4~6歳は脳が最も発達する時期。心身のバランスを整えて入学を迎えよう!

今春、入園や入学を迎えるご家庭も多いかと思います。新たなステージへ旅立つ我が子に、期待と同時にさまざまな不安も感じられているのではないでしょうか。そこで、今回は、入園・入学前後の子どもの心身両面の発育について触れてみたいと思います。


4~6歳は脳が最も発達する時期

まず、この時期の子どもの脳と身体の発達状況について簡単にご説明します。人間の発育において、4~6歳の時期は脳が急速に発達している時期です。人間の脳には、ニューロンと呼ばれる神経細胞が網の目のように張り巡らされていて、このニューロンによってさまざまな情報が伝達処理されているのですが、4~6歳は最もニューロンが伸びて広がっていく時期なのです。以前からお話ししていますが、運動をすることでこのニューロンに電気信号が走り、脳を活性化させます。つまり、ニューロンが広がっているこの時期に適切な運動をすることで、脳の発達に非常に良い影響を与えることができるのです。

一方、この時期は、骨格や筋肉はまだまだ未成熟で、骨格や筋肉に負担のかかる運動をしてしまうと、身体の正しい成長を阻害してしまうことになりかねません。また、心肺機能も発達していないので、持久力を求められるような運動(マラソンなど)は、避けたほうがよいのです。

これらのことから、筋肉系や持久力系ではなく、「手先の器用さ」や「身体の動きの巧みさ」を身に付ける運動が、身体と脳両方の発達のために大切なのです。逆に言えば、この時期に適切な運動をしていないと、将来的に、≪運動が苦手な子≫≪運動嫌いの子≫になってしまう可能性が高いのです。実際、わたしが教えている東京大学の学生の中でも運動が苦手な学生は、ほとんどが幼少時代に運動をしたことがなく、逆に勉強もできて運動もできる生徒は、この時期に何らかの運動をしていたという傾向が顕著に見られるのです。


左右両方を使うことで、身体と脳のバランス良い発達を

「手先の運動」というと、中には「じゃあ、テレビゲームでもいいの?」と思うかたもいるのではないでしょうか。確かにテレビゲームは手先を動かしますね。その意味で手先の器用さにまったく効果がないわけではないのです。しかし、結局はボタンを押すだけの単純な動きの繰り返しで、変化や工夫がありません。またゲームだけに夢中になり、他の運動をしなくなってしまうというデメリットがあります。テレビゲームは時間を決めて、その範囲内で行うよう指導することが大切でしょう。

わたしがぜひオススメしたいのは、「右利きの人は左手を、左利きの人は右手を使ってみましょう」ということです。これまで、皆さんは、お子さんに利き手ではないほうの手を使う練習をさせたことは、あまりないのではないでしょうか。しかし、右利きの子に右手だけを使わせることは、右手の機能だけを使うだけでなく、右手をコントロールする脳の機能ばかりを働かせ、身体と脳の全体をバランスよく発達させることができないのです。
人間の身体は左右対称になっています。従って、片方に偏らず、左右両方を使うことが身体のバランス良い発達につながり、それが脳のバランス良い発達にもつながるのです。

まずは右手でフォーク、左手でナイフを持って食事をして、次には右手にナイフ、左手にフォークを持ってみる、という身近なところから始めてみてください。コップを左手に持って水を飲む、といった単純なことでもよいでしょう。慣れてきたら左手で箸を持つ練習、字を書く練習、歯磨きをする練習をしてみましょう。この時期のお子さんは、驚くほど早く適応していくはずです。

片方しか使わない世界と両方を使う世界、これは身体と脳全体のバランスの良い成長を促すだけでなく、お子さんの生活する世界を広げることにもなります。ぜひ、お子さんの成長にとって大きな意味を持つこの時期を大切に、お子さんと一緒にトライしてみてください。


プロフィール


深代千之

東京大学大学院 総合文化研究科 教授。(社)日本体育学会理事、日本バイオメカニクス学会理事長、日本陸上競技連盟元科学委員。文部科学省の冊子や保健体育教科書の作成にも関わる。*主な著書:「運動会で1番になる方法」「運脳神経のつくり方」など

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