塾へはどのような時期から通わせればよいかと迷っております[中学受験]
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。
質問者
小3女子のお母さま
質問
読書は好きですが、読むのが速く、深く理解できていないように思います。なので、読解問題では、詳しく記述する解答を間違うことが多いです。ポイントを絞って解答を見つけ出す能力はどのようにつければよいのでしょう。(算数は)今の時点では、苦手分野はないのですが、解答を急いでしまい、計算ミスが目立ちます。見直しのくせをつけていきたいのですが、テストの時間配分がまだうまくできていないようです。計算力をつけるため、そろばんに通わせています。塾へはどのような時期から通わせればよいかと迷っております。
小泉先生のアドバイス
それぞれのお子さまにあった受験スタイルを確立する
塾に通わせる時期については、志望校やお子さまの状態によってさまざまですから一概には言えません。早すぎても疲れきってしまうし、遅すぎると時間的に間に合わなくなります。その子にとってベストなタイミングとはいつなのかは、なかなか難しい問題ですが、一般論として塾に入れるタイミングについて考えてみたいと思います。
効率的な塾通いを考えると、5年生から塾に通って志望校にしっかり入るのが理想的だと思います。5、6年生の2年間を集中的に勉強できるのであれば、受験準備期間としても決して短くないと思います。
もちろん4年生までに、受験の基礎力は身につけておくことは必要です。算数であれば計算力、国語であれば語彙力でしょう。お子さまの場合は、そろばん塾に通っているとのことですから算数の準備としては非常に良いと思います。算数の力は、≪問題量≫に比例します。ある生徒が他の生徒に比べて1.2倍計算力があれば、他の生徒が5問解く間に6問解けることになります。これが毎日続くわけですから、いかに計算力がある生徒が有利なのかおわかりになると思います。そして、もしこれが逆だとしたらどうでしょうか。計算力が弱い生徒は一生懸命に勉強しても、なかなか他の生徒に追い付くことはできません。
6年生になってから、「計算力がない」とか「語彙力がない」などと嘆かないように、低学年から少なくともその学年で習得すべき内容はしっかり身につけましょう。計算力や国語の語彙力は、家庭学習でしっかり身につくものです。毎日、短時間でも良いですから、市販のドリルで演習を続けてください。
6年生から始めて、1年間で受験するケースはどうでしょうか。おそらく算数はなんとかなるでしょうが、算数以外の科目に時間を割けなくなりかなり厳しいと思います。もちろん生徒さんによっては、1年間で間に合わせて上位の学校に合格というケースもあります。しかし、そのような生徒さんは考え方が大人っぽいとか、記憶力に優れているなど資質的にもすぐれている場合が多いと思います。あるいは、ご家庭で受験参考書や問題集をこなし、最後の仕上げとして6年生になって塾に入る場合かもしれません。そのようなケースは、受験生自身の高いモチベーションと、わからない問題を誰かに聞けるシステムがあれば可能ではあると思いますが、おそらく「誰でもできる」ということではないと思います。
次は、4年生からの塾通いです。4年からなら3年間の準備期間となりますので、十分な時間がとれます。前半は特に算数に力を入れることになりますが、あまり算数が得意ではないお子さんであれば、そのくらいの準備期間は必要かもしれません。算数は問題量を解くことにより、ほとんど誰でも得意になることができる科目です。要領の良い生徒さんもいれば、そうでもない生徒さんもいますが、算数も努力すれば必ず成績が伸びます。少し不器用な生徒が、量をこなすことで算数を得意するという目的であれば、早めの塾通いは有効であると思います。
最後に、もっと低学年からの塾通いを考えます。「1年生から塾に通っているのに、ちっとも成績が伸びない」などという話を聞くこともありますが、大切なことは長く勉強させることだけではありません。質の良い勉強であるかどうかも大切です。質の良い勉強とは、良質の教材で、集中して勉強したかどうかということです。1年生からしっかり塾に通い、しっかり勉強して、難関志望校に合格する生徒も多いとは思います。しかし、低学年から始めたために、生徒が疲れてしまうケースもあることを考慮すべきでしょう。
以上を考えると、4年生までは受験の基礎力である計算力や語彙力を養います。そして、5年生から塾通いを始めて、集中して勉強して2年間で志望校に合格するのが効率的で理想的な学習スタイルだと思います。お子さまの性格によっては、もう少し早めのスタートが必要になるかもしれませんが、大切なことは、早めにスタートすればそれで安心なのではなく、それぞれの生徒にあった受験スタイルを確立することなのだと思います。