洗足学園中学校2年生 S・Kさんのお母さま

お子さんに対して比較的穏やかに接していらして、無理はさせないというお考えのようですね。


はい、そうです。
実は、主人は聖光学院、私は桜蔭の出身なのです。娘が4年生のときに、桜蔭の文化祭にも連れて行きましたが、その時点の学力からでは難しいのがわかっていたので、無理強いはしませんでした。
勉強というのは、ある程度までは導くことができても、その先は本人しだいだと思うからです。私の時代には、インターネットやゲームもないし、余計な刺激がなかったこともありますが、私自身も、親からうるさく言われた記憶がありません。
私の母は、「環境をつくるのが親の仕事」といつも言っていまして、勉強は見ませんが、私が行きたいと言えば塾を探してきてくれるなど、フォローをしてくれました。でも強制はされなかった。自然と私も同じようになったのかもしれません。

たまたま転居したときの事情で中学受験を考えましたが、あのままつくば市に住んでいたら受験はさせなかったと思います。
私学の良さはもちろんありますが、自分自身を振り返ってみると、結婚して子育てをするようになってから改めて広い世界に気づかされたこともあり、子どもたちを私学に通わせることで、世界を狭めることがないようにしたいという思いもありました。そういう意味では、公立の良さもあると思うのです。
それはともかく、子どもの実力相応のところで、本人が学校生活を楽しく送れるところがいちばんだと思います。この先の進路に関しても、親が口を出すことはなるべく避けたいと思っています。息子は来年大学受験ですが、大学は特に本人しだいですからね。


お父さまはどのように受験に参加されましたか? また、お母さまは仕事との両立をどのようにされましたか?


主人は仕事もあるので、勉強を見たりはしませんでしたが、受験前には入試傾向の分析などをしてくれて、受験校も一緒に考えてくれました。
私たちの子育てのポリシーは、子どもとコミュニケーションをとるように心がけることです。
主人と息子は男同士ですからそんなに会話はしませんが、今は一緒にテニスをしてコミュニケーションをとっているようです。

私の仕事は中高生が相手なので、どうしても夜に家を空けなくてはなりません。ですから、なるべく塾のある日に仕事を入れるなど、日程調整がいちばん大変でしたね。子どもの受験が終わるまでは、ある程度仕事量もセーブしていました。

隣に祖父母が住んでいますので、何かあれば助けてもらえましたし、2人ともおおらかで、受験に関しても良き理解者です。子どもたちにとっても安らげる場になっていたのではないでしょうか。とても感謝しています。


最後に、これから受験を考えているかたへのアドバイスをいただけますか?


アドバイスなどできる立場ではありませんが、私の場合は娘の成績で一喜一憂しないように、自分でバランスをとっていました。塾の成績などが一覧で目の前に示されると、どうしても気になってしまいますが、なんといってもまだ小学生です。成績も、そのときの体調や学習範囲によっても左右されます。難しいですが、点数だけを見てお子さんを評価なさらないようにしたほうがいいと思います。また、ウェブサイトなどの口コミ情報は確かにとても参考になりますが、それがすべてではないという大前提を忘れずに利用することが大事だと思います。


▲思い出の文房具
塾で成績が良かったときなどにもらえるシールを集めて交換した文房具。本人にとっては、がんばった証。
右から3番目は、湯島天神のボールペン。縁起を担いでこれを使って願書を書いた。
右から2番目は、洗足学園でいただいた鉛筆。受験のときにも持って行った。
▲受験票・合格証と合格者受験番号一覧
合格発表で、自分の番号を見つけたときは、本当にうれしかった。

<取材後記>
「勉強はあくまでも本人のやる気に任せる」というお話が印象的でした。ご両親共に、ご自身が難関校の出身でありながら、いや、だからこそ、「子どもにとってのベストの選択とは何か」ということを、しっかりと考えられている姿勢に感銘しました。バランス感覚は大事ですね。(教育ジャーナリスト 中曽根陽子)


プロフィール



教育ジャーナリスト、「登録スタッフ制企画編集会社<ワイワイネット>」代表。塾取材や学校長インタビュー経験が豊富。近著に『子どもがバケる学校を探せ! 中学校選びの新基準』(ダイヤモンド社)。

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