私立中学受験の志望校選定で重視する要素 その2[中学受験]

学校の先生方に志望校選定で私立中学受験をする子をもつ保護者が重視する要素を予想してもらった。首都圏の中高一貫校119校の広報担当の先生から回答があったアンケートを分析し、保護者アンケートと比較することで、学校の考えている志望校選定で重視すべき要素が明確になる。
アンケートでは「志望校選定で、保護者が重視する要素は何かを予想してください(重要だと思う上位3つを記入)」という質問を設け、選択肢は保護者アンケートと同じにした。

私立中学受験の志望校選定で重視する要素 その2[中学受験]


「最も強い志望校の決定者は誰か」というアンケートで受験生の保護者の多くが「受験生本人」と回答したのに対し、学校の先生方の多くは「受験生の母親」を予想したことから、「最も重視する志望校選定の要素は何か」について学校の先生方と保護者の分析結果にどのような違いがあるか興味深い。

【表 志望校選定で重視する要素(学校アンケートと保護者アンケート)】
志望校選定で重視する要素(学校アンケートと保護者アンケート)
※百分比(%)は少数第2位を四捨五入して表示した。四捨五入の結果、各々の項目の数値の和と合計を示す数値とが一致しない場合がある。

前回の保護者アンケート同様、【表】の学校数(計)を見ると、学校も「3.教育サービス」を最も重視していることがわかる。さらに、学校・保護者とも「3.教育サービス」を順位1位とした人が最も多い。最も重視する志望校選定の要素については、学校の先生方は保護者の動向を掌握していることがわかる。
学校と保護者の大きな違いは、「4.立地・環境」よりも「2.学校のイメージ」を重要度が高いと予想した学校が多く、多くの保護者の重要度とは逆になっている点である。「4.立地・環境」は、学校の中身となる「3.教育サービス」に次いで2番目に保護者から重視されている志望校選定の要素である。保護者は、学校の外観となる「2.学校のイメージ」よりも、主として生活上直接かかわりのある「4.立地・環境」を重視していることを学校の先生方は予想できなかったことになる。

ここで注目すべきは、学校が予想する、受験生の志望校選定要素の順位1位は「3.教育サービス」と「2.学校のイメージ」に集中していることである。「1.入試」「4.立地・環境」「5.学費」を順位1位と予想する学校はほとんどないのはなぜだろうか? あるいは学校の先生方にとってそれらが当たり前のことで、あらためて意識にのぼらなかったのかもしれない。それでも学校により1位は「3.教育サービス」と「2.学校のイメージ」に分かれ、2位は3要素(「2.学校のイメージ」「3.教育サービス」「4.立地・環境」)に、3位は4要素(「4.立地・環境」「1.入試」「5.学費」「2.学校のイメージ」)に分かれている。そして、保護者アンケートでは重視する志望校選定要素の順位はさらに多様化している。 

筆者をして言わしむれば「1.入試」「4.立地・環境」「5.学費」を学校側でトータルコーディネートした学校イメージを示していただけると、保護者と学校は一致することができる。これがうまく実現できていないという結果ではなかろうか。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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