「何を学びたいか」「どんな職業に就きたいか」だけではない!? 保護者だからこそできる進路関連のアドバイスは?【進路意識調査より】③
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高校生のお子さまがいらっしゃる保護者のかたは、「子どもに充実した人生を送ってほしい」と願っているのではないでしょうか。
しかし、近年はキャリア形成における環境変化が著しく、「どんな進路選択をすれば子どもの将来がよりよいものになるか、見当もつかない」と悩む場面もあるかもしれません。
そこでシリーズ最終回となる3回目では、ベネッセコーポレーションが進研ゼミ高校講座受講生とその保護者および受講経験がある大学生・若手社会人のかたにご協力いただいて「進路意識調査」を実施いたしました。
その結果をもとに、中高生のキャリア教育に尽力されている真坂 淳さん(NPO法人、日本学生社会人ネットワーク代表理事)に、「保護者として子どもに伝えたい進路選択の視点とは?」というテーマでアドバイスをいただきました。
お子さまと一緒に、ワクワクする未来を思い描きながら進路に向き合ってみませんか?
※掲載データは2024年7-9月にベネッセコーポレーションが実施した、高校生保護者向け調査(546人回答)、進研ゼミを受講している高校生向け調査(642人回答)、進研ゼミ受講経験のある大学生向け調査(147人回答)、社会人向け調査(30人回答)に寄せられた回答と体験談をもとに作成しています。
志望大学検討にあたっては大学や就職の先にある
「人生のテーマ」に目を向けるようアドバイスを
——高校生に「志望大学決定において重視していること」を複数挙げてもらったところ、「学びたい学問があること」を挙げた人が9割近くに上りました。
それ以外では、「キャンパスの雰囲気がよいこと」や「雰囲気が自分に合っていること」といった項目を選んだ人も5割ほどいましたが、やはり「学びたい学問がある」ことは突出して多くの高校生が挙げていました。
また大学生と社会人にも同じ質問をしたところ、いずれも「学びたい学問がある」ことが1位でした。
ただし、20代中盤の若手社会人に「高校生の時にもっと考えるべきだったこと」は何かを聞いてみたところ、「資格や免許が取得できる」や「就職サポートが手厚く就職実績がよいこと」を重視すると答えた人がめだちました。
保護者のかたとしても、「大学側がどんな就職サポートをしてくれるか」は気になるところだと思います。
これらのアンケート結果をご覧になって、ご感想はいかがですか?
(真坂さん)
お子さまが「学びたい学問がある」ことを重視するのは当然でしょう。
また、就職活動などを経た若手社会人が「就職サポート体制や資格・免許の取得に目を向けておけばよかった」と考えるのもうなずけるところです。
これらの項目に加えて、お子さまの進路選択をバックアップする保護者のかたに、もう一つ持っていただきたい視点があります。
それは「人生のテーマ」という考え方です。
——真坂さんがお考えになる「人生のテーマ」とは?
(真坂さん)
人生のテーマについて説明する時、私はいつも「BE(どんな人になりたいか)・DO(何をなし遂げたいか)・VISION(どんな社会をつくりたいか)」という言葉を使って考えます。
日本学生社会人ネットワーク(以下、JSBN)の活動で、高校生に「あなたの夢は何ですか?」と質問すると、弁護士や医師、薬剤師などをめざしたい職業として答えるお子さまが一定数見られます。
「お金持ちになりたい」「イケメンになりたい」といった答えが返ってくることもあります。
しかし、「弁護士になって何がしたい?」「お金持ちになったら、そのお金を何に使いたい?」と問いかけると、ほとんどのお子さまが言葉に詰まってしまいます。
「夢をかなえた先」を深く考えたことがないからかもしれません。
しかし、さらに質問を投げかけていくと、お子さまの考えがどんどん深まり、「つくりたい社会やなし遂げたいことのために、今何をしたらよいか」を自然と考えるようになります。
——「将来何をしたい?」と問われても、何も思い浮かばない高校生もいるのではないでしょうか?
(真坂さん)
確かに、JSBNが以前高校生に向けて実施したアンケート調査でも、「将来の夢がない」と回答する人が約5割いました。
ただ、答えが出なくても、問われれば考えるきっかけができますよね。
人生のテーマがなんとなくでも見えてくれば、「受験や就職は手段でしかない」とわかり、視野を広げて将来を考えられるようになるのではないでしょうか。
——お子さまと一緒に「人生のテーマ」を考えていくうえで、保護者として我が子に何を伝えればよいでしょうか?
(真坂さん)
まじめなお子さまほど、「人生のテーマを一度決めたら貫き通さなければ」と感じているかもしれません。
しかし今の時代は、たとえば仕事にしても転職や副業をする人が増え、「ひとつのことをやり通そう」と考える必要はなくなってきています。
そこで保護者のかたとしても、できればお子さまに「夢や勉強や部活や課外活動など、やりたいことがいくつもある時は、作戦を考えて、いくつもやっていいんだよ」と伝えてあげるとよいのでは、と思います。
そのことでお子さまは、リラックスして将来に目を向けられるようになる気がします。
価値観が変化する時代に、保護者ができるアドバイスは?
