受験させるかどうか悩んでいます[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


質問者
小5男子のお母さま

質問
読解の問題ができません。問題文への理解もややなく、一緒に噛(か)み砕いて読んであげれば「あー、そうか」と言いますが、一人で問題文を読んで理解して取り組むことがやや苦手です。読書面ではマンガ付きの慣用句や四字熟語の本は読みますが、普通のマンガが一番好きです。算数は苦手ではありませんが、暗算で計算をして失敗することがよくあります。筆算でやりなさいと言っても面倒くさがってなかなかやりません。最近は問題も難しくなってきたので理解することに時間がかかってきました。受験させるかどうか悩んでいます。本人は受験したいようなんです……。

小泉先生のアドバイス

ほかの人の受験ではなく、「ぼくの受験」であることを十分に意識させる

「受験させるかどうか悩んでいます。本人は受験したいようなんです……。」という文面から、受験するかしないかがまだあやふやであると感じました。お子さまも既に5年生ですから、具体的な志望校を決め、自分の弱点を補いながら、新しい単元や分野を着実に勉強していきたいものです。しかし志望校があいまいだったり、受験するのかしないのかがご家庭の中ではっきりしなかったりすると、しっかり勉強する態勢が保てなくなります。すぐにでもご家庭内で話し合いを持ち、受験をするかどうかを明確にされると良いでしょう。
とは言っても、そんなに簡単にできないのが受験を続けるか、やめるかの決断です。受験を始めるほうが、よほど簡単かもしれません。まずはご自身で、そしてご主人と(または奥さまと)相談されて、最後にお子さまを交じえて結論を出されると良いでしょう。

まずご自身で考える時は、なぜ中学受験を開始したかの理由を考えながら、受験の継続について判断すべきだと思います。また、現在の成績や偏差値を考え、お子さまがこれから真剣に勉強したとして、果たして当初考えていた志望校に届く可能性があるのか、あるいはある程度志望を下げた場合、行きたい学校があるかどうかについても検討すべきでしょう。
一般的に、1年間で上げられる偏差値は総合で7~8だと考えます。これから入試まで2年あるとしたら、偏差値は15程度上げられる計算です。もちろん、がんばって勉強するという条件付きではあります。ということは、現在40くらいの偏差値であっても、55ぐらいの学校が狙えるならば、かなり選択の幅は出てきます。もちろん残り時間が少なかったり、お子さまが勉強しなかったりすれば偏差値はそんなに上がらないか、あるいは下がる場合もあります。
このようにしてご自身がだいたいの結論を持てたら、ご主人(または奥さま)とさらに相談し、ご両親としてのだいたいの方針を固めます。

さて次は、いよいよお子さまを交えての話し合いになります。まずは「受験をするのか、しないのか」ということを話し合うのですが、お子さまが単純に「受験する」と言っても、あるいは「受験したくない」と言っても、すぐに結論としないでさらに深く話し合う必要があります。
たとえば「受験する」と言っても、今の学習態度や成績ではとても志望校には合格できそうになければ、データや数字でそのことをお子さまに説明してください。
あるいは「受験しない」と言った場合でも、それではなぜ中学受験を始めたのか、どうしてその気持ちが変わったのかを確認すべきでしょう。また、中学受験をやめた場合どうなるのかも、高校受験を含めて説明すると良いでしょう。
あるいは、「わからない」「考え中」などと結論を出さずにいたがるかもしれません。そんな場合も、既にしっかりとした方向性を出さざるを得ない時期であることを、理論的に納得させる必要があります。

そして受験を続けるか、あるいはやめるかというどちらの結論が出ても、ご両親はしっかりとそれを受けとめる必要があります。さらにその結論は、お子さまも決断したものであることを十分に認識させることが大切です。すなわち、ほかの人の受験ではなく、「ぼくの受験」であることを十分に意識させるということです。
中学受験の場合、受験生がまだまだ幼いために、どうしても他人事になってしまう傾向があります。お子さまの場合も、ご質問の文面から察するに、そのあたりが明確になっていない可能性を感じます。しっかりとした結論を下し、清々とした気持ちで受験に向かえるようにすると良いと思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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