似たような問題でつまずく[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小5女子(性格:神経質・論理的)のお母さま


質問

算数の文章題が苦手です。先生に教わったときは理解できているのに、似たような問題でつまずきます。ということは、理解したようで本当は理解できていないのでしょうか?


小泉先生のアドバイス

やはり「1.理解したつもり」の段階に留まっているように思います

「理解」には、いくつかの段階があると思います。
まずは、理解する前の段階である「0.理解していない」です。
次に、先生の説明した内容はわかったという段階である「1.理解したつもり」があるでしょう。先生の言っていることはわかったのですが、実はこの段階では細かいところがあやふやです。たとえば、補助線を引くような問題であれば、「なぜその場所に補助線を引くのか」「何をねらって補助線を引いたのか」がわかっていない場合が多いです。ですから、まったく同じ問題は解けても≪同じような問題≫が解けません。 
次の段階としては「2.理解した」になります。この段階の生徒は、自分のやっていることがよくわかっています。先ほどの補助線を引く問題なら、何をねらって補助線を引くのかがわかっています。ですから、同じような問題はもちろん、もう少しひねった類題でも解くことができます。
そして、このレベルを超えると「3.完全に理解した」になります。ここでは、その単元の原理原則から理解できたため、応用問題でも今までの知識を総動員して解くことができるようになります。

このように「理解」にはいくつかのレベルがありますから、先生も一つひとつレベルを上げるように指導をしていきます。まず新しい単元に入ると、先生はその単元特有の考え方を、典型的な例題を解きながら生徒に教えていきます。この時、説明がうまい先生であればあるほど、生徒は先生の説明だけで「理解したつもり」になります。
もちろん例題だけでは不安なので、先生は授業で基本問題や演習問題を演習させて、「2.理解した」までにレベルアップさせようとします。しかし、それだけの演習ではなかなか定着しないのが現状です。そして、これから先は塾の体制によって違ってきます。すなわち、授業の中で演習を繰り返す塾もあれば、宿題として自宅で演習をさせる塾もあるでしょう。前者の塾は当然一週間の通塾日数が多く、後者は比較的通塾日数が少ないでしょう。
また、生徒の学習に対する取り組み方によっても理解のレベルが違ってきます。先ほどの問題なら、「何をねらって補助線を引くのだろう?」などと考えながら学習している生徒は、比較的早く1から2、2から3へとレベルアップします。逆に、漫然と問題を解いている生徒は、より多くの問題数をこなさないとレベルアップしていかないでしょう。

さて、お子さまについてですが、やはり「1.理解したつもり」の段階に留まっているように思います。ここは問題数をこなすことで、レベルを上げる必要があります。その時は、「なぜ」を常に考えることで、効率的な学習を心がけると良いと思います。
しかし、ご本人としては「理解したつもり」になっているはずですから、さらなる演習の必要性をあまり感じないかもしれません。そのような場合は、「自分のやっていることが説明できるくらいの理解が必要」であり、そのためには「問題数をこなしていくこと」が大切であると指導してあげてください。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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