどんなふうに生きていきたいか」をお子さまと一緒に検討しているのもすばらしいですね。私たちもJSBNの活動で、高校生に「あなたの人生のテーマは何ですか?」と問いかけ、話し合いをすることがよくあります。
将来像をすぐ固めることができなくても、少しずつ考えることで「先の自分」をなんとなくでもイメージすることができ、そのプロセスとして大学受験が見えてきます。
お子さまが自分の未来に目を向けているからこそ、保護者のかたの関わりをうれしく感じるのではないでしょうか。

—— 一方で、感謝していることとして「何も言わず見守ってくれた」という回答も多くみられます。フリーアンサーでも「成績が伸びなくてもうるさく言わず、適度な距離感で応援してくれた」という声がありました。

ただ保護者からすると、「どんな関わり方なら適度な距離感といえるのか」が難しいところです。
また、「何も言わずに見守る」ことは「子どもの進路に関わっていない」ことになるのではないか? と不安も感じます。
子どもの進路選択にコミットしつつ、「心地よい見守り」を実現するために、どんなふうに考え、行動したらよいでしょうか?

(真坂さん)
互いへの信頼がベースにあれば、同じ行動や声かけをしても、お子さまは「ありがたい、うれしい」と受け止めるはずです。
ただ、「信頼関係を築く」とひと口に言っても難しいですよね。
高校生は多感な年頃で、小・中学生時代とはまた質の違う反抗期を迎えているお子さまもいるでしょう。私自身も、2人の息子とうまくコミュニケーションをとれない時期がありました。

こんなとき、相手の心にズカズカと入っていこうとすると、子どもは必ず逃げていきますよね。
そこで私が目指したのは、「期待するようなリアクションがなくても、あきらめず情報提供を続ける」というスタンスです。
そのプロセスの中で、お子さまが自分の将来に目を向けるようになるタイミングがいつか来ると信じてあげることも大切かもしれません。
お子さまはきっと、「自分の進路選択を応援してくれているのだな」と気付いて保護者のかたに感謝してくれるでしょう。

子どもがつらいのは「否定された」と感じる時
進学費用について早めに話し合うことも大切

——逆に、「進路選択における保護者との関わりで嫌だったことは?」という質問に対しては、「早く志望大を決めろとせかされた」「成績が伸び悩んでいる時に『合格は無理じゃない?』と言われた」といった回答が目立ちました。

また、進路において「自分の希望を否定された」「保護者の意見を押しつけられた」といった意見も挙がりました。
保護者のかたがお子さまの進路希望に全面賛成できない背景のひとつには、家計の事情があることが推測できます。

子どもの進路希望を叶えてあげたくても、家計の事情によっては「できないこと」を伝えざるをえない場合は多々あります。
進路関連のお金に関してどのように考え、子どもと話し合っていけばよいか、ヒントを頂ければと思います。

(真坂さん)
家計事情を子どもに伝えるのは戸惑いがありますよね。
「子どもにどう思われるだろう?」「この程度なのか、と思われたりしたらイヤだな」と考えると、ちゅうちょしてしまいます。

ただ、お子さまの進路を考えるうえで、進学費用について具体的に話し合うことは避けて通れません。
できるだけ早い段階で話し、ご家庭の実情を率直に伝えたほうがよいと私は考えます。
費用面などを含めさまざまな理由により、進路の選択に制約がある場合には早めにお話しされることをお勧めします。
お子さまにしても、進路の希望はあっても「進学したい大学・学部の学費が思ったより高額で、親に言いだしにくいな」と迷っているかもしれません。

お子さまの希望とご家庭の教育方針、そして家計事情をすり合わせたうえで、「ではどうしようか?」と一緒に検討してみるとよいのではないでしょうか。
一見無理にみえても、リサーチしていくことで打開策が見つかる場合はたくさんあります。
たとえば返還不要の給付型奨学金制度を活用したり、学生寮を探したりすることで、学費を大きく節約することは可能です。
お子さまにしても、たとえば高1の段階で聞かされていれば心の準備ができ、国公立大への進学を視野に入れた学び方ができると思います。

子どもに伴走しながら一緒に進路選択をしていこう

——高校生のお子さまと一緒に進路を考えていくにあたって、保護者のかたはどんな関わり方を目指したらよいでしょうか?

(真坂さん)
社会の変化が激しい時代の中で、お子さまがこれから生きていく環境は、現在とは大きく変わっているでしょう。
私たち保護者も、新しい時代に適応できるよう自分自身をアップデートしていかなければなりませんね。
その一方で、いろいろな経験を経てきた大人だからこその知識もあり、情報リテラシーなども身に付いています。

そこで、保護者である私たちは、お子さまの「伴走者」になれるとよいのではないでしょうか。
伴走者は、お子さまの前を走って先導するのではなく、並んで走ったり歩いたりしながら、「どっちに行こうか?」と相談して一緒に進んでいく存在です。
「並んで進む」という意識でいれば、お子さまの興味や変化に気付きやすく、タイミングに応じて的確な情報提供ができます。
自分の将来を真剣に考え始めたお子さまにとっても、経験豊富なパートナーが隣にいてくれれば、とても心強いと思います。

まとめ & 実践 TIPS

お子さまの進路選択は、保護者のかたにとっても重大な問題。
だからこそ、真坂さんがアドバイスしてくださった「伴走者」のスタンスを大切に、お子さまと一緒に納得の進路を見つけられるとよいですね。

プロフィール



三井住友銀行勤務を経て、世界最大級のネットワークを持つBNPパリバ銀行グローバルバンキング本部のマネージングディレクターとして、日本の大企業のグローバルビジネスをサポートする。シンガポール・ニューヨークに11年勤務。米国公認会計士。
中高生・若手社会人のキャリア教育プログラムに2012年から取り組み、全国40を超える学校で授業・公式行事としてキャリア教育プログラムを提供している。

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