雲の種類はどうやって見分ける?天気への影響と見つけたらラッキーな珍しい雲

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雲にはさまざまな形や大きさがあり、その種類は実に100種類以上。「あの雲はどんな雲?」とお子さまに聞かれたときに教えられると楽しいものです。

今回は、雲研究者・荒木健太郎さんの『空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる天気の図鑑』(以下、『天気の図鑑』)から、雲の種類や見分け方、天気との関係、見つけたらラッキーな珍しい雲などをご紹介します。

この記事のポイント

雲は何でできている?天気と雲の関係は?

「雲って何でできてるの?」とお子さまに聞かれたことはありませんか。雲の正体は、大気中のチリを核としてできた無数の水や氷のつぶが集まったもの。雲のつぶの大きさは髪の毛の太さの5分の1ほどしかありません。

雲の中には、天気の変化に大きく関係しているものがあります。「乱層雲(らんそううん)」は広く雨や雪を降らせ、「積乱雲(せきらんうん)」は狭い範囲に土砂降りの雷雨を招きます。

<積乱雲>

太陽に虹色の光の輪(ハロ)がかかってから次第に雲が厚くなっていったり、積乱雲が空に見えたりするときは、天気の変化に注意するよう教えてあげるとよいでしょう。

雲は何種類ある?特徴と基本の見分け方

お子さまに雲の種類を教える際は、雲の基本的な分類である「十種雲形(じっしゅうんけい)」を使うと雲の特徴をつかみやすくなります。

雲の基本分類「十種雲形」とは?

雲の種類を見分ける基本の分類は、雲の高さや姿で分ける方法です。大きく10種類に分けられるため、「十種雲形」と呼びます。

まず、雲の高さを高い空(上層)、中くらいの高さの空(中層)、低い空(下層)に分類して考えましょう。高い空にできるのは「上層雲(じょうそううん)」、中くらいの高さの空にできるのは、「中層雲(ちゅうそううん)」、そして低い空にできるのは、「下層雲(かそううん)」です。

上層雲には巻雲(けんうん)、巻積雲(けんせきうん)、巻層雲(けんそううん)の3種類があります。昔からなじみのある名称でいえば、「すじ雲」「いわし雲」「うろこ雲」「うす雲」などです。

<巻雲(けんうん)>

<巻積雲(けんせきうん)>

<巻層雲(けんそううん)>

次に、中層雲には高積雲(こうせきうん)、高層雲(こうそううん)、乱層雲(らんそううん)の3種類があります。「ひつじ雲」「おぼろ雲」「雨雲」「雪雲」は中層雲の仲間です。

<高積雲(こうせきうん)>

<高層雲(こうそううん)>

<乱層雲(らんそううん)>

そして、下層雲には層積雲(そうせきうん)、層雲(そううん)、積雲(せきうん)、積乱雲(せきらんうん)の4種類があります。「くもり雲」「霧雲(きりぐも)」「入道雲」「雷雲」などと呼ばれている雲です。

<層積雲(そうせきうん)>

<層雲(そううん)>

<積雲(せきうん)>

<積乱雲(せきらんうん)>

上層雲3種類、中層雲3種類、下層雲4種類で、合計10種類となります。

雲の見分け方

十種雲形を見分けるときは、『天気の図鑑』の16ページにある「十種雲形の雲分類フローチャート」も使ってみてください。この見分け方は世界共通で、雲の研究者も同じ見分け方をしています。

お子さんでも見分けやすい雲は、巻雲、積雲、積乱雲でしょう。

巻雲は高い空にできる白くてなめらかな、すじっぽい雲。雷がなく、もくもくしている雲で、雲の頭になめらかなすじがなければ積雲(わた雲・入道雲)です。もし雷が鳴っていれば積乱雲(雷雲)があるという証拠になります。

はじめのうちは雲の姿がどんどん変化し、どの種類なのか迷うかもしれません。うまく見分けられるようになるには、フローチャートを見ながら「あれかな?」「これっぽい」とくり返し観察することが大切。著者である荒木さんも、何度も雲を見て分類できるようになったとのことです。

名前から分かる雲の特徴

十種雲形の雲の名前を見て気づいたかたもいらっしゃるかもしれませんが、雲の名前には「積」がつくもの、「層」がつくもの、「乱」がつくものがあります。これも雲の特徴を表しています。

