小学校での学びの土台を作る子どもの生活習慣【基礎編】
- 教育
小学校入学が近くなると、我が子は勉強についていけるだろうか……と、不安に思う保護者も多いのではないでしょうか。ベネッセ教育総合研究所が実施した「第1回 幼児期の家庭教育調査・縦断調査」では、生活習慣の定着している子どもほど、学びに向かう力が高いことが明らかになっています。この調査の分析委員であり、発達心理学がご専門の目白大学専任講師の荒牧美佐子先生に、幼児期に生活習慣を身に付けることの重要性について伺いました。
生活習慣が学びの土台になる理由
「第1回幼児期の家庭教育調査・縦断調査」(ベネッセ教育総合研究所 次世代育成研究室)の調査結果では、3歳児期の「生活習慣」の定着によって、4歳時期の「学びに向かう力」が伸びることが明らかになりました。ここでの生活習慣とは、トイレ・食事・あいさつ・片付けなど生活していくために必要な習慣のことです。なぜ「生活習慣」と「学びに向かう力」は、相関関係があるのでしょうか。
幼稚園や保育園では、就学前までに「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の5つの領域をバランスよく育むことを目標にしています。
生活習慣に関することは、「健康」の領域に入りますが、この5領域は、領域の間で相互に関連を持ちながら総合的に展開していくものであるとされています。睡眠をたっぷりとって朝早く起きてご飯を食べ、体をたくさん動かすこと、お友達とたくさん関わって遊べるようになること、自分の気持ちや考えを言葉を使ったり、いろいろ工夫したりして表現できるようになること。これらは、互いに関係しあっているのです。学習的な面だけを切り取って学ばせようとせずとも、子どもは、家族や園の先生、お友達とのかかわりの中で、そして、さまざまな経験や遊びをとおして、「学びに向かう力」を身に付けていきます。その土台となるのが、心と身体のバランスのよい育ちなのです。
生活習慣は相互に影響し合い身に付くもの
では、お子さまに生活習慣を身に付けさせるためにはどうしたらよいのでしょうか。まず、お子さまが楽しく生活できるように配慮することが大切です。たとえば、「食事」は、栄養を摂る行為ですが、食事をただ与えればよいのではなく、親子の信頼関係を築くことが重要です。保護者を信頼しているからこそ、お子さまはいろいろな食材が食べられるようになり、健康な身体が育まれます。また、食材に関する知識も身に付き、食事中にコミュニケーション力も磨かれていくのです。
基本的な生活習慣は、日々の生活の流れの中にありますから、そのうち何か一つだけを身に付けさせようとしてもうまくいかず、それぞれが影響し合い、全体的な成長を遂げていきます。夜更かしをしていては朝ご飯もおいしく食べられませんし、お腹が空いていては園でも活発に遊ぶことができません。疲れからイライラしてしまい、友達とのトラブルも増えてしまうかもしれません。こうした負のスパイラルに陥らないよう、保護者のかたには、お子さまが気持ちよく生活が送ることができるようなサポートをしていただきたいです。
先を見通す力も磨かれる
また、生活習慣を身に付けることは、先を見通す力につながります。たとえば、おもちゃを片付けられるようになると、時間の区切りができるようになり、次の活動を気持ちよくスタートできます。また、次におもちゃを探さなくてもよくなるため、時間を効率的に使えます。それが習慣化すると小学校入学後も、休み時間にはトイレに行って、次の時間の準備をしておくことで、授業にも集中できるというよいサイクルをスムーズにつかむことができるでしょう。
一方、おもちゃが散乱していて、ダイニングテーブルも片付かないままご飯を食べるといったことが日常化していると、お子さまが先を見通した行動をするのは難しいです。幼稚園や保育園に入れば自然と身に付くものではなく、幼いうちから家庭でも取り組んでいただくことが大切です。なぜなら、家庭での生活がお子さまにとって一番影響が大きいからです。
次回は、具体的にどのように生活習慣を身に付けさせたらよいかを荒牧先生に伺います。
プロフィール
- 荒牧美佐子
- 専門分野は発達心理学。乳幼児をもつ母親の育児感情、園における子育て支援の効果検証、幼児期の家庭教育が子どもの発達に与える影響などについて研究を行う。主な著書に『発達科学ハンドブック 第6巻発達と支援』(新曜社、共著)。