突然、志望校を変えたいと言い出して……[中学受験]

先日伺ったご父母のひとつの典型的な悩みごとをご紹介しておきたい。

突然、志望校を変えたいと言い出して……[中学受験]


受験を控えた現在小学6年生のお嬢さまが塾の先生に、どうやら「女子学院を目指せ」、と言われたらしい。しかし、それまでのご家庭の方針として付属名門校を目指して勉強をし、合格できそうなところまできていた。これから最後の追い込み、というときに模試の偏差値で合格可能性判定で、その付属名門校が合格できそうである成績状況のなかで、塾の先生から付属名門をやめて女子学院を目指せとお嬢さまがすすめられたという。お嬢さまはきっと女子学院という、偏差値では付属名門校より高いところにランクされているトップクラス校に塾の先生が合格を請け合うかのように「チャレンジできる」と言われて舞い上がってしまったのだろう。完全にその気になったのだそうだ。

確かに、ご家庭で過去の問題をやってみると、女子学院の合格点はとれる。しかし、模試の偏差値では女子学院の合格可能性は50%をわる状況で、とても合格は客観的には遠いようだ、どうしたものか、ということだった。

これは実に多いケースで、模試でも受験でも偏差値のような一本の相対尺度でランキングされてしまうと必ず巻き込まれる悩みといってよい。

特に入試直前ともなれば、何より気持ちが切迫してくるので、模試の得点などが伸び、合格可能性がワンランク上のところに手が届きそうになる。

塾の先生は偏差値ランキング一本の価値観だから、それならもったいないからワンランク上を目指せ、となりがちだ。それは悪意でなくて、高い偏差値=良い学校、という信条が強固に信念になっているところからくるものだ。

それでお嬢さまは日々その集団の中にいるものだから、塾の先生と異なる価値観をもって、「いえ私は付属名門校にします」……等とは決してならない。したがって、2月1日は何が何でも女子学院を受けて、その上で3日にその付属名門校を受ける以外は、恐らく父母のかたにその他の選択は残されていない。大体が塾の価値観のなかで付属名門という意識が薄く、進学校が善、付属校は次善という学校観ができてしまっているので、この価値観に抵抗することは実は相当手強いことを、多くの親は案外気付いていない。しかし、否応なくこの時期にこうした形で気付かされる。

これを避けるには、もっと以前から「ウチはこの学校しか受けません」と宣言しておき、折に触れてそのことを塾側と本人に納得しておいてもらわないと本件のような時点で足をすくわれることになりがちだ。

しかし、学校文化は一校ごとに大変異なる。またご家庭の方針も価値観も最善と次善がある。あたかも偏差値で数ポイント差しかないように見えていたり、一方が他方より「上」にあるというのは、そうした観点からいえばとるに足りないことだと申し上げたい。お子さまの人生の土台をつくる学校を選ぶのだから、ご家庭こそがリードすべきなのである。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

お子さまに関するお悩みを持つ
保護者のかたへ

  • がんばっているのに成績が伸びない
  • 反抗期の子どもの接し方に悩んでいる
  • 自発的に勉強をやってくれない

このようなお悩みを持つ保護者のかたは多いのではないでしょうか?

\そんな保護者のかたにおすすめなのが/
まなびの手帳ロゴ ベネッセ教育情報サイト公式アプリ 教育情報まなびの手帳

お子さまの年齢、地域、時期別に最適な教育情報を配信しています!

そのほかにも、学習タイプ診断や無料動画など、アプリ限定のサービスが満載です。

ぜひ一度チェックしてみてください。

子育て・教育Q&A