国語だし、娘がそう感じたならそれでいいのかな……[中学受験]

「国語だし、娘がそう感じたならそれでよいのかな……」

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。



質問者

小1女子のお母さま


質問

国語は得意で大好きなのですが、前に喧嘩(けんか)した子同士がふと出会ってしまうシーンで、「この時の二人の気持ちを書きなさい」というような問題で、「前に喧嘩をしたから、プンってなった」と答えていました。正しい答えは「仲直りしたいけど、前に喧嘩をしていたから、言い出せなくて困っている」だと思うのですが、国語だし、娘がそう感じたならそれでよいのかなと少し思いつつ、「本当にそうかな?」「怒ってる感じじゃないよね」「本当は仲直りしたいんじゃない?」「でも喧嘩しちゃったからさ、言い出しにくいんじゃない?」など段階を踏んで結局答えを教えてしまう感じになってしまったのですが、こういう場合答えを直させるべきかどうかもちょっと自信がありません。また、私が普段から怒りっぽく厳しいから、こういった考え方をしてしまったのかな……と少しショックも受けました。こういう場合はどうすればよかったのでしょうか。


小泉先生のアドバイス

本文の内容を根拠にして答案を考える

国語の問題を解く時は、「本文の内容を根拠に考える」ことが基本です。国語の読解問題には必ず、「次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい」という一文がついているのはこのためです。ですからお子さまが「前に喧嘩したから、プンってなった」という答案を書くのであれば、「プンってなった」根拠が本文にあることが必要です。
たとえば、喧嘩した子同士がふと出会ってしまうシーンで、「二人とも目を合わせたが一言も話さなかった」などというような描写があれば根拠となりえます。またお母さんの答案が最適であるためには、「二人とも目を合わせたがもじもじしていた」などの表現が根拠として必要です。つまり問題文中にこれらの心情表現があって初めて、正しいのはお子さまの答案なのかあるいはお母さんの答案なのかが決められます(あるいは両方とも正しくないのか……)。
小学校低学年の問題文はかなり内容がシンプルだとは思いますが、こういった心情表現がなくて、登場人物の気持ちを問う問題はあまりないと思います。もしあるとすれば、「この時の二人の気持ちがどうだったか想像しなさい」というように自由に想像させる問題でしょう。このような形式の問題は、複数の解釈が許される問題といえます。

さて「こういう場合はどうすればよかったのでしょうか」というご質問ですが、既にお話ししたように、本文の内容を根拠にして答案を考えると良いでしょう。もしご自分の答えが不安であれば、迷わず模範解答をご覧ください。そして本文のどこを根拠にしているかを確認しながら、お子さまに教えてあげてください。たとえば「本文のこの部分から、本当は仲直りしたいことがわかるよね」などと指導していきます。
もし解答解説を読んでもその根拠がわからない、あるいは納得できない場合は、「お母さんは納得できないから、先生に質問してごらんなさい」と指導すると良いでしょう。この時「わからない」というのが恥ずかしくて、ごまかしてはいけません。ひょっとしたら問い自体に欠陥があり、根拠のない、すなわち解けない問題という可能性もあり得ます。
しかも根拠をはっきりせずに教えていると、お子さまも「国語は感覚で良い」と誤解してしまいます。これは非常にまずい指導法であり、高学年になった時に点数が伸び悩む大きな原因になります。今のうちから「国語は本文を根拠にして理論的に解く」ことを実践する必要があります。

ただし、読書にはこのような制約はありません。読書は自由に物語を解釈してかまいませんから、10人の読者がいれば、10通りの解釈があり得ます。解釈に唯一の正解はないということです。
国語の問題文を解く時と読書で物語を読む時は、この点が決定的に違うことを付け加えておきます。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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