「通級指導」ってどんなもの?

発達上の課題を抱える子どもが、通常の学級に在籍しながら、一部の授業を別の教室で受ける「通級」。初めて利用するお子さんや保護者は、不安がいっぱいでしょう。実は通級担当の先生も、初めての場合には、いろいろ不安を抱くものです。そうした中、文部科学省が『初めて通級による指導を担当する教師のためのガイド』を作成しました。教師向けといっても、わかりやすく親しみやすいものになっているので、保護者にとっても参考になりそうです。通級指導とはどんなものか、どのような指導が行われるのかを見ていきましょう。

発達障害、通常学級にも15人に1人

障害の種類や程度は、一人ひとり多様です。とりわけ近年、重度・重複化の一方で、それとは逆に、学習障害(LD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)など「発達障害」の存在が注目されてきました。2012年の調査では、発達障害の可能性のある児童生徒が、通常の学級にも6.5%程度いる可能性があると推計されました。15人に1人、1クラス40人なら2~3人という計算です。そのくらい普通のことであり、逆に言えば、それだけの子どもが周囲になかなか気付いてもらえない中、学習や生活に困難を抱えているのです。

そこで、一部の授業を、他の学級や学校で特別な指導を受けるのが「通級」です。情緒障害や弱視、難聴などの他、発達障害も対象となっています。通級指導を受ける児童生徒は年々増えており、2019年度は13万4,185人に上ります。
特別支援学校の教員は、小中高校などの教員免許状に加え、特別支援学校の免許状を持っていることが原則です。これに対して、特別支援学級や通級の場合、特別支援学校の免許状がなくても担当できます。ただ、通常の学級にも特別な支援が必要な児童生徒がいますから、どの学校の教員にも一定程度、特別支援教育の知識が必須になっています。

一人ひとりの困難克服に向け

ガイドは、初めて通級指導を担当する先生に「障害による学習面や生活面における困難の改善・克服に向けた指導が基本です」「一人一人の状況や願いに応じた指導を心掛けましょう」「子供の自信や意欲につながる指導を心掛けましょう」と呼び掛けています。
そのうえで、子どもの実態把握に当たっては、障害にのみ目を向けるのではなく、▽好きなこと、得意なこと、力が発揮できているところを見ること▽子どもがどのようなことに困っているのかを見ること▽学習や生活とどのように関連しているのかを考えること▽子どもの内面や気持ちを考えること……などの視点から、子どもの発達全体を見るよう促しています。保護者の視点としても参考になりそうです。
もちろん、場当たり的に指導が行われることはありません。特別支援教育の一環として、本人や保護者とも面談したうえで、「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」が作成され、それを基に指導が行われます。

一人ひとりの状態を見ながら、意図的・計画的な指導を行う、というのは、教育の基本です。だからこそ「学校で子供を指導するプロ」(はじめに)である教師は、通級の指導もできるわけです。初めて担当する先生も、保護者も、お互い肩の力を抜いて、困り事を乗り越える力を子どもに付けさせるとともに、得意分野を引き出していけるよう、相談していきたいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※初めて通級による指導を担当する教師のためのガイド
https://www.mext.go.jp/tsukyu-guide/index.html

※特別支援教育について
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/001.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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