【専門家&体験談あり】奨学金とはどんな制度?主な制度5つ&「返せない…」を避けるために絶対チェックすべき点とは?

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「大学に進学したいけれど、学費を準備するのが厳しい……」
「やりたいことを、経済的な事情であきらめてほしくない!」

お子さまの進学を考える時、奨学金を検討している人も少なくないでしょう。しかし、奨学金にはさまざまな種類があるため「どの奨学金を利用すればいいの?」と迷っている保護者のかたも多いはず。

そこで今回は、高校卒業後の奨学金の種類や内容、奨学金を借りるポイントについて、お伝えします。

この記事のポイント

50万人以上が新規で利用! 奨学金とはどんな制度か?

奨学金とは? どれくらいの人が利用しているの?

奨学金は、経済的理由で進学が困難な学生が学資を借りたり、給付を受けたりすることができる制度です。

利用者数が一番多い「日本学生支援機構」の奨学金の場合、令和4年度は50万人以上が新規で採用されています。(給付型新規採用数は12万4,361人、貸与型は39万9,499人)

さらに、令和4年度で日本学生支援機構の奨学金やその他の奨学金を一つでも受給している大学生(昼間部)は、全体の55%にのぼり近年は増加傾向にあります。

奨学金を利用できる人は?

奨学金を利用できるのは、高等学校・高等専門学校・大学・短期大学・専門学校・大学院などに通っている生徒や学生です。既卒生でも利用できる場合があります。

奨学金を利用するには、いくつかの基準をクリアする必要があり、主な基準は「学力基準(単位数や出席率などの基準)」と「家計基準(所得や資産などの基準)」の2つです。

基準をクリアすれば利用できるとはいえ、何十万、何百万円ものお金が動きます。利用する前には、返済のことも考えて申し込みをしたいですね。

奨学金の種類は「もらう=給付型」「借りる=貸与型」の2種類

奨学金には、いくつも種類があって難しいですが、まずは「もらう=給付型」「借りる=貸与型」の2種類から押さえていきましょう。

「もらう=給付型」の奨学金

給付型は、返還不要の「もらう」奨学金です。
奨学金に興味が出たら、「給付型の奨学金が申請できないか?」を最初に検討してみてください。

5段階評定で3.5以上が必要、家計基準の利用条件が厳しいなど、条件は「借りる=貸与型」の奨学金より厳しいのが特徴です。

「借りる=貸与型」の奨学金

貸与型は、お金を「借りる」奨学金。
令和4年度の日本学生支援機構では約40万人が新規で採用されており、給付型の約3倍の人数になっています。

奨学金は「借りたお金」になるため、大学卒業後はお金を返さないといけません。「うちは、もらう=給付型の奨学金の条件にはあてはまらないな」と思ったら、貸与型を検討してみましょう。

さらに貸与型には、返還時に利子がつく「有利子タイプ」と、利子がつかない「無利子タイプ」があります。

まずはどれから検討すればいい? 主な奨学金制度5つ

ではここからは、実際にどんな奨学金の制度があるのか見ていきましょう。
主な制度は5つあります。

1:日本学生支援機構(JASSO)の奨学金制度

奨学金の利用で最初に検討したいのが、「日本学生支援機構(JASSO)」の奨学金制度です。

利用者数も採用者数も多く、さらに教育ローンなどに比べて利率が低い奨学金制度で、「もらう=給付型」・「借りる=貸与型」のどちらもあります。

採用されるには、2つの条件が必要です。

  • ・学力基準…必要な学力の基準です。
  • ・家計基準…生計維持者の収入金額の基準です。

日本学生支援機構の「もらう=給付型」の奨学金は、いわゆる大学無償化といわれている奨学金で

  • ・入学金と授業料の減免
  • ・奨学金の支給

の2つがセットになっています。

また、日本学生支援機構の「借りる=貸与型」の場合は、以下の2種類。

  • ・第一種…無利子の奨学金
  • ・第二種…有利子の奨学金

があり、どちらも在学している期間、貸与されます。
日本学生支援機構の奨学金制度のさらに詳しい内容が知りたいかたは、下の記事をご覧ください。

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【2024年度】日本学生支援機構(JASSO)の奨学金制度とは?