「積」がつく名前の雲(積雲・積乱雲など)は、もくもくと上にのびる、元気な雲。「層」がつく名前の雲(高層雲・層雲など)は、横にひろがる、おとなしい雲です。

一方で、「乱」がつく名前の雲(乱層雲・積乱雲)は天気を乱して、雨や雪を降らせる雲。見かけたら天気が崩れる可能性があるので気をつけましょう。

十種雲形の雲の名前には「巻」がつくものもあります。これは上層雲につけられる名前です。

また、雲の成分で分類した名前である「水雲(みずぐも)」「氷雲(こおりぐも)」「混合雲(こんごううん)」からも雲の形の特徴がわかります。水雲はもくもくした形の雲。氷雲は高い空でなめらかなすじっぽい形をしている雲です。

<水雲(みずぐも)>

<氷雲(こおりぐも)>

十種雲形以外の分類法

お子さんが十種雲形で見分けられるようになり少し物足りなさを感じるようなら、別のもっと詳しい分類法を使って雲を観察してみるのもよいでしょう。雲の分類法には、十種雲形の他に種(しゅ)・変種(へんしゅ)・副変種(ふくへんしゅ)という分け方があります。

種(15種類)は雲の姿や内部構造の違いに注目した分け方。変種(9種類)はひとつひとつの雲の並び方や透明度の違いに注目した分け方です。

たとえば下層雲の1つである層積雲では「層状層積雲」「レンズ状層積雲」などがあり、変種としては「半透明層積雲」「隙間層積雲」「二重層積雲」などがあります。種と変種は十種雲形をさらに細かく分類する分け方となっています。

一方、副変種(計19種類)は雲の部分的な特徴や別の雲と一緒に発生するものに注目したもの。副変種の1つである「降水雲(こうすいうん)」は中層雲にも下層雲にも現れます。

別の分類法では、「親雲(おやぐも)」「遺伝雲(いでんぐも)」「変異雲(へんいぐも)」という分け方もあります。これは雲の変化(履歴)に注目した分類法。たとえば「積乱雲遺伝不透明層雲」の場合、“もともと積乱雲の一部だったものが、そこから遺伝して不透明な層雲になった”ということを意味しています。

雲に触る方法は?おすすめの場所や条件

雲の構造上、私たちは雲に乗ったり雲をつかんだりすることはできません。しかし、雲に触れたり雲の中に入ったりすることはできます。お子さまと一緒に雲に近づける方法を3つご紹介しましょう。

【方法1】雲ができる空の高さまで行く

1つめの方法は、雲ができる空の高さまで行くこと。一般的な場所は山です。

関東であれば、雲がかかっているときに筑波山や高尾山などちょっとした山へ行けば、雲の中に入れてしまいます。

山以外では、スカイツリーや渋谷のスクランブルスクエアの屋上でも雲の中に入れるそうです。

「くもりの日に行ったら周囲が白くて景色が見えず残念だった」という経験をしたかたもいるかもしれませんが、それこそが雲の中。空気が湿っている日は雲ができる高さも低くなるため、このような施設でも雲の中に入れてしまうのです。

【方法2】地面の近くで雲ができる場所に行く

雲は空に浮かんでいるものと思ってしまいますが、地面の近くにできる雲もあります。それが、霧です。

霧は地表面にくっついた層雲のことで、雨上がりに晴れて風が弱い夜の次の朝などが出会うチャンスです。

<霧>

天気予報などで濃霧注意報が出たら、いつもより少し早起きをしてみるとよいでしょう。

【方法3】日常生活の中の雲を探す

空に浮かんでいない雲は、私たちの生活の中にたくさんあります。

たとえば、お味噌汁やラーメンから立ちのぼる湯気、冬の寒い日に吐いた息が白くなる現象。これらも雲の仲間です。

お家の中や外で、お子さまと一緒にさまざまな雲を探してみましょう。

見つけたらラッキー?!珍しい雲の種類

雲の中には、あまり見ることができない珍しい雲の種類があります。今回は、長いロールケーキのような雲と「穴あき雲(あなあきぐも)」をご紹介しましょう。

長いロールケーキのような雲

『天気の図鑑』で「一生に一度は間近で見てみたい」と紹介されていたのは、オーストラリアのカーペンタリア湾で見られる「モーニング・グローリー・クラウド」。海岸付近で海風と陸風がぶつかる前線に沿って、長さ1000kmというとても長いロールケーキのような雲ができます。

<モーニング・グローリー・クラウド>

こうしたロール状の雲は日本の北陸などでも見られ、長さは数100kmに及ぶことも。ときどき、海上保安庁が撮影したものがニュースで流れます。

モーニング・グローリー・クラウドのようなロール状の雲は、天気を直接崩すものではありませんので、安全に観察できるでしょう。

しかし、同じようにロール状の雲であっても「アーククラウド」(アーク雲・アーチ雲)と呼ばれる雲には注意してください。

<アーククラウド>

アーククラウドは、積乱雲に伴う冷たい下降気流からできるガストフロント(突風前線)の先端にできる雲。通り過ぎるときに突風が起こり、アーククラウドが発達して積乱雲になることもあります。関東では夏の時期にときおり見られます。

