国語の物語文に出てくる主人公や登場人物の気持ちがよくわからないようです[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


【質問】

国語の論説文は得意なのですが物語文が苦手です。主人公や登場人物の気持ちがよく分からないことが原因のようです。主に「このときの主人公の気持ちを○○字以内で書きなさい」というような問いができません。どのように勉強させたらよいでしょうか?

相談者:小6男子(理論的・強気なタイプ)のお母さま



【回答】


「気持ちのとらえ方」とそれを「表現する言葉」を覚える


■「わからない」を5段階に分けて考える

論説文などは得意なのに、物語文になると気持ちがわからないというお子さまは少なくありません。特に男の子に多いようです。しかし、よくわからないと言っても程度の差はあります。そこで今回は、わからないというレベルを次の5段階に分けて考えてみます。数字が大きくなるごとに理解のレベルは上がります。

レベル1 気持ちがまったくわからない
レベル2 気持ちがだいたいしかわからない
レベル3 気持ちをあまり適切に表現できない
レベル4 複雑な気持ちがわからない
レベル5 未知の気持ちがわからない

■レベル1:気持ちがまったく分からない

まずはレベル1ですが、よほど複雑な心情をとらえなければならない場面でない限り、「気持ちがまったくわからない」ということはあまりないと思います。多くの場合は、レベル2かレベル3に分類できるでしょう。

しかし、気持ちをまちがえて言うのが嫌で「わからない」と言っている可能性はあります。そんな場合は、「まちがえても大丈夫だよ」といって気持ちを聞いてみてください。あるいは、心情表現から気持ちをとらえるという“約束事”をよく理解していない可能性もあります。そんな場合は、いくつか例を示してあげれば理解できると思います。たとえば、“バタンと扉を閉めて部屋を出て行った”としたらそれは「腹立ち」を表すとか、“立ちすくむ”は「ぼう然としていること」を表すなどです。こうした約束事を知るだけで、気持ちのとらえ方が随分、改善される可能性はあると思います。

■レベル2 気持ちがだいたいしか分からない

レベル2の場合は、○か×かの2つに分類することから入るとよいでしょう。すなわち「いい気持ち」か「嫌な気持ち」かです。非常に大ざっぱな表現ですから、記述ではもちろんよい点数は望めません。しかし、記述の答案をまったく書かないで白紙で提出するよりは、何らかのことを書いて提出するほうがよいに決まっています。まずは、「いい」「嫌」から始めるとよいでしょう。

なお、気持ちを○○字以内で書きなさいという記述問題の場合は、「いい気持ち(または嫌な気持ち)。」で終わってしまうのではなく、必ずその気持ちになった「理由」や「誰(何)」に対してその気持ちになったかも加えましょう。たとえば、「お母さんにテストの点数の件で文句を言われて嫌な気持ちなった。」などになります。

■レベル3 気持ちをあまり適切に表現できない

レベル3のお子さまは、「悲しい」「うれしい」「怒っている」などの単純な気持ちはわかるが、より複雑な気持ちの表現を知らないためにとらえた気持ちを適切に表現できないのでしょう。こんなお子さまは、本や問題文を読んだ時に出てくる気持ちの表現をしっかり覚えるとよいでしょう。また、一生懸命に記述問題を解いたら、あとで必ず解答解説を読み、模範解答ではどのように気持ちを表現しているのか自分のものと比べてみましょう。恐らく素晴らしい表現がそこにはあるはずですから、その表現を次回には使えるように覚えてしまいましょう。気の利いた表現をいくつも覚えれば、それだけでも記述の点数が上がる可能性はあると思います。

■レベル4 複雑な気持ちがわからない

レベル4まで達しているお子さまは、人の気持ちは複雑で、一度に複数持つ場合があることを教えてあげましょう。たとえば、お母さんに赤いセーターをもらってうれしいが、実は青いセーターのほうがよかった場合は「うれしいけれど少し残念」という気持ちになります。気持ちが複数の場合、あるいは気持ちになった理由が複数の場合は、制限字数も当然多くなります。50字とか60字以上の字数指定の場合は、気持ちや理由が複数なのではないかと考えながら答案を仕上げるとよいでしょう。

■レベル5 未知の気持ちがわからない

レベル5は最高レベルですが、そのレベルのお子さまでも、自分にとって未知の気持ちはさすがにわからないでしょう。たとえば、男の子が「恋の話」が苦手だったり、一人っ子のお子さまが「兄弟姉妹」をテーマにした物語の心情をとらえられなかったりする場合です。これらは当人にとっては知らないことなので、さすがに難しいとは思います。しかし、物語文とは、結局は人間関係についての話です。テーマとしては「自分関係」「父母子関係」「友人友情関係」「兄弟姉妹関係」「先生生徒関係」「祖父母・おじおば関係」「ペット関係」「他者との関係」になります。このうち、よくわからない物語に当たったら、それが何のテーマなのかをチェックして、同じようなテーマの物語をいくつか読めば登場人物の気持ちがよくわかるようになります。

このようにお子さまがどのレベルであっても、気持ちをとらえる方法やそれを表現する言葉を知識として覚えれば、登場人物の気持ちがわかることはそんなに難しいことではありません。読書が好きなお子さまは心情のとらえ方が上手な場合が多いですが、それはとらえ方を知っているし気持ちを表す言葉も知っているからです。高学年のお子さまは、本を読む時間はあまりないと思いますが、問題演習で物語文を読めばより効率的な学習ができると思います。がんばって取り組んでみてください


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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