——30年ほど前までは、終身雇用の働き方がまだまだ一般的で、「どの大学に入学し、新卒でどの企業に入社するか」で人生が決まる、といった考え方がありました。
高校生の保護者世代の中にも、その頃の価値観を覚えているかたがいらっしゃるかもしれません。
しかし、先ほどのお話にもあったように、当時と今とでは、仕事や人生に対する考え方が大きく変化しています。
そこで保護者のかたとしては、「自分が進路に関するアドバイスをしても、子どもの役に立たないのではないか」と不安に感じられるかもしれません。
それでも人生の先輩として、子どもに伝えられることは何でしょうか?
(真坂さん)
確かに、この30年ほどで仕事や人生に対する価値観は大きく変化していますね。
また、今はVUCA(「Volatility:変動性」、「Uncertainty:不確実性」、「Complexity:複雑性」、「Ambiguity:あいまい性」の頭文字をとった造語)の時代といわれ、お子さまの進路検討にあたっても、未来が予測しにくいところがあります。
しかし、どんな時代においても、「人生のテーマ」を大事にすることで、人生が豊かになることは間違いないと思います。
むしろ、お子さまと一緒に「VUCAを楽しむ」くらいの気持ちで、先ほどご紹介した
「人生のテーマを考える会話」などをしながら将来を考えてみてはいかがでしょうか。
これからの時代に生き生きと活躍できる人とは?
——多くの保護者のかたは、お子さまに「充実した人生を送ってほしい」「社会で生き生きと活躍してほしい」と感じていらっしゃると思います。
これからの時代、人生を楽しみながら活躍できる人とは、どんな人でしょうか?
(真坂さん)
私が現在、一緒にキャリア活動をしているJSBNの仲間たちも皆、充実した人生を送り、様々な場で活躍しています。
その中には、新卒で入社した企業に長く在籍している人もいれば、キャリアチェンジを繰り返している人もいます。
しかし、彼らには「やりたいことに正直で、アクティブに行動しながら自分の世界をつくっている」という大きな共通点があります。
言い換えれば、「所属している企業や組織の枠を超えて、知識や人間関係を広げている人」ということになります。
企業や組織から見ると、独自の知見を持ち、事業成長につながる新たな提案をできる人は、まさに「価値のある人」と映ると思います。
2015年ごろから、「10~20年後には多くの仕事がAIによって代替されるようになる」といわれています。
しかし、社内外で生き生きと活躍している人は、AIにはできない仕事をしていけるのではないか、と私は感じます。
目先の成果を求めないほうが
進路選択のサポートも子育ても楽しめる
——高校生の保護者世代は、子育てや介護、仕事などで忙しいうえ、今までになかった心身の変化を感じることも増えて、大変な時期を過ごしているかたもいらっしゃいます。
このような状況のなかで、子どもと一緒に進路選択を楽しめるような、保護者のかたの心がラクになるようなメッセージをいただけないでしょうか?
(真坂さん)
今はキャリアを自由に広げていける時代だと思いますが、それでも保護者のかたとしては不安ですよね。
でも、時代の変化をお子さまと一緒に感じながら、楽しんで進路選択をサポートできたらすてきだと思いませんか?
——本当にそうですね。一方で、お子さまの進路選択をサポートするにあたって、「子どもの一生を左右する選択だと思うと、これでいいのかな、と不安を感じる」という人も多いかもしれません。
また、お子さまに進路情報を提供しても、「リアクションが返ってこないし、どうしたらいいかわからない」ということもありそうです。
(真坂さん)
進路選択をサポートするにあたっては、「すぐに結果が出るものではない」と考えておくとよいかもしれませんね。
JSBNの活動で高校生向けに講演を行っても、目を輝かせて聴いてくれる生徒もいれば、眠そうにしている生徒もいます。
でも、その時は響いていないように見えても、あとになって「講演の内容を思い出して将来を考え始めた」という人もいるのです。
ですからお子さまの反応が薄いように見えても、ご本人なりにいろいろ考えている可能性は高いと思います。
「あとで思い出してくれたらいいな」くらいの気持ちでいれば、保護者のかたも少しラクな気持ちになれるのではないでしょうか。
それぞれのご家庭では、お子さまに対して「自分で納得できる進路を選んで、将来を充実させてほしい」「どこででも生きていけるようになってほしい」など望むところがあるでしょう。
その軸を持ちながら、お子さまの話し相手になったり、ボランティアや進路セミナーなどへの参加を勧めてあげたりすれば、それが最高のサポートだと思います。
まとめ & 実践 TIPS
時代の流れの速いなかで、どんな進路選択がお子さまにとってベストかを予測するのは難しいものです。
どんなアドバイスをすればよいか、保護者のかたとしては迷う場面も多いと思います。
それでも、真坂さんが提案してくださった「人生のテーマ」を軸に考えていくことで、お子さまの将来がワクワクするものに変わっていくのではないでしょうか。
お子さまと一緒に、楽しみながら進路を考えていけるとよいですね。
【前回までの記事はコチラ】
8割以上の保護者が高校生の進路選択をサポート!? 子どもがうれしいと感じるサポートとは?【進路意識調査より】①|ベネッセ教育情報
85%の高校生が進路について保護者のアドバイスを求めている! 忙しい保護者でも可能なサポートとは?【進路意識調査より】②|ベネッセ教育情報
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