【初めての方向け】奨学金とはどんな制度?主な制度5つ&「返せない…」を避けるために絶対チェックすべき点とは?

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「大学に進学したいけれど、学費を準備するのが厳しい…」
「やりたいことを、経済的な事情であきらめたくない!」

勉強の意欲があるお子様の進学を考えるとき、選択肢の1つとして考えたいのが奨学金です。
特に最近は、新型コロナウイルス感染症の影響で、奨学金への関心が高まっています。

とはいえ…
「奨学金の実施主体や制度内容を調べたけど、どの奨学金を利用すればいいの?」と迷ってしまう人が多いのも事実。

そこで今回は、どのような奨学金があるのか、高校卒業後の奨学金の種類や内容、奨学金を借りるポイントについて、お伝えします。

この記事のポイント

50万人以上が新規で利用!奨学金とはどんな制度か?

奨学金は、経済的理由で進学が困難な学生が学資を借りたり、給付を受けたりすることができる制度です。

いちばん利用者数が多い「日本学生支援機構」の奨学金の場合、50万人以上が新規で採用されています。(令和4年度。給付金新規採用数は124,361人、貸与型は39万9,499人)
利用者数は意外と多いんですよ。

奨学金を利用するには、いくつかの基準をクリアする必要があります。
主な基準は、学力基準と家計基準の2つです。

基準をクリアすれば利用できるとはいえ、何十万、何百万円ものお金が動きます。
利用する前には、利用後のことも考えて申し込みをしたいですね。

奨学金を利用できる人は?

利用できるのは、高等学校・高等専門学校・大学・短期大学・専門学校・大学院などに通っている学生です。
浪人生でも利用できる場合があります。

奨学金の種類は「もらう=給付型」「借りる=貸与型」の2種類

奨学金には、いくつも種類があって難しいですが、まずは
「もらう=給付型」「借りる=貸与型」
の2種類からおさえていきましょう。

「もらう=給付型」の奨学金

給付型は、返還不要の「もらう」奨学金です。
奨学金に興味が出たら、「給付型の奨学金を申請できないか?」を最初に検討をしてみてくださいね。
5段階評定で3.5以上が必要、家計基準の利用条件が厳しいなど、条件は「借りる=貸与型」の奨学金より厳しいのが特徴です。

「借りる=貸与型」の奨学金

貸与型は、お金を「借りる」奨学金。
令和4年度では約40万人が新規で採用されており、多くの人が使っているのが特徴です。

ただもちろん、お金を借りたら、返さないといけません。
「自分は、もらう=給付型の奨学金の条件にはあてはまらないな」と思ったら、検討してみましょう。

返還時に利子がつく有利子タイプと、利子がつかない無利子タイプがあります。

まずはどれから検討すればいい?主な奨学金制度5つ

ではここからは、実際にどんな奨学金の制度があるかを見ていきましょう。

主な制度は5つあります。

1:日本学生支援機構(JASSO)の奨学金制度

奨学金の利用を考えだしたら、最初に検討したいのが、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金制度です。

利用者数も採用者数も多く、教育ローンなどに比べて利率が低いのが特徴。
「もらう=給付型」・「借りる=貸与型」、どちらもあります。

採用されるには、2つの条件が必要です。

・学力基準…必要な学力の基準です。
例:申込時までの全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上であること
(※貸与型の第一種奨学金 予約採用の学力基準の場合)

・家計基準…生計維持者の収入金額の基準です。
例:世帯人数3人の場合、給与収入716万円が上限額の目安
(※貸与型の第一種奨学金 予約採用の家計基準の場合)

日本学生支援機構の「もらう=給付型」の奨学金は、いわゆる大学無償化と言われている奨学金。

・入学金と授業料の減免
・奨学金の支給

の2つがセットになっています。

また、日本学生支援機構の「借りる=貸与型」の場合は、以下の2種類。

・第一種…無利子の奨学金
・第二種…有利子の奨学金

があります。

どちらも、在学している期間、貸与されます。

第一種(無利子の奨学金)は「自宅通学か、自宅外通学か?大学は国公立・私立のどちらか?」で、貸与金額が変わります。

第二種(有利子の奨学金)は「大学の学部」で、貸与金額が変わります。

第二種の場合、返還の際は利子がつきます。
2023年9月現在、利率は固定方式の場合0.937%。
約5年ごとに利率が見直される利率見直し方式の場合0.3%となっています。

ただ、この利率は、申し込み時点ではわかりません。

通常、お金を借りる時は、利率がわかった上で申し込むものですが、奨学金の場合、利率がわかるのは貸与終了時。
奨学金を申し込む時点では、まだ利率が分からない状態で、どちらの利率方式にするかを選択しなければいけません。

まずは以下のページで、「今貸与が終わっている人は、どのくらいの利率で返還をしているのか?」をチェックしてみてくださいね。

>>第二種奨学金の貸与利率(JASSO)

