高校「未履修問題」の背景にあるものは

文部科学省はこのほど、必修科目を生徒に履修させていなかった高校の「未履修問題」がいつから始まっていたのかを調査した「高等学校等の未履修開始年度等について」の結果をまとめました。それによると、必修科目未履修のカリキュラム編成が各高校で始まったのは2003(平成15)年度から、というのが圧倒的に多いことがわかりました。これは現在の高校学習指導要領が1年生から導入された年に当たっており、新しい学習指導要領の対応に学校が苦慮したことが浮き彫りになっています。

必修科目未履修のカリキュラムを組んでいたのは、公立371校(9.2%)、私立292校(22.0%)で、合計すると高校全体の12.3%に上っています。「未履修問題」が進学校などで起きた原因は、(1)大学受験で必要とする生徒が少ない世界史が必修になっていること(2)完全学校週5日制の導入で授業時間数が足りなくなったこと(3)現行学習指導要領で「情報」や「総合的な学習の時間」などの新たな必修が増えたこと、などが指摘されています。

しかし、世界史が必修になったのは1992(平成4)年度から実施された前回の高校学習指導要領からですが、文部科学省の調査結果を見ると必修科目未履修のカリキュラムを編成していたのは、1993(平成5)年度以前が11校、1994(平成6)年度が48校、1995(平成7)年度が61校と、次第に増加しているものの、ごく少数にすぎません。また、公立学校の完全学校週5日制は2002(平成14)年度から始まりましたが、未履修のカリキュラム編成をしていた高校は2002(平成14)年度で229校でした。これが翌年の2003(平成15)年度になると522校に急増しています。現行の高校学習指導要領がスタートした年です。

つまり、それまでは世界史必修や完全学校週5日制のなかでも何とかカリキュラムをやりくりしていたのに、「情報」や「総合的な学習の時間」などの新しい必修が加わったために、大学進学を目指す生徒が多い高校ではもう「必修逃れ」をするしかカリキュラムの工夫ができなかった、というのが真相といえるでしょう。

文部科学省は未履修の生徒に対する救済措置の方針や具体的な補習の内容について通知していますが、注意すべきことはこれが「今回限り」の措置であることです。学習指導要領違反は、間違った行為です。しかし、実際に全国の高校の1割以上でいわゆる未履修カリキュラムを組まざるを得なかったという事実は、単に「学習指導要領違反は絶対にいけない」と批判するだけでは片付けられない問題でしょう。高校の学習指導要領を早急に弾力化、多様化することも今後、検討が必要なのではないでしょうか。


平成18年度に高等学校の最終年次に在学する必履修科目未履修の生徒の卒業認定等について(依命通知)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/11/06110220.htm
未履修科目に関する授業の実施等に関する運用指針
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/11/06110925/002.htm

プロフィール

斎藤剛史

斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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