85%の高校生が進路について保護者のアドバイスを求めている! 忙しい保護者でも可能なサポートとは?【進路意識調査より】②

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高校生のお子さまがいるご家庭にとって、大学進学を見据えての進路選択は大きなテーマ。
ただ、仕事や介護、家事・子育てなどで日々忙しい保護者のかたも多いのではないでしょうか。
「子どもを全力サポートしたいけど、自分の高校時代とは進学事情もかなり違うし、時間も取れなくて……」と悩むかたもいらっしゃるかもしれません。

そこでシリーズ2回目では、ベネッセコーポレーションが進研ゼミ高校講座受講生とその保護者及び受講経験がある大学生・若手社会人のかたにご協力いただいて実施した「進路意識調査」の結果をもとに、認定NPO法人、日本学生社会人ネットワーク(JSBN)の代表理事として中高生のキャリア教育に尽力されている真坂 淳さんに、「忙しい保護者ができる進路選択支援とは?」というテーマでアドバイスをいただきました。

保護者のかたにとって負担とならず、しかもお子さまの進路選択に役立つ方法を、試してみませんか?

※掲載データは2024年7-9月にベネッセコーポレーションが実施した、高校生保護者向け調査(546人回答)、進研ゼミを受講している高校生向け調査(642人回答)、進研ゼミ受講経験のある大学生向け調査(147人回答)、社会人向け調査(30人回答)に寄せられた回答と体験談をもとに作成しています。

この記事のポイント

充実した大学生活になるかどうかは
「高校時代までの進路検討度合い」で決まる

——進研ゼミ受講経験のある大学生に回答してもらったアンケートの結果からは、「志望理由の納得度」と「大学生活の充実度」には強い相関関係があることが明らかになりました。
つまり、「高校時代に納得して進路選択をした人は、大学生活が充実しやすい」ということになります。

このデータをどのようにご覧になりますか?

(真坂さん)
まさに、私が日本学生社会人ネットワーク(以下、JSBN)の活動をしながら得た実感を裏づけてくれるようなデータだと思います。
私は以前から、「充実した大学生活を送っている人とそうでない人の違い」について、大きな問題意識を持っていました。
そもそもJSBNを創設したのも、「大学生と社会人が出会って切磋琢磨する学びの場を提供したい」という思いからでした。

しかし、活動していくなかで「大学生になってからでは遅いのではないか」と気付いたのです。
充実した大学生活を送っている学生さんと話をすると、中学・高校時代から将来に対する展望を描いたうえで大学入試に臨んでいる人が非常に多かったのです。
このような学生さんは、入学前から「大学では何に取り組むか」が明確です。
「将来のことはまだわからないから、とりあえず難関大合格をねらおう」といった進路選択も、もちろんあって構わないと思います。
ただ、「入ってからゆっくり考えよう」という人と、既に大学生活のビジョンが見えている人とでは、入学前から大きな差がついているのも事実です。

だからこそ、「大学生活の全体像」をなんとなくでもよいので持っておくことは大切です。
ビジョンが見えれば、高校生は「思い描く大学生活を送るためには、今からどんなことをしたらよいか」を自分で調べたりして、自走し始めます。
保護者のかたとしては、この段階に行くまでのサポートができるとよいですね。

時間の有無に関わらず
子どもに役立つサポートができる!

——アンケートに協力してくれた大学生の中で「高校時代、自分で納得できる志望理由を考えたうえで志望大・志望学部を決めた」という人に向け、「進路選択に向けて、具体的にどんな活動をしましたか?」と質問してみました。
その結果、84%と多くの人が「大学・学部・職業について調べた」を挙げています。
ただ、「保護者と一緒に進路について検討した」という人も66%と意外に多くみられました。

自由記述回答でも、保護者のかたの進路選択サポートについて、次のような声がありました。

「遠方にある大学のオープンキャンパス参加をためらっていたら、『せっかくだから行ってみようよ』と背中を押してくれた」(広島大 総合科学部 在学中 R・M先輩)