ちなみに、「利子が増えるのが心配だな…」と思う方は、利率は固定方式にしておくのがオススメ。

利率方式は、貸与が終了する年の一定時期までなら変更可能です。ご安心くださいね。

ちなみに奨学金の返還は、貸与が終了してから7か月目から始まります。
3月に卒業したら、10月から返還がスタートします。

2:大学独自の奨学金制度

次に大学進学者の方にぜひ調べてほしいのが、大学独自の奨学金制度です。
特徴は、「もらう=給付型」の奨学金が充実していること。
「借りる=貸与型」の奨学金は少なめです。

大学によっては、奨学金をウリにしている大学もあります。
独自の奨学金制度や、100種類以上もの奨学金制度を設置しているところも。

ちなみに、大学によって奨学金の内容や条件はさまざまです。

青山学院大学の「もらう=給付型の奨学金」の場合、対象者は日本学生支援機構の奨学金に申し込んだけれど採用されなかった人、申し込まなかった人、学業が優秀な人などの条件があります。

年間50万円を給付され、原則4年間継続的に支給されますが、毎年学業成績と家計状況について審査があります。

保護者の方はぜひ、「子どもが進学したいと考えている志望大は、どんな奨学金制度があるか?」をチェックしてみてくださいね。
志望大選びはもちろん、合格したときの奨学金の申し込みが、スムーズにできますよ。

以下のJASSOのページでは、都道府県・大学名などから奨学金を検索でき、大変便利です。ぜひ各大学の奨学金の内容が気になったら、利用してみてくださいね。

>>大学・地方公共団体等が行う奨学金制度(JASSO)

3:民間育英団体による奨学金

民間団体による奨学金も、多くの場合、家計基準と学力基準、大きく2つの要件が設けられています。

さらに、特定の学問を学んでいる、親が病気などで死亡したなど、利用できる人が限定されている奨学金もあります。

貸与型と給付型いずれもありますが、給付型と貸与型がミックスされた奨学金もあります。

たとえば、保護者が交通事故で死亡・後遺障害をおっている子を援助する交通遺児育英会は、進学先が大学の場合、月額2〜4万円の無利子貸与に加え、月額2万円を給付するという内容です。

返還は、最長20年、貸与終了後7か月目からスタートします。

4:地方公共団体による奨学金

地方公共団体が実施している奨学金制度は、「もらう=給付型」「借りる=貸与型」それぞれあります。

申し込み資格として、学生の保護者等がその自治体に住んでいることを条件のひとつとしているケースが多いです。

たとえば、港区は国の大学無償化制度をさらに手厚くした区独自の給付型奨学金を実施していますが、利用できるのは、保護者が区内在住である学生です。

また、無利子の貸与型奨学金制度もありますが、こちらも保護者が区内在住である必要があります。自治体によっては連帯保証人が必要で、連帯保証人にも住所要件が適用される場合があります。

貸付額は、港区の場合、国公立大学自宅通学の場合、月額45,000円以内、私立大学自宅外通学なら64,000円以内。

返還は、貸付が終了翌月の1年後からスタートし、12年以内に終える必要があります。

自治体によって内容はさまざまですから、以下のページからお住まいの自治体の奨学金制度を調べてみてくださいね。

>>大学・地方公共団体等が行う奨学金制度(JASSO)

5:専門学校独自の奨学金制度

専門学校にも、奨学金制度を実施している学校は数多くあります。

入学金や授業料の減免、学生寮の寮費が支給される奨学金、中にはマンションの仲介手数料を奨学金として給付するなどユニークなものもあります。

その他、一定の資格取得などで奨学金の給付があったり、奨学金を受けるために面接や論文試験に合格する必要があったりと、家計基準より学業を重視する傾向が強いのが特徴です。

奨学金を申し込みたい!いつから何をすればいい?

「もらう=給付型」「借りる=貸与型」、それぞれ申し込む時期によって予約採用と在学採用があります。

予約採用…大学や専門学校などに進学する前に申し込む
在学採用…進学してから申し込むもの

予約採用は、高校3年生の春(4~5月)に募集を開始。
秋~冬(10月~11月)にかけて奨学金採用結果がわかります。

まずは高校3年生になったらすぐ、学校の先生に奨学金のことを確認しましょう。
保護者の方は、お子様に「学校で奨学金のお知らせがあったら、教えてね!」との声かけをしておくのがオススメです。

「予約採用で採用されなかった」
「予約採用を申し込まなかったけれど、あとから申し込みたい」
と思ったら、進学先の学校でも在学採用を申し込むことができます。

在学採用の場合、入学する前に大学・専門学校のホームページをチェックして、奨学金の制度を事前に確認。
入学後はお子様に大学の奨学課に行ってもらったり、構内の掲示板をまめにチェックしてもらうなどして、情報をいちはやく得ていくようにしましょう。

「返せない…」を避けよう! 借りる=貸与型の奨学金で、絶対チェックしたいこと3つ

1:「返す必要がある奨学金であること」を親子でしっかり認識する

奨学金を検討や申請をするとき、「この奨学金は、返す必要がある奨学金か?」を必ず確認しておきましょう。

ポイントは、必ず親子で確認すること!
実は、お金を返すことになるお子様が、お金を返す必要があると知らないまま借りていた…ということもあります。

また、奨学金を延滞している人ほど、申し込み手続きを行う前に返還義務があることを知らない割合が多いという調査結果もあります。

「奨学金の制度は、いろいろ種類があって難しい…」と思いますが、まずは

・もらう=給付型
・借りる=貸与型

この2つだけは、しっかり親子で押さえておいて下さいね。

2:利子と返還シミュレーションをチェックする

返還が必要かどうかを確認したら、

・利子がつくタイプのものか?無利子タイプのものか?
・利子がつくなら、どの程度の利率か?
・実際の返還額はどれくらいか?

