ずっと野球をやってきた子が、中学では別のスポーツをやりたいと言い出した[教えて!親野先生]

教育評論家の親野智可等先生が、保護者からの質問にお答えします。

【質問】

小学6年生の息子は、3年生からスポーツ少年団で野球をやってきました。でも、中学の部活動では別のスポーツをやりたいと言い出しました。本人はサッカーかバスケットボールを考えているようです。親としては、野球ならレギュラー選手になれるだろうし、せっかくうまくなったところでやめるのはもったいない気がします。

パレットさん(小学6年男子)

【親野先生のアドバイス】

拝読しました。
たしかに、親としてはそういう気持ちになると思います。

中学から新しく始めてうまくなるのかとか、途中で嫌にならないかなど、いろいろ心配になりますよね。
それに、一度やり始めたことはやり通す、一つの道を究めるのが善、といった旧来の日本的な価値観も根強くあると思います。

でも、私は、子どもがやりたいと思っていることをやらせてあげた方がいいと思います。
なぜなら、子どものころから自分がやりたいことを自分で決める生き方をさせてあげることが非常に大事であり、それによって主体的な生き方が身につくからです。

子どものころ親がやらせたいことを優先して、子どもの意思を抑え込んでいると、非主体的な生き方が身についてしまいます。
すると、大人になってからも、主体的に生きられなくなってしまいます。

要するに、「言われたことはやります。何でも言ってください。でも、特に自分でやりたいことはありません」という生き方になってしまうということです。
つまり、指示待ち人間です。

これだと、優秀な歯車にはなれますが、ビジネスの新地平を切り開く斬新なアイデアを立案してグイグイやっていくなどといったことは無理です。
プライベートを十分楽しむこともできにくくなります。
というのも、プライベートでは指示してくれる人がいないからです。

主体的な生き方が身についている人は、仕事でもプライベートでも、自分がやりたいことを自分で見つけてどんどんやっていきます。

また、最近の研究では、子どものころから、遊びも含めて自分がやりたいことを十分やってきた人は、そうでない人よりも、目標に向かって努力する力、他者とうまく関わる力、感情をコントロールする力などの非認知能力が身につくということが明らかになっています。

そして、この非認知能力こそが、社会的な成功や人生の幸福度を上げる重要な要素だということも明らかになっています。

また、神戸大学の西村和雄特命教授と同志社大学の八木匡教授の研究によると、人間の幸福感に強い影響を与えるのは、所得や学歴ではなく、「自己決定」の度合いだということが明らかになっています。

全国の20歳以上70歳未満の男女を対象にしたこの研究では、自分の生き方を自分で決めてきた人たちは幸せを感じているという結果が出ているのです。

また様々なスポーツをやることで、多様な動きができるようになり、体力や運動能力の向上につながることも明らかになっています。

それは将来において、何かしらのスポーツに専門的に取り組むときにも役立ちます。
つまり、いろいろなスポーツをやってきた選手の方が、専門種目でもよい結果を出す可能性が高まるということです。

一生を通してスポーツを楽しむという生涯スポーツの面からみても、子どものころに様々なスポーツを体験しておくことが大事だといわれています。

このようなわけで、ヨーロッパやアメリカでは、成長期において多様なスポーツを経験することに重点をおくようになっています。
アメリカでは、州によって違いはあるようですが、子どものスポーツクラブは3種類以上の種目がそろっていないとクラブとして認められない州が多いそうです。

また、子どもがスポーツに取り組む際には、「うまくなる」「勝つ」「よい成績を上げる」などのことよりも、「楽しむ」「自己肯定感を高める」「より健康になる」などが重要視されています。
また、大人が教えたり指導したりすることよりも、子どもたちが自ら考えて取り組むことも重要視しています。

ということで、最後に問題提起すると、日本における子どもとスポーツの関係は、今後いろいろ見直していく必要があると思います。

とにかく大事なのは、誰のためのスポーツなのか再確認することです。
それは、親や指導者のためではなく、学校や組織や国のためでもなく、紛れもない子ども自身のためのものです。
それを忘れずにいれば、どのような方向に変えていくかということも自ら明らかになるはずです。

私ができる範囲で、精一杯提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
みなさんに幸多かれとお祈り申し上げます。

プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

おすすめトピックス

子育て・教育Q&A