増える発達障害などの通級指導 初めて8万人を超える

何らかの障害のある子どもが小中学校の普通学級に在籍して勉強しながら、必要に応じて別の教室や特別支援学級などで授業の一部を受けることを「通級指導」と呼びます。文部科学省の調査で、全国の公立小中学校で通級指導を受けた子どもたちは初めて8万人を超え、過去最多を更新したことがわかりました。ただ、通級指導を受けている子どもの割合には都道府県ごとに差があるなど、課題もあるようです。

2014(平成26)年5月1日現在、全国の公立小中学校などで通級指導教室を設置しているのは小学校3,134校(前年度2,991校)、中学校608校(同566校)、特別支援学校67校(同63校)の計3,809校(同3,620校)で、公立小中学校全体の12.4%(同11.6%)が通級指導を実施していることなります。通級指導を受けている児童生徒は、小学校が7万5,364人(同7万924人)、中学校が8,386人(同6,958人)の合計8万3,750人(同7万7,882人)で、前年度より7.5%増となり、8万人を超えて過去最多を更新しました。通級指導の対象に発達障害が加わった2006(平成18)年度は4万1,448人でしたから、8年で約2倍に増えた計算になります。また通級指導のための時間は、「週1時間」が50.7%、「週2時間」が31.5%となっており、週1~2時間の指導が主流です。

通級指導を受けている子どもを障害別に見ると、最も多いのは「言語障害」の3万4375人(前年度3万3,606人)ですが、次いで「自閉症」1万3,340人(同1万2,308人)、「注意欠陥多動性障害(ADHD)」1万2,213人(同1万324人)、「学習障害(LD)」1万2,006人(同1万769人)、「情緒障害」9,392人(同8,613人)、「難聴」2,181人(同2044人)などで、自閉症も含めるとLDやADHDといった発達障害が全体の44.8%を占めています。また、言語障害や情緒障害などの子どもの数は、ここ10年間ほどあまり大きく変化していません。つまり、通級指導を受ける子どもの急増の原因は、通級指導を受ける発達障害児の増加ということになります。特殊教育から特別支援教育に切り替わり、発達障害が特別支援の対象となったことで、発達障害児への理解や対応が着実に進んできていることがうかがえます。

ただし、通級指導を受けている中学生の数は、小学生に比べて非常に少なくなっています。中学生になって通級指導が必要なくなったのなら問題はないのですが、実際には都道府県教育委員会の姿勢に、大きく左右されているようです。たとえば、島根県では304人の中学生が通級指導を受けていますが、これに対して長野県は1人、茨城県は0人などとなっており、都道府県ごとにばらつきがあるのが目立ちます。

通級指導にはまだまだ偏見も少なくありません。しかし、通級指導で障害による困難さが改善される子どもたちも多くいます。通級指導の意義をきちんと一般の子どもたちや保護者にも理解してもらうとともに、中学校における特別支援教育の取り組みを充実させることが、都道府県教委などに求められているといえるでしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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