「私が『看護師をめざしたい』と話したら、現役で仕事をしている看護師のかたに連絡を取って、話を聞く機会をつくってくれた」(宮城大 看護学群 在学中 Y・A先輩)

この結果からも、納得して進路選択を行った人は、保護者のかたから上手にサポートしてもらいながら検討を進めたのではないかと推測できます。

しかし、高校生全員が保護者からサポートを得ているわけではありません。
「進路選択に向けて、具体的にどんな活動をしましたか?」という質問における大学生全体の回答を集計すると、「保護者と一緒に検討した」という回答は44%にとどまっています。

(真坂さん)
予想外に少ないですが、だからといって「高校生が保護者のサポートを必要としていない」というわけではないですよね。

——次にご紹介するアンケート結果からも、そのことが推測できます。
高校生に「志望大・学部を決定するにあたって、保護者からの意見・アドバイスを参考にしたいですか?」と質問したところ、「とても参考にしたい」と回答した人が37.1%、「まあ参考にしたい」が47.0%みられました。
つまり、約84%の人が進路選択にあたって保護者のかたと話をしたがっている様子がうかがえます

※百分比(%)は小数点第2位を四捨五入して表示。四捨五入の結果、各々の項目の数値の和が100%とならない場合があります。

もちろん保護者のかたも、お子さまの進路選択にあたって「できる限りのサポートをしたい」とお考えでしょう。
ただ、仕事や家事などで忙しいかたも多く、高校生のお子さまに多くの時間を割くことが難しい、という実情もあります。
このように時間が限られているなかで、どんな進路サポートを優先的に行っていけばよいでしょうか?

(真坂さん)
まずお伝えしたいのは、「保護者のかたがすべてをサポートする必要はない」ということです。
保護者のかたはただ、「学校や家庭とは違う世界」に目を向けさせてあげればよいのではないでしょうか。
進路選択を行う際、先生や友達、家族、親戚以外の信頼できる大人と接することで、新しい視点を得る可能性が広がります。
決めるのは本人というスタンスで、お子さまがアクションをおこし、リサーチを進めたほうが納得感のある進路選択につながるでしょう。
ただし、子どもにとって近すぎる保護者の言葉は、特に反抗期の子どもの心に届かないことがあります。
お子さまが能動的なアクションを起こすためのきっかけ作りとして、保護者のかたが「学校や仮定とは違う世界に目を向けさせてあげる」のも多感な時期の子どもたちへの有効なアプローチと思います。

そこでお子さまに勧めてあげたいのが、地域活動やボランティア、オンラインで行われている進路イベントへの参加です。
大学生や社会人など、普段接しているのとは違う属性の人と関わることは、進路検討を進めるうえで非常に大切だと思います。

お子さまの進路選択に関わることは
家族の絆を深める絶好のチャンスになる

——近年は、各大学で学部・学科を新設したり、文系・理系の枠を超えて学べるコースをつくったりする動きがめだっています。
入試制度も多様化しており、自分の強み・弱みに応じた入試方式を選ぶことが必要です。
そのため、「どの大学・学部を、どの方式で受験するか」をお子さまだけで決めるのは難しい場合も多々あり、ご家族が情報収集を手助けするなどのサポートをしてあげれば、お子さまにとっては大きな力になります。

また、いわゆる推薦入試と総称される「学校推薦型選抜」や「総合型選抜」による入学者も近年増加傾向にあります。
文部科学省の「令和5年度国公私立大学入学者選抜実施状況の概要」を見ると、国公立大学の総合型および推薦型選抜入学者割合は2割にとどまっていますが、国公私立大学すべての入学者を合わせると、2021年度からは総合型および推薦型選抜による入学者が一般選抜による入学者を上回っています。

これらの推薦入試では、志望理由書をはじめとする書類準備や面接練習、プレゼンテーションなどの準備に時間と手間がかかります。

※文部科学省「令和5年度国公私立大学入学者選抜実施状況の概要」
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2020/1414952_00005.htm)をもとに弊社作成。
※2021年度以降は「その他の選抜」の区分が新設されたため、2020年度以前に学校推薦型選抜に属していた一部の選抜は別集計。
※値は「一般選抜」「学校推薦型選抜および総合型選抜」「その他の選抜」の入学者の合計に対する各選抜の入学者の割合。(「その他の選抜」のグラフ線は表示していません)

このように、大学の在り方や入試環境が変化してきたなかで、進路選択においても受験においても、お子さまと保護者のかたが協力して進める重要性が高まっています。
お子さまのチャレンジをバックアップすることで、ご家族が得られるメリットもあるのではないでしょうか?

(真坂さん)
まったくその通りで、進路検討は家族の絆を深める絶好のチャンスだと私も感じます。
多くのお子さまは、大学生になると急速に親離れしていくものです。
その意味で、進路選択や大学入試を家族で乗り越えることは、保護者のかたにとっても「子育て後半期の集大成」になるのではないでしょうか。

実は我が家の子ども2人も、AO入試(現在の総合型選抜)を経験しました。
長男の時も次男の時も家族がワンチームになり、試験本番で行うプレゼンテーションの資料についてアドバイスを送ったり、模擬面接を一緒にやったりして、精いっぱいサポートしました。
子どもたちは、「あの時応援してくれたから、とても充実した大学生活を送ることができた」と感謝してくれました。
サポートするなかでうれしかったのは、JSBNの活動で知り合った大学生や若手社会人を子どもたちに紹介できたことです。
自分たちの少し先を歩くカッコいい先輩と接することは、AO入試(現在の総合型選抜)をめざす子どもたちにとって大きな刺激になったようです。
私がライフワークとして取り組んできた活動が、子どもたちの進路選択にとても大きな影響を及ぼしたことを後で気付き、学校の先生や家族以外の第三の大人の存在が子どもたちに大きな影響を及ぼすことがあることを学びました。

「どんなサポートをすればよいか」に
たったひとつの正解はない

——保護者のかたがお子さまの進路選択をバックアップしていくにあたって、注意点などはありますか?

(真坂さん)
家族で支援するのはとても大切ですが、手をかけすぎると子どもの自立心を奪ってしまう場合もあり、バランスが難しいですね。
どのくらいが適度な距離感といえるのかは、お子さまの性格や学年、家族構成などによって変わってくるでしょう。
保護者のかたも「正解はない」と考えておくほうが、進路選択をサポートしやすくなるのではないでしょうか。

ただ、そうはいっても「子どもの進路にどう関わるか」では次々と悩みが出てきますよね。
その気持ちを吐き出すだけでも少し落ち着き、気持ちを整理しやすくなると思います。
相談できる先輩保護者などがいれば、話せる部分だけでもよいので打ち明けてみてはいかがでしょうか。

まとめ & 実践 TIPS

「大学進学を見据えた進路選択をどうサポートするか」は、保護者のかたの考え方やご家庭の状況によって大きく変わります。
お子さまの志望や性格にフィットするサポートに加えて、視野をひろげるような行動を勧めることで、よりよい応援ができそうですね。

【前回の記事はコチラ】
8割以上の保護者が高校生の進路選択をサポート!? 子どもがうれしいと感じるサポートとは?【進路意識調査より】①|ベネッセ教育情報

プロフィール



三井住友銀行勤務を経て、世界最大級のネットワークを持つBNPパリバ銀行グローバルバンキング本部のマネージングディレクターとして、日本の大企業のグローバルビジネスをサポートする。シンガポール・ニューヨークに11年勤務。米国公認会計士。
中高生・若手社会人のキャリア教育プログラムに2012年から取り組み、全国40を超える学校で授業・公式行事としてキャリア教育プログラムを提供している。

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