2:大学独自の奨学金制度

次に大学進学希望のかたにぜひ調べてほしいのが、大学独自の奨学金制度です。
特徴は、「もらう=給付型」の奨学金が充実していること。「借りる=貸与型」の奨学金は少なめです。

奨学金に力を入れている大学もあり、独自の奨学金制度や、100種類以上もの奨学金制度を設置しているところもあります。ちなみに、大学によって奨学金の内容や条件はさまざまです。

奨学金を検討している保護者のかたは、ぜひお子さまの志望大学にどのような奨学金制度があるかチェックしてみてくださいね。

以下のJASSOのページでは、都道府県・大学名などから奨学金を検索でき、大変便利です。
>>大学・地方公共団体等が行う奨学金制度(JASSO)

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【2024年度】大学独自の奨学金制度とは?

3:民間育英団体による奨学金

民間団体による奨学金は、「給付型」「貸与型」「給付型と貸与型のミックス型」など、さまざまなものがあります。選考方法は、学業成績や家庭の経済状況、面接、ボランティアなどの社会貢献度が評価されるなど、団体によってさまざまです。

さらに「特定の学問を学んでいる」「親が病気などで死亡した」など、利用できる人が限定されている奨学金もあります。

たとえば、保護者のかたが交通事故で死亡または後遺障がいになられた際に子どもを援助する交通遺児育英会は、進学先が大学の場合、月額2〜4万円の無利子貸与に加え、月額2万円を給付するという内容です。

4:地方公共団体による奨学金

地方公共団体が実施している奨学金制度にも、「給付型」「貸与型」それぞれあります。

申し込み資格として、学生の保護者等がその自治体に住んでいることを条件の一つとしているケースが多いです。

無利子の貸与型奨学金制度もありますが、こちらも保護者がその自治体在住である必要があります。自治体によっては連帯保証人が必要で、連帯保証人にも住所要件が適用される場合があります。

自治体によって内容はさまざまなので、以下のページからお住まいの自治体の奨学金制度を調べてみてください。

>>大学・地方公共団体等が行う奨学金制度(JASSO)

5:専門学校独自の奨学金制度

専門学校にも、奨学金制度を実施している学校は数多くあります。

入学金や授業料の減免、学生寮の寮費が支給される奨学金、なかにはマンションの仲介手数料を奨学金として給付するなどユニークなものもあります。

その他、一定の資格取得などで奨学金の給付があったり、奨学金を受けるために面接や論文試験に合格する必要があったりと、家計基準より学業を重視する傾向が強いのが特徴です。

奨学金を申し込みたい! いつから何をすればいい?

「もらう=給付型」「借りる=貸与型」、それぞれ申し込む時期によって予約採用と在学採用があります。

  • 予約採用…大学や専門学校などに進学する前に申し込む
  • 在学採用…進学してから申し込む

予約採用は、高校3年生の春(4〜5月)に募集を開始し、秋〜冬(10〜11月)にかけて奨学金の採用結果がわかります。

まずは高校3年生になったらすぐ、学校の先生に奨学金のことを確認しましょう。保護者のかたは、お子さまに「学校で奨学金のお知らせがあったら教えてね!」との声かけをしておくのがおすすめです。

「予約採用で採用されなかった」
「予約採用を申し込まなかったけれど、あとから申し込みたい」
と思ったら、進学先の大学や専門学校でも在学採用を申し込むことができます。

在学採用の場合にすることは、

  • 入学する前:大学・専門学校などのホームページをチェックして、奨学金の制度を事前に確認する
  • 入学後:お子さまに進学先の奨学課に行ってもらう。または、構内の掲示板をまめにチェックしてもらう

「申し込み期間が終わっていた」ということのないように、奨学金の情報はいち早く得るようにしましょう。

「返せない…」を避けよう! 貸与型の奨学金で、絶対チェックしたいこと3つ

1:「奨学金を返す必要があること」を親子でしっかり認識する

奨学金の検討や申請をする時、「この奨学金は、返す必要がある奨学金か?」を必ず確認しておきましょう。

ポイントは、必ず親子で確認すること。
実は、お金を返すことになるお子さまが、お金を返す必要があると知らないまま借りていた……ということもあります。

また、奨学金を延滞している人ほど、申し込み手続きを行う前に返還義務があることを知らない割合が多いという調査結果もあります。

「奨学金の制度は、いろいろ種類があって難しい……」と思いますが、まずは

  • ・もらう=給付型
  • ・借りる=貸与型

上記の2つだけは、保護者のかたとお子さまとでしっかり押さえておきましょう。

2:利子と返還シミュレーションをチェックする

返還が必要かどうかを確認したら、

  • ・利子がつくタイプのものか? 無利子タイプのものか?
  • ・利子がつくなら、どの程度の利率か?
  • ・実際の返還額はどれくらいか?