も、あわせてチェックしておきましょう。

日本学生支援機構(JASSO)の奨学金の場合、利子の利率は、以下のページを参考にしましょう。
第二種奨学金の場合、利率がわかるのは貸与終了時。お子様の返還時の利率に必ずしもあてはまるわけではありません。
ただし、利率を確認することで、返還時のシミュレーションはしやすくなりますよ。

>>第二種奨学金の貸与利率(JASSO)

奨学金の返還シミュレーションは、以下からできます。
月に3万円返還なのか?1万円の返還なのか?どのくらい借りればどれくらいの返還額になるのか?がわかり、無理のない計画を立てられます。

>>奨学金貸与・返還シミュレーション(JASSO)

3:居住地や専攻科目が奨学金の条件に当てはまるか確認しておく

居住地や学ぶ科目が利用条件に入っている場合もあります。
自分の場合は該当するか、確認しておきましょう。

以下のページで、希望する奨学金制度の利用条件を調べてみてくださいね。

>>大学・地方公共団体等が行う奨学金制度(JASSO)

奨学金を借りるときの注意点

入学金としては利用できない

奨学金は、入学金として利用できないものが、とても多いです。

奨学金の振り込み時期は、予約採用だとしても、進学してからです。

奨学金によっては、初年度は入学金を上乗せして支給するものもありますが、入学前に振り込まれるわけではありません。

入学金は別途準備する必要があります。

借りている間は成績に注意が必要

奨学生として採用されたとしても、成績が不振になると奨学金が停止されたり、打ち切られたりすることがあります。

特に日本学生支援機構の奨学金は、「もらう=給付型」「借りる=貸与型」の奨学金どちらも、奨学生として適格性が採用後も確認されます。

せっかく採用された奨学金です。
成績は落とさないよう、日頃から勉学に励みたいですね。

まとめ & 実践 TIPS

「大学に進学したいけれど、学費を準備するのが厳しい…」
「やりたいことを、経済的な事情であきらめたくない!」
そんな勉強のやる気があるお子様の、新たな一歩を支えるのが奨学金です。

もらえる奨学金や、借りても無利子の奨学金など、種類は豊富。
まずは「もらう=給付型」の奨学金から、調べてみてくださいね。

一方、「借りる=貸与型」の奨学金は、社会人になってから10年から20年かけてそのお金を返す必要があります。
月々返す金額までしっかりシミュレーションした上で、奨学金を申し込めるといいですね。

「返す必要はあるけど、奨学金を借りて進学して良かった!」と親子で思えるよう、奨学金を上手に活用して、お子様の新たな可能性と道をひらいてくださいね!

前田菜緒

前田菜緒

ファイナンシャルプランナー、公的保険アドバイザー。保険代理店に7年間勤務後に独立。子育て世代向けにライフプラン相談、セミナー、執筆などを行っている。相談は、夜、子どもが寝てからでも可能で未就学児ママに配慮したサービス体系になっている。2児の母。FPオフィスAndAsset代表(https://www.andasset.net)

出典:
青山学院大学「学費・奨学金・教育ローン」
https://www.aoyama.ac.jp/life/expenses/

独立行政法人日本学生支援機構「奨学金」
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/index.html

公益財団法人交通遺児育英会「奨学生募集のご案内」
https://www.kotsuiji.com/howto/

港区「奨学資金」
https://www.city.minato.tokyo.jp/gakkouuneishien/kodomo/gakko/syougaku/index.html

北九州市「大学奨学金」
https://www.city.kitakyushu.lg.jp/kyouiku/file_0085.html

学校法人メイウシヤマ学園「教育ローン・奨学金」
https://www.hollywood.ac.jp/dormitory/

日本電子専門学校「学費・学費サポート」
https://www.jec.ac.jp/entrance/support/original.html#scholar01

JASSO 年報 令和元年度
https://www.jasso.go.jp/about/organization/__icsFiles/afieldfile/2021/02/16/annrep19_1.pdf

令和元年度 奨学事業に関する実態調査結果(概要)
https://www.jasso.go.jp/statistics/shogakukin_jittai/__icsFiles/afieldfile/2021/09/28/outline2019_1.pdf

プロフィール



メンバー全員が子育て経験を持つ女性FPのグループ。各自の子育て経験や得意分野を活かして、消費者向けのセミナーや相談業務、執筆、監修などを手掛けている。教育資金に関する情報発信の機会も豊富。

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