ロール状の雲を見つけたら、「ナウキャスト」などで検索して出てくるレーダーの雨量情報などをチェックし、急な天気の変化から身を守りましょう。

穴あき雲(あなあきぐも)

もう1つ、荒木さんがおすすめする珍しい雲が「穴あき雲」です。雲の中にぽっかり穴が空いているのが特徴で、低温の高い空にある巻積雲(いわし雲)にできやすいもの。空気が乱れるなど、何らかのきっかけで発生します。

空にいわし雲を見つけたときに「少しもわっとしてる…?」と感じる部分があったら、ぜひ注目を。穴あき雲に出会えるかもしれません。

<穴あき雲>

天気を崩す注意すべき雲は?

見られたら嬉しい珍しい雲がある一方、「これを見たら天気の急変に注意!」という雲もあります。

アーククラウドや積乱雲

災害につながる恐れのある雲としてまず挙げられるのは、すでに紹介した積乱雲やアーククラウドです。

積乱雲が発生すると、激しい雨が降ったり雷が落ちたりする可能性が高くなります。アーククラウドも、通り過ぎるときに突風が起こり、積乱雲を発達させることがあります。

雷雨による水害や停電に備えたり、突風によるケガなどに気をつけたりしながら過ごしましょう。

スーパーセル

もう1つ気をつけなければならない雲は「スーパーセル」。強い竜巻や雹(ひょう)をもたらす危険な雲です。

<スーパーセル>

天気予報で「大気の状態が非常に不安定」「竜巻注意情報」と出たら、スーパーセルのような雲が発生するかもしれません。

もしお子さんと一緒に雲を観察する中で「天気が崩れそう」と感じる雲があった場合は、「ナウキャスト」などで検索して気象レーダーの雨量情報を確認してみましょう。雨が降っている場所、雲が流れている方向、こちらに来そうかどうかなどを確認することで、天気の急変から身を守りやすくなります。

美しい虹色の雲「彩雲(さいうん)」を見るコツ

さまざまな雲がある中で、雲の形にそって虹色が現れる「彩雲」はとても美しい雲です。彩雲は、雲の中の水滴で太陽の光が回折して、雲が虹色に見えるもの。いわし雲やうろこ雲が出ているときに観察しやすく、昔から良いことが起こる前触れとも言われています。

<彩雲>

彩雲を見つけるコツは、高い空にもくもくした雲があるときに、建物の陰から太陽の近くの雲を見ること。建物の陰から日向のギリギリまで移動し、太陽の光が直接見えないようにして観察すると見えやすいでしょう。

「太陽を隠すなら手でもいいのでは?」と思うかもしれませんが、手やノートで太陽を隠して観察するのは至難の業。大人でも手が揺れやすく、上手に太陽の光を隠し続けられないからです。手が揺れれば太陽の光を直接見てしまう恐れもあります。

お子さんの安全のためにも、手やノートではなく、建物の陰から見る方法で彩雲を探してみましょう。

彩雲の写真を撮る場合、建物で太陽を隠しつつ太陽の近くの雲を撮るだけで、きれいに撮れるとのこと。いわし雲やうろこ雲を見つけたら、ぜひチャレンジしてみてください。

まとめ & 実践 TIPS

100種類以上ある雲。もくもくした形やスジっぽい形の雲、とても珍しい姿の雲、天気の急変につながる雲、太陽の光で虹色に輝く雲など、特徴もさまざまです。

十種雲形のフローチャートを活用しつつ雲を見分けたり、レーダーによる雨量情報で雲の動きを確認したりして、それぞれの雲の個性や変化を観察してみましょう。

『すごすぎる天気の図鑑』KADOKAWA
雲、雨、雪、虹、台風、竜巻など空にまつわる、おもしろくてためになる知識をやさしく紹介。『天気の子』気象監修者・荒木健太郎さんが教えてくれる、とっておきのネタが満載です。

プロフィール

荒木 健太郎(あらき けんたろう)

雲研究者、気象庁気象研究所研究官、博士(学術)。
専門は雲科学・気象学。防災・減災のために災害をもたらす雲のしくみの研究をしている。
映画『天気の子』気象監修。NHK『おかえりモネ』気象資料提供。MBS/TBS系『情熱大陸』など出演多数。主な著書に『世界でいちばん素敵な雲の教室』(三才ブックス)、『雲を愛する技術』(光文社)、『雲の中では何が起こっているのか』(ベレ出版)、気象絵本などがある。Twitter:@arakencloud

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