算数にも、国語力は大事なのでしょうか [中学受験]
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す保護者のかたから寄せられた疑問に、実践的なアドバイスをします。
【質問】
算数の文章問題が苦手です。そのため、計算よりも、まず国語の力が大事なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
相談者:小4男子(大ざっぱ・わんぱくなタイプ)のお母さま
【回答】
「国語力」も大切だが、他にも必要な力がある
■国語力には「一般的なもの」と「その単元に特有なもの」がある
算数の文章題を解く場合、確かに「算数も国語力がまず大事」だと思います。なぜなら、国語力は物事を「理解」し、「考える」ために必要な力だからです。しかし、国語力だけではない部分もあるので、今回は文章題を解く時にどのような力が必要かを、少し考えていきたいと思います。
まず、文章題を解く時の流れを下のような図にしてみました。実際に問題を解く時はもっと複雑な場合も多いのですが、話を簡単にするために単純化しています。
まず「A.問題」では問題文を読み、「条件」は何か、「求めるもの(目的)」は何か、について理解します。また、条件や目的を含めて、「いったいぜんたい何が起こっているのか(問題の設定)」を読み取らなければなりません。この時、確かに一般的な国語力が必要になります。文章を読み、内容を理解しようとするわけですから、国語の力が必要になります。ただし、算数には独特の言葉や考え方があるので、単に国語力とはいえないものもあるでしょう。
たとえば、「もうけと損」の問題では、「仕入れ値」「売値」「売り上げ」「もうけと損」などの言葉(つまり概念)を理解しなければなりません。もちろん、そうした言葉はその単元を学ぶ時に、先生からしっかり教えてもらっているはずですが、たまたまその授業を休んでしまっていたかもしれません(あるいは、先生の話をあまり聞いていなかったかもしれません……)。ですから、単に国語力といっても、一般的なものだけではなく、その単元(あるいはその文章)を理解するために必要な言葉や概念がしっかり身に付いていない可能性も考えたほうがよいでしょう。
■問題の図を描くのはなかなか難しい
次は「B.図」です。問題文の内容を理解したとしても、それを式にする必要があります。あるいはその前に、問題文の内容を図にする必要があるかもしれません。なぜ図が必要かといえば、問題文で何が起こっているのか、つまり条件や目的が何かをひと目でわかるようにするためです。確かに、複雑な文章題になるとごちゃごちゃしてよくわからなくなってしまいます。そんな時は、絵図や線分図、あるいは面積図やてんびん図などを描くとわかりやすくなります。また、求めるものは何かもはっきり見えてきます。
しかし、問題文を図にするというのはなかなか難しく、適切な図を描けない場合が少なくありません。さらに、低学年や中学年のお子さんは、図自体をしっかりと描けない(線が曲がってしまうというレベル)場合もあります。しかし、算数では図を描くことは必須ですから、問題に合わせた図を描けるようになることが大切です。上手に描けないようであれば、問題文を読ませて、図をかく練習を重ねることです。その場合、問題を解いて答えを出すまでやるのではなく、図を描くまでの練習を集中して行うほうが効率的でしょう。
■同じような問題を何題も解いて流れを定着させる
次は、「C.立式」。問題文を読んで理解したら、答えを求めるために式を立てます。ただし、中学年で扱う文章題は、あまり抽象的なものはないと思いますので、式を立てられないという場合は、問題文で何がどうなっているのかがわかっていない場合だと思います。既に述べたように、問題の内容の図を描ければ、それに沿って式を立てられるようになるでしょう。
しかし、どうしても難しい場合は、ヒントを出しながら式を立てさせます。そして、同じような問題を何題も解いて、解き方の流れを定着させていけばよいでしょう。最初のうちは見よう見まねでよいですが、慣れてきたらなぜそのように描くのかの理由もしっかり教えてあげましょう。なお、最初から手順を一つひとつ論理的に説明する方法もあるでしょうが、こちらの方法はある程度算数が好きなお子さん向きだと思います。
■どこでつまずいているか一つひとつ確かめる
以上、算数の解法の流れにおける「問題文の理解」「図を描く」「立式」について考えてみました。こうしてみると、文章題が解けない場合は、やはり必ずしも国語力だけに問題があるわけではなさそうです。解法の流れに沿って、お子さまがどこでつまずいているか、一つひとつ確認しながら確かめ、原因を見つけていくことが大切だと思います。そして、どこに問題点があるかは、一緒に問題を解いていけばわかるでしょう。なお、「どこがわからないの?」と質問しても、「わからないところがわからない」場合がありますので、そんな時は一つひとつの言葉や流れを確認していくとよいと思います。
(筆者:小泉浩明)