以上3つも、あわせてチェックしておきましょう。

日本学生支援機構(JASSO)の第二種奨学金の場合、貸与利率は以下のページを参考にしましょう。

>>第二種奨学金の貸与利率(JASSO)

第二種奨学金(有利子の貸与型奨学金)の場合、利率がわかるのは貸与終了時です。
お子さまの返還時の利率に必ずしもあてはまるわけではありませんが、利率を確認することで、返還時のシミュレーションはしやすくなりますよ。

ここで、具体的な例を挙げて返還シミュレーションを見てみましょう。

※日本学生支援機構 奨学金貸与・返還シミュレーションより算出

有利子タイプの第二種奨学金を大学在学中に月5万円利用し、利率固定方式で返還した場合、返還期間を15年とすると月々の返還額は約1万4,000円でした。

奨学金の返還シミュレーションは、以下のサイトからできます。
「どのくらい借りればどれくらいの返還額になるのか?」
がわかり、無理のない計画を立てられます。

>>奨学金貸与・返還シミュレーション(JASSO)

3:居住地や専攻科目が奨学金の条件にあてはまるか確認しておく

居住地や学ぶ科目が奨学金の利用条件に入っている場合があるため、自分が条件に該当するかきちんと確認しておきましょう。

以下のページで、希望する奨学金制度の利用条件を調べてみてくださいね。

>>大学・地方公共団体等が行う奨学金制度(JASSO)

奨学金を借りる時の注意点

入学金としては利用できない

奨学金は、入学金として利用できないものがとても多いです。
奨学金によっては、初年度に入学金を上乗せして支給するものもありますが、入学前に振り込まれるわけではありません。

そのため、入学金は別途準備する必要があります。

借りている間は成績に注意が必要

奨学生として採用されたとしても、成績不振になると奨学金が停止されたり、打ち切られたりすることがあります。

特に日本学生支援機構の奨学金は、給付型・貸与型にかかわらず、奨学生としての適格性が採用後も確認されます。

せっかく採用された奨学金です。成績を落とさないよう、日頃から勉学に励んでほしいですね。

奨学金を利用している大学生の体験談

最後に、実際に奨学金を利用している大学生の体験談を紹介します。

早稲田大 R・Y先輩
大学の給付型奨学金を受けています。奨学金は、本当に情報戦です。入学前から受付もあり、数十万円もらえることもあります。知らないと損するので、自分で調べることをおすすめします。

宮城教育大 F・K先輩
JASSOの奨学金(給付型、貸与型)を利用しています。返せる額などを保護者としっかり検討してきめたほうがいいと思います。

新潟県立大 R・F先輩
JASSOの奨学金の貸与型を利用していて、実家暮らしですが、家から学校までが遠いので交通費が結構かかります。自分でアルバイトをしながら資格なども取りつつ充実した大学生活が送れています。借りる値段はほんとうに必要な金額なのかをよく考えて借りた方が、後から自分が苦労しないと思います。

奨学金には申し込み期日があるため、いかに早く情報をキャッチし行動するかが大切です。希望する進路は「国公立大学か私立大学か」「自宅通学か下宿か」など、さまざまなパターンでシミュレーションし、必要な奨学金の支給額を決めておくとスムーズに申し込みができます。

貸与型の奨学金は、大学や専門学校の卒業後に返す必要があることも、保護者のかたとお子さまとで話し合っておきましょう。

※2024年5月に行った進研ゼミ受講経験のある大学生向けアンケート(150人回答)に寄せられた体験談をもとに作成。

まとめ & 実践 TIPS

お子さまの進学という新たな一歩を支える奨学金。奨学金には、返さなくてよいもの、借りても無利子のものなど、さまざまな選択肢があります。まずは、「もらう=給付型」の奨学金から、調べてみてください。

「借りる=貸与型」の奨学金は、社会人になってから10~20年かけてそのお金を返す必要があります。「返済できない……」を防ぐために、「奨学金は学生本人が借りるお金であること」「大学を卒業すると返還がスタートすること」「お金を借りても行きたい大学なのか」などを保護者のかたとお子さまの間でしっかり話し合っておきましょう。

実際に奨学金を利用している学生のかたの意見も参考にしながら、「奨学金を借りて進学してよかった!」と保護者のかたとお子さまの両者が思えるよう、奨学金を上手に活用して、お子さまの新たな可能性を切り開いてください。

プロフィール


海田幹子

教育・育児、マネー等について執筆。現在、小学生2人の子育てに奮闘中。

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