このままあと1年、成り行きで勉強させてよいのかどうか常に迷っている[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小4女子(性格:大ざっぱなタイプ)のお母さま


質問

読書は好きですが、のめり込むほど夢中、とはいえません。そのせいか、文章(特に説明文)が正確に読み取れていないようです。私自身は学生時代、国語の試験は特に苦労せずにきたので、どうして娘がまちがえるのかがむしろ理解できません。進学塾に通塾中ですが、このままあと1年、成り行きで勉強させてよいのかどうか常に迷っています。
娘は国語に若干の苦手意識はあるようですが、深刻にとらえていません。とりあえず今は、最低限の点数を落とさないためにも、漢字や語彙(ごい)の知識問題を大事にしようと親子で話しています。ただそこから先に進まず、偏差値も伸び悩んでいる現状が本当に悩ましいです。


小泉先生のアドバイス

成り行きで勉強させるのではなく、伸びない原因を突き止めて克服していく。

「まじめに勉強しているのに偏差値が伸びない」のは、勉強方法に何らかの問題があると考えてよいでしょう。もしそうであれば、“成り行きで勉強させて”も伸びる可能性は少ないと思います。伸びない原因を突き止めて、一つひとつ克服していく必要があります。以下の点をチェックしてみましょう。

●論理的に考えているか?
受験の国語は、論理的に“読む”・“解く”ことが求められます。「なんとなく」「感覚的に」が通用するのは、せいぜい小学校中学年までです。本文を根拠に、「なぜそうなるのか?」を説明できるだけの論理性が必要です。特にお子さまは、「大ざっぱ」で「感情的」な性格が強いようなので、思い込みで読んでいる可能性はあると思います。

たとえば、普通はあまり点数がとれない物語文なのに、たまにグンと点数が伸びることはありませんか。お子さまが読んで理解した内容が物語の内容と一致したためですが、論理的に読んでいないと大きくはずれることも多く、その場合は壊滅的な点数になります。特に物語文で得点の上下が激しい場合は、“読む”・“解く”を論理的に行っているかどうかチェックしてみましょう

●方法論を習得しているか?
問題文を読むにしても、設問に答えるにしても「読み方」や「解き方」があります。算数のように「公式」といった明確な形式では指導しないかもしれませんが、国語にも解法の手順はあるのです。

たとえば、問題文を読む時に“大切なところに線をひきなさい”とよくいわれますが、具体的にどこにひくのかわからない子どもは少なくありません。なんとなく大切だと思うところではなく、たとえば、物語文では登場人物、設定、気持ち、特に、「気持ち」が変化している箇所と「その理由」などにしっかりと線をひきましょう

問題文の読み方、選択肢や記述の解き方など、やり方を知っているかどうかで大きく差が付きます。やり方をまとめて説明している参考書や問題集は多くはありませんが、拙著『まとめ これだけ!国語』(小泉浩明著/森上教育研究所スキル研究会)」や『中学受験 お母さんが教える国語』(早川尚子著/ダイヤモンド社)などいくつかあります。まずは保護者のかたがそれらを読んでやり方を身に付け、それをお子さまに教えるというのもよいでしょう。

●復習をしっかりやれているか?
算数に比べて、国語の復習はやりにくいようです。まちがえた設問に答えるだけではなく、再度問題文を読み直す必要があるので、つい面倒になって適当にやってしまうのです。あるいは、解答・解説を読んだだけで、終わらせてしまうことも多いかもしれません。国語の場合、同じ問題文で同じ設問が出題される可能性はまずありません。ですから、その設問ができるようになっただけでは、不十分なのです。その設問と同じような設問が出題された時に正解を得られるようにならなければ、復習した意味がありません。

たとえば、選択肢問題で「『男の子だけがサッカーが好きである』という選択肢は、本文の『男の子はサッカーが好きである』から考えると『言い過ぎている』から×である」という解説を読んだとします。典型的な消去法の問題ですが、「だけ」があるから×と理解するのでは「同じような設問」に答えられるようにはなりません。

ここでは、より上位の概念である「言い過ぎ(限定が厳しい)には注意」ということを学ぶ必要があります。そうしないと、「のみ」「すべて」「ぜったい」など、他の限定する言葉が出てきたときに同じようにまちがえてしまいます。このように、「なぜ」まちがえたのかをより高い視点で理解することが非常に重要です。時間はかかりますが、国語は問題量よりも学習の質を重視して勉強に取り組むほうが効果的です。

以上、「論理」「解法」「復習」と国語力を付けるためのキーワードに沿って説明してきました。お子さまも、これらの中に苦手解消のヒントを見つけることと思います。恐らく、今までとは違った解き方や勉強法になると思いますが、とりあえず3か月は試してみてください。この“3か月”というのはかなり意味のある期間で、効果があるものなら必ず成果が目に見えて出てくる期間です。これは勉強ばかりでなく、他のことにも同じようにいえると思います。

たとえば、運動やダイエットでも、最初はほとんど変化が見られませんが、3か月続けると違ってきます。そして、もし、それ以上やっても成果が出ないのであれば、やり方が悪い、その方法がダメ、あるいはお子さまに合っていないかのどれかです。その場合は、他の方法に切り替える必要があります。3か月以上たって何の変化もなければ、恐らく1年たっても変わらないと考えてよいでしょう。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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