通級と外国人指導の教員「基礎定数化」が焦点 国の予算折衝

12月に入り、来年度の政府予算の編成作業が本格化しています。
文教関係で大きな焦点の一つが、公立小中学校などの教職員数の在り方です。実質的には、通常学級に在籍する発達障害などの児童生徒が特別な時間に通う「通級」と、日本語指導が必要な外国人児童生徒の教育について、担当する教職員の数を「基礎定数化」できるかどうかだと見られています。

児童生徒数に伴い、自動的に増減

「10年間で5万人削減」……。11月、一部新聞に、こんな見出しが躍りました。財務省が、教職員数を約5万人減らせると主張し、文部科学省がこれに反対していると伝えた記事です。ただ、こうした表現は誤解を与えかねないので、まずは教職員数の決まり方を、きちんと説明しておきましょう。

学校の教職員数は、1学級に1人の担任が付くことを基本に、学校ごとに校長・教頭、養護教諭(保健室の先生)、事務職員、栄養職員(給食担当)などを加えることで決まります。公立小中学校の教職員は、市区町村の教育公務員ですが、給与は都道府県教育委員会が全額を負担しており(指定都市に関しては2017<平成29>年度から権限移譲)、さらに各県の給与費総額のうち3分の1を、国が負担しています(義務教育費国庫負担制度)。

国が関与することなので、公立学校にどれだけ教職員を配置するかの「標準」は、法律で細かく規定します。もちろん都道府県独自の判断で人を増やすこと(いわゆる「県単」)は可能ですが、負担が大きいため、実際には国の標準に大きく左右されます。

その教職員定数ですが、学校数・学級数に応じて、自動的に決まるのが基本です。これを「基礎定数」といいます。他に、学校の課題などに応じて、特別にプラスされる数もあり、これを「加配定数」といいます。基礎定数は、児童生徒数が増減すれば、それに伴って自動的に増減します。一方、加配定数は、毎年の予算折衝で決められます。

「10年計画」は相当困難

「5万人削減」とは、実は、今後10年間の児童生徒減に伴って、学級数も減り、何もしなければ、教職員定数も自動的に5万人減る……ということを意味します。一つの学校で人減らしが行われるといったような話ではありません。

一方、文科省は、標準を変えることで、自然に減る教職員数(自然減)の一部を定数の改善に回し、予算を増やすことなく教育条件をよくしたい……と考えています。2017(平成29)年度概算要求では、10年間で約3万人を改善する計画案を立てました。これに対して財務省は、今までどおりなら、教育条件を変えずに、5万人も減らせ、国の予算も大きく削減できる……と主張しています。中長期にわたる定数改善計画は、文科省が毎年、手を替え品を替えて要求しながらも10年以上実現していないもので、今回も相当な困難が予測されます。

ただ、要求のうち、通級と外国人児童生徒指導に関しては、昨年の予算折衝の過程で、基礎定数化の方針が、両省間でほぼ合意されていました。しかし、それも6月に消費増税の再延期が決まったことで、財政の先行きを心配する財務省が態度を硬化させたといいます。

通級にせよ、外国人児童生徒指導にせよ、学校現場にとっては、目の前の切実な課題です。ただ、切実な課題でさえ焦点になるようでは、通常の学級の子どもたちへの教育環境の向上は、いつまでも置いてきぼりになったままです。

※財政制度等審議会財政制度分科会における教職員定数に関する主張に対する文部科学省としての考え方
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/hensei/003/1